自生の夢 の商品レビュー
SF作家飛浩隆の中短編集。これまでいくつかアンソロジーで短編を読んできた中でも強烈な印象があったけれどやはり凄まじい作家だ。特に表題作『自生の夢』といくつかの派生作品は言語・言葉をテーマとする作品群だが、なんというか読む前と読んだ後で自分が別物に変えられてしまったような感覚がある...
SF作家飛浩隆の中短編集。これまでいくつかアンソロジーで短編を読んできた中でも強烈な印象があったけれどやはり凄まじい作家だ。特に表題作『自生の夢』といくつかの派生作品は言語・言葉をテーマとする作品群だが、なんというか読む前と読んだ後で自分が別物に変えられてしまったような感覚がある。変わってしまったのが言葉や意識についての認識なのか、自分の考え方や物の見方なのか、そしてそれがどの程度なのかを思考したり言語化するのは難しいのだけれども。伴名練氏の解説も流石。なんとなく手が伸びず未読のままになっていた『屍者の帝国』、いよいよ読もうかと思う。
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全体の基盤に「言語」のテーマ性、そして伊藤計劃の存在がずっとうっすら漂っている。出典は忘れたけど作者本人がどこかで「SFは美しく残酷なものと信じている」と言ってた通り、本作もすべての文章が美しく、凄絶で、大体ラストは寂しいか恐ろしかった。 「海の指」…グランヴァカンスの筆致に近いかんじ。人への恋しさ、各々が抱えた寂しさ、それを丸ごと蹂躙していく恐ろしい状況。明るくない結末に向かって疾走していく感覚はずっとあるのに文章が面白すぎて最後まで一気読みしてしまう。志津子さんが「来た」ら、絶対怖いよね… 「自生の夢」…一番強く伊藤計劃へのリスペクトというか、存在を意識しているのを感じる。彼に宛てた文章というか、もはや一個人を二次創作したというか…。伴名練がかなり詳しく解説してくれてるので、それを読んでから再読すると解像度がぐんと上がるのでありがたいですね。間宮へのインタビューの担い手だった〈わたし〉〈ぼく〉はそれぞれ「ハーモニー」「虐殺器官」なのかなぁ、と思って読み直すとかなり熱い。 「はるかな響き」…生物が言語を得る以前、すべてに名前がつきカテゴライズされ、私達が「理解」を得る以前にあった「あの響き」を生命は皆求めている。というのはかなりロマンがある設定で素敵だった。 ⚫︎あらすじ 73人を言葉だけで死に追いやった稀代の殺人者が、怪物〈忌字禍〉を滅ぼすために、いま召還される。現代SFの最高峰、10年ぶり待望の作品集。「この作者は怪物だ。」――穂村弘 ────────────────────── 73人を言葉の力で死に追いやった稀代の殺人者が、怪物〈忌字禍(イマジカ)〉を滅ぼすために、いま召還される----第41回星雲賞日本短編部門受賞作「自生の夢」他、今世紀に発表された読切短編のすべてを収録。最先端の想像力、五感に触れる官能性。現代SFの最高峰、10年ぶり待望の作品集。 「この作者は怪物だ。私が神だったら、彼の本をすべて消滅させるだろう。 世界の秘密を守るために。」----穂村弘 その他の収録作品: ◎「海の指」第46回星雲賞日本短編部門受賞 霧が晴れたとき、海岸に面した町が〈灰洋(うみ)〉となり、異形の事物は奏でられていく。 ◎「星窓 remixed version」日本SF大賞受賞第1作 宇宙空間からぽんと切り抜いたガラス板を買ってきた。 ◎「#銀の匙」「曠野にて」「野生の詩藻」 天才詩人アリス・ウォンの生み出したもの、遺したもの。 ◎「はるかな響き」 人類誕生以前に行われた犯罪、その結果、人類を殲滅させるに至った犯罪。 (河出書房HPより引用)
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言葉は世界であるとでも言うような物語の数々。その観点から、人の意識をシステム的なものとして捉えているのは、伊藤計劃とも重なるようにおもう。sfの想像力(と言い切ってしまえるかわからないけど)を突き詰めた結果、自意識みたいなところにいくのは面白い。なにか思想的な源泉があったりするの...
言葉は世界であるとでも言うような物語の数々。その観点から、人の意識をシステム的なものとして捉えているのは、伊藤計劃とも重なるようにおもう。sfの想像力(と言い切ってしまえるかわからないけど)を突き詰めた結果、自意識みたいなところにいくのは面白い。なにか思想的な源泉があったりするのだろうか。 自分の基盤を崩されるような恐ろしさもあるが、とても好きな一冊になった。
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「海の指」が個人的には一番読みやすく想像もしやすかったように思います。あとがき(ノート)を読んだら納得。横文字やオリジナルの単語についていくだけで必死になってしまうけど物語の世界の広さや奥深さに感嘆しました。文字や言葉で無限の世界が広がるのが小説の良さだなと改めて感じる。
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「自生の夢」(飛浩隆)を読んだ。 飛浩隆さんの作品読むのは「廃園の天使Ⅰ グラン・ヴァカンス」以来二冊目。 六つの短篇収録。 やっぱり飛浩隆さんの創造力(!)についていくのは容易じゃないな。 私の貧困な想像力では長い鼻に触れてあぁシワシワの太い蛇の様だなと思うのがせいぜいで...
