赤毛のレドメイン家 の商品レビュー
2019/12/28読了 「悪党が非道な行為で下手を打つ。有徳の人が立派な経歴に傷をつける。深い洞察力を備えた頭脳が突然として枯渇する――それが善であれ、悪であれ、おなじことだ。そうしたことが起こるのは、聖人と罪人、どちらも等しく完璧ではないからなんだろう」 ――読了した頃、当...
2019/12/28読了 「悪党が非道な行為で下手を打つ。有徳の人が立派な経歴に傷をつける。深い洞察力を備えた頭脳が突然として枯渇する――それが善であれ、悪であれ、おなじことだ。そうしたことが起こるのは、聖人と罪人、どちらも等しく完璧ではないからなんだろう」 ――読了した頃、当時お付き合いしていた女性と別れる羽目になり、内容も相俟って、トラウマとまではいかないが、素直に面白かった、お勧めです、といえない作品になってしまった。でも、上記の台詞は刺さったなぁ。
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とても評価が難しい作品です。レビューを参照しても賛否両論で、「江戸川乱歩が称えた通りの名作」から「時間の無駄」まで様々です。共通するのは犯人の分かりやすさで、特に後半は作者自身あまり隠そうとしていません。逆に言えば犯人が分かってからも楽しめる内容にしてあります。また風景描写は良か...
とても評価が難しい作品です。レビューを参照しても賛否両論で、「江戸川乱歩が称えた通りの名作」から「時間の無駄」まで様々です。共通するのは犯人の分かりやすさで、特に後半は作者自身あまり隠そうとしていません。逆に言えば犯人が分かってからも楽しめる内容にしてあります。また風景描写は良かったという意見も多く、イタリアやイギリスを旅しているような楽しさがあります。という評価を得ることから、文章自体は一定以上の読みやすさはあると言えます。 低評価としては、犯行の理由に説得力がない、刑事が気づかないのがおかしい、探偵役の能力なら防げた犯行もある、などミステリ的な点や人物描写によるよものが多いです。 私は古典作品であればトリックに目新しさが無くてもリスペクトしたり、海外作品であれば登場人物の言動に違和感があっても「この時代のこの国の人はこういう考え方をしたのか」と興味深く感じたり、良いように解釈してしまうタイプなので、あまり評価を下げることはありませんでした。 ただ高評価の人、低評価の人、どちらなの意見も腑に落ちる点が多く、この作品はそこに魅力があると思います。読んでみて自分はどちらの評価に傾くのか。一度は読んでみる価値がある作品かと思います。
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「闇からの声」がおもしろかったので、こちらも続けて読んでみた。「闇からの声」の3年前の作品。 舞台はコーンウォール地方、ダートムーアの荒野。調べる人はスコットランドヤードの若き刑事ブレンドン。事件当事者は題名のごとく「赤毛のドレメイン家」の人々。ドレメイン家の4兄弟と、長兄の遺...
「闇からの声」がおもしろかったので、こちらも続けて読んでみた。「闇からの声」の3年前の作品。 舞台はコーンウォール地方、ダートムーアの荒野。調べる人はスコットランドヤードの若き刑事ブレンドン。事件当事者は題名のごとく「赤毛のドレメイン家」の人々。ドレメイン家の4兄弟と、長兄の遺児ジェニー。そのジェニーからジェニーの身に降りかかった災難について調べてほしいと手紙を受け取る。 話を聞くと、ジェニーの夫がどうやら叔父のロバートに殺されたようなのだという。しかし肝心のジェニーの夫の遺体は無く血があるだけ。そしてブレンドンは若きジェニーに心奪われた様子。そして叔父たちに次々に災難がふりかかるが、ブレンドンはなかなか解明できない。 遺体が無いというのが、おかしいな、と思うのだがブレンドンは意に介さない様子でロバート追及に突き進む。で後半あたりから、はてはこいつとこいつが怪しいか? となり、おまけにアメリカの探偵ギャンズも登場し、後半はその怪しいやつが明かされその怪しいやつをいかに追い詰めるか、という進みになる。が最後の最後でもうひとつどんでん返しがあり、これにはうなった。 最後に捕まった犯人が著した告白文が載っているのだが、これはいらなかったんじゃあないか。「闇からの声」でも感じたが、情景描写がだらだらと続くのは同じで読みづかれてしまい、犯人が分かってしまうと告白文を読む気力が無かった。しかし、いったいつきとめられるのか、という期待感は高まるので、なにかフィルポッツって不思議な作家。 「闇からの声」もそうだが、ドレメイン家も遺産相続が事件の鍵。 1922発表 2019.11.22初版 図書館
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あの江戸川乱歩がミステリーベスト10に入ると絶賛した本作。期待値が大きかっただけに、そこまでの衝撃は受けなかったが、発表されたのが1920年代ということを踏まえると、歴史に残る小説だと感じた。前半の探偵役ブレンドンと後半の探偵役ギャンズの対比も物語の深みを増していると感じた。
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フィルポッツ『赤毛のレドメイン家』1922 江戸川乱歩のベスト10で、第一位に入っている作品なので、読んだ。著者はアガサ・クリスティにアドバイスをしたという先輩作家。 ブレンドンという刑事が〝被害者〟の妻に一目惚れしまい、いろいろと狂っていく話なのだが、こういう捜査側の人間らしさが痛ましくも興味深い。悪人もギラリと光る邪悪さが明らかになるか、ニーチェなどに傾倒していてやや理屈っぽい。第一次世界大戦の戦争神経症や毒ガス中毒など、戦争批判などもこめられているように思う。ギャンズが刑事にいろいろ訓戒をのべるところはなかなか名句があると思う。最初はロマンス小説のように感じたが、最後に邪悪がみえてやはりミステリーの名著だと思う。
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原著1922年刊。 本格推理小説黄金期(の前期?)の名作の一つとされ、特に日本では江戸川乱歩の絶賛以来評価が高いらしい。 冒頭の1,2章はちょっと読みにくさを感じ、あまり面白くないかなと思ったのだが、次第に物語に没頭させられた。 ちょうど私は1泊2日の検査入院で、その空い...
