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せき越えぬ の商品レビュー

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18件のお客様レビュー

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2023/08/28

安心安定の、西條さんの時代モノ。 東海道・箱根の関所を舞台にした、連作六話が収録されております。 小田原藩士の武藤一之介・通称“武一”は御用の向きで箱根の関所を超えようとするも、難癖をつけられて通過させてもらえなかったことから、同じ憂き目にあった同藩の晋輔や、竹馬の友・“騎市...

安心安定の、西條さんの時代モノ。 東海道・箱根の関所を舞台にした、連作六話が収録されております。 小田原藩士の武藤一之介・通称“武一”は御用の向きで箱根の関所を超えようとするも、難癖をつけられて通過させてもらえなかったことから、同じ憂き目にあった同藩の晋輔や、竹馬の友・“騎市”こと騎山市之助、そして人懐っこい関所の足軽・衛吉の協力を得て、旅人に嫌がらせをする関所役人を懲らしめることに・・・。(第一話&表題作「せき越えぬ」) さて、第一話でろくでなし関所役人の悪事を暴いた武一は、その後箱根番士として関所に勤めることになり、第二話以降は武一の関所役人としての“お仕事小説”的な展開になっていきます。 関所の手続きやシフト(?)事情など、興味深い事情にも触れながら関を超えようとする旅人たちの人間模様が描かれていきます。 主人公の武一は、真っすぐでさっぱりとしたキャラクターで、彼と騎市の身分を超えた友情は好ましいですし、関所仲間の晋輔・衛吉たちとの仲良しっぷりも楽しそうでなによりです(上役の杉田さんに怒られていても)。 そして、関所のお目付け役として配置され、その切れ者ぶりから“氷目付”と称される望月様も、一見クールではあるのですが、実は正義感のあるええ人な事が判明したり、さらに、第一話の冒頭で武一のハートを鷲掴みにした理世が、人見女として関所で共に働くことになったりと、武一の関所ライフはなかなか充実している感じで、友情と恋も程よくブレンドされていて楽しく読めます。 後半に進むにつれ、理世の元夫と武一の親友・騎市が抱える不穏な背景が描かれ、終盤では彼らの関所破りに助力するかどうか難しい選択を迫られる武一。 最終話(「関を越える者」)は、もっとハラハラするかと思いきや、割とアッサリ終わった感じでしたが、春の訪れを思わせる希望のあるラストで良かったです。 話の中に、二宮金次郎やシーボルトといった名前もチラっと出てきたのでこの時代の物語だったようですね。そういった背景も興味深く思った次第です~。

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2023/05/13

思わぬなりゆきで箱根の関守になった武一。 関所について知らない事ばかりで読んでいて勉強になった。 努力や才能といった個より、家柄や身分が全てだった時代。それらを超えて友情を育む武一。 友情物語と思っていたら最後にすごい急展開。 友情を最後まで貫いた武一、自分の信念を貫いた騎一。 ...

思わぬなりゆきで箱根の関守になった武一。 関所について知らない事ばかりで読んでいて勉強になった。 努力や才能といった個より、家柄や身分が全てだった時代。それらを超えて友情を育む武一。 友情物語と思っていたら最後にすごい急展開。 友情を最後まで貫いた武一、自分の信念を貫いた騎一。 いつかまた2人が会える未来を願う。

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2022/12/17

東海道・箱根の関 越すか越さぬか…人生の選択。 さすが西條奈加、武士物だけど難しくなく読みやすい やはりこの時代の友情話はいいですね♪ 身分の違いを超えた竹馬の友(^^) ほんわかのんびり始まった今作でしたが最後の 「関を越える者」でタイトルの意味を知ると共に ホロっと来ま...

東海道・箱根の関 越すか越さぬか…人生の選択。 さすが西條奈加、武士物だけど難しくなく読みやすい やはりこの時代の友情話はいいですね♪ 身分の違いを超えた竹馬の友(^^) ほんわかのんびり始まった今作でしたが最後の 「関を越える者」でタイトルの意味を知ると共に ホロっと来ました(T-T)

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2021/06/04

小田原藩・箱根関所の番士となった武一こと武藤一之介が、関所を越える様々な人々の物語に触れ成長していく連作集。 タイミング良く、先日某公共放送にて二宮金次郎を取り上げた番組を見ていたので、作中の小田原藩主が大久保忠真とあってもしや金次郎が出てくるのか…と期待したが、名前だけの登場...

小田原藩・箱根関所の番士となった武一こと武藤一之介が、関所を越える様々な人々の物語に触れ成長していく連作集。 タイミング良く、先日某公共放送にて二宮金次郎を取り上げた番組を見ていたので、作中の小田原藩主が大久保忠真とあってもしや金次郎が出てくるのか…と期待したが、名前だけの登場だった。金次郎が役人たちの抵抗に遭って桜木町で復興事業を進行している最中の話のようだ。 横道に逸れてしまったが、それぞれの物語は短編であることもあってアッサリしている。しかし当時の関所の手続きや役人の勤務体制など、知らないこともあってなかなか興味深い内容だった。 主人公の武一は頭よりも体が先に動くタイプ。武道は得意だが座学は苦手。 そんな彼が第一話で嫌な関所役人に嫌がらせをされ、他にも似たような嫌がらせをされた者がいたことを知ったことから一杯食わせる話は痛快だった。 しかしそれも武一と対照的な幼馴染・騎市こと騎山市之助の協力があってのこと。家柄も身分も頭の良さも武一とはまるで違う騎市との友情は最後まで続く。 『氷目付』と渾名されるほど厳しい横目付の望月が意外と熱い心を持っていたり、足軽の衛吉が身分で差別しない武一を慕って何かと助力してくれたり、武一同様武道が得意で体は大きいが怪談話が苦手な晋輔など、仲間たちにも恵まれる。 そして武一にとって重要な存在となるのは、第一話で出会った理世。武一が一目惚れした彼女とはその後、人見女として関所で共に働くことになる。 武一にとって男ばかりの職場で理世を見るのは唯一の楽しみでもあり思いは募るばかりなのだが、彼女は複雑な状況にある女性だった。 この彼女を巡る物語と騎市が終盤意外な形で繋