「自生の夢」(飛浩隆)を読んだ。 飛浩隆さんの作品読むのは「廃園の天使Ⅰ グラン・ヴァカンス」以来二冊目。 六つの短篇収録。 やっぱり飛浩隆さんの創造力(!)についていくのは容易じゃないな。 私の貧困な想像力では長い鼻に触れてあぁシワシワの太い蛇の様だなと思うのがせいぜいで全体を理解なんかできっこないのにこんなに面白いのはなんでだ。 「曠野にて」の中で克哉が選択したセンテンス 『鳴き砂の浜へ、硝視体をひろいにいこう。』(本文より) を読んでニヤリとしてしまった。 「廃園の天使Ⅰ グラン・ヴァカンス」の書き出しのセンテンスだからね。 「廃園の天使Ⅰ グラン・ヴァカンス」では登場人物たちが受け止める激痛に立ち竦んでしまいそうになったもんだから「ラギッド・ガール―廃園の天使〈2〉」が積ndleのままだよ。 読まなくちゃ。
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SFを読んだことがなく、挑戦してみたいと言った私に、友だちが貸してくれた一冊。私の想像力では追いつかず、何とか追い縋りながら読了。退廃的で、美しく、映像的。文字の、言語の奔流に呑み込まれていく感覚に圧倒される。読みこなせる力をつけて、いつか再チャレンジしてみたい。
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飛浩隆「自生の夢」読了。一言、すごい作品群だった。気軽に手に取って読み始めたが、各話、奥深く異常な世界に引きづり込まれるように没入して読み耽った。なんだこれ?SF小説だからこその圧倒的な創造性をもつ文字列の凄さに驚愕した。映像では表現できないだろうな。特に表題作と「はるかな響き」...
飛浩隆「自生の夢」読了。一言、すごい作品群だった。気軽に手に取って読み始めたが、各話、奥深く異常な世界に引きづり込まれるように没入して読み耽った。なんだこれ?SF小説だからこその圧倒的な創造性をもつ文字列の凄さに驚愕した。映像では表現できないだろうな。特に表題作と「はるかな響き」。
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カルチャーショックってこういうことだろうか…って読みながらずっとびっくりしていた。 難しいけど読みきりたい、と辿り着いた解説を読んでさらに驚いた。これは文脈を読み取れる人ならより一層楽しい読書体験だろうなあと羨ましく悔しい。もっと本を読まねば。 個人的には「海の指」の鮮烈さに圧倒...
カルチャーショックってこういうことだろうか…って読みながらずっとびっくりしていた。 難しいけど読みきりたい、と辿り着いた解説を読んでさらに驚いた。これは文脈を読み取れる人ならより一層楽しい読書体験だろうなあと羨ましく悔しい。もっと本を読まねば。 個人的には「海の指」の鮮烈さに圧倒され酔ってしまった。美しくて映像的。漫画も読みたい。
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これは感想を言葉にするのに時間が必要だ。圧倒的。 『零號琴』に続けて『自生の夢』を読了。言葉や音の表現に、何度か端末を置いて反芻しながら読み進めた。既知のものが新しい言葉で描かれて未知になる瞬間が堪らない。
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伊藤計劃氏から最近のSFにハマり、たどり着いた一冊。少し気を抜くとついていけなくなりそうな、自分の持つ想像力でぎりぎりで楽しめた。海の指、星窓は文章なのに景色の美しさを感じられたし、設定も最初は?だったけど読むほどにSFらしくて面白かった。後半の表題作含む"詩"...
伊藤計劃氏から最近のSFにハマり、たどり着いた一冊。少し気を抜くとついていけなくなりそうな、自分の持つ想像力でぎりぎりで楽しめた。海の指、星窓は文章なのに景色の美しさを感じられたし、設定も最初は?だったけど読むほどにSFらしくて面白かった。後半の表題作含む"詩"をテーマとしたアリスウォンの話では、横文字に付いていきつつぎりぎり理解して読み進めた(受け止めきれなかったのが悔しいくらい!)。潤堂の能力は伊藤計劃氏の「虐殺器官」を思い出した。本でこれだけ感じられるものがあって誹謗中傷で人がしぬこの世を思えば、言葉で人を殺める人がいても全然フィクションじゃないなと思う。 著者のほかの本もこれから読んでいきたい。もっと理解したい。
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