原著1922年刊。 本格推理小説黄金期(の前期?)の名作の一つとされ、特に日本では江戸川乱歩の絶賛以来評価が高いらしい。 冒頭の1,2章はちょっと読みにくさを感じ、あまり面白くないかなと思ったのだが、次第に物語に没頭させられた。 ちょうど私は1泊2日の検査入院で、その空いた時間を本書がとても楽しませてくれたと思う。 巻末の解説によると作者フィルポッツは普通小説の作家でもあったそうで、なるほど、本作は恋愛心理も追っていてそんな感じかもしれない。 エラリー・クイーンのような謎解きパズル小説とは違って、かならずしも結末前に全ての情報が読者に開示されるわけではない。が、そんなに不満が残る訳でもない。 後半は確かに心理戦のようなスリルがあって、面白かった。とにかく入院中の私を楽しくさせてもらい、たまたま持っていったこの本に、満足している。
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戦争の後遺症。精神に影響。国や愛する人のために戦ったのにも関わらず。 被害者を最小にして犯人逮捕。 お金。 慌てなくても、遺産はそのうち入るだろう、でも。
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余談ですが、今からちょうど100年前に書かれた作品。そんなに古い作品を読めるとは、今更ながら、文字ってすごいなぁと改めて思いました。作品自体は、驚くほどのどんでん返しがあるわけではありませんが、堅実な本格ミステリーだと思いました。アンソニーホロヴィッツの作品が好きな人にはオススメ...
余談ですが、今からちょうど100年前に書かれた作品。そんなに古い作品を読めるとは、今更ながら、文字ってすごいなぁと改めて思いました。作品自体は、驚くほどのどんでん返しがあるわけではありませんが、堅実な本格ミステリーだと思いました。アンソニーホロヴィッツの作品が好きな人にはオススメです。最後の犯人の手記は、当たり前のことながら、犯人視点なので、それだけ読むと倒叙もので、一冊で2度楽しめてなんか得した気分。主人公の刑事の無能ぶりが暴露されていて面白かったです。
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恥ずかしながら、江戸川乱歩には明るくない。 当然読んではいる。学校の図書室にあるようなものは、読んだ。 しかし、ある時、中高生の時だっただろうか、ちょっと「あわないな」と思ってしまった。 たとえるならば、牛脂多め、照り過剰なすき焼きのようで、私の好みには濃いと感じてしまったのだ。...
恥ずかしながら、江戸川乱歩には明るくない。 当然読んではいる。学校の図書室にあるようなものは、読んだ。 しかし、ある時、中高生の時だっただろうか、ちょっと「あわないな」と思ってしまった。 たとえるならば、牛脂多め、照り過剰なすき焼きのようで、私の好みには濃いと感じてしまったのだ。 その後、色々さまよって、横溝正史にたどり着くのだが、それはまた別の話。 とはいえ、江戸川乱歩がミステリ界において、否、文学史において大きな存在であることは知っている。 だから、彼が万華鏡にたとえ絶賛したという『赤毛のレドメイン家』は、ぜひとも読みたいと思っていた。 長らく絶版状態だったが、この度、新訳が出たことによって、ようやく手にすることができたのである。 著者はイーデン・フィルポッツ(1862~1960)。 『赤毛のレドメイン家』が書かれたのは1922年。 著者60歳の時、今からおよそ100年前の作品である。 読みながらたびたび既視感があった。 なんだか、見たような場面、知っているような人物が頭にちらつくのである。 象徴的な一族、 謎の復員兵、 事件の中心に美女、 これは・・・・・・? 『犬神家の一族』『獄門島』『真珠郎』『悪魔が来たりて笛をふく』『女王蜂』『百日紅の下にて』etc.etc.etc... 横溝正史だなと。 当然だ。 江戸川乱歩が絶賛したのだから、数多の作家がこれを読んだに違いない。 そして、それに感電、共鳴した彼らは、次々にその痺れを生かした作品をものしていったのだ。 なにより江戸川乱歩自身が、まさにこの翻案作品を書いている。 横溝正史も、翻案こそしなかったものの(先を越されてしまったからか?)、その余韻、反響の中にいくつもの作品を生み出したのだろう。 「今読むと古く感じる」「使い古された話である」などという評価が見られるが、それはいかに多くの感電、共鳴があったかの証拠である。 江戸川乱歩が絶賛した文章は巻頭に掲げられている。 この文章とともに読むのが、この万華鏡の物語を味わうのに望ましい形なのだろう。
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乱歩が絶賛したことでも知られるイーデン・フィルポッツの長編が新訳版に。 そういえばこれ、旧版を読んでいなかったんだよなぁ。読んでいたら比べられたのだが……。ただ、余り今時っぽくない訳文は、時代の雰囲気に合っていて良かったと思う。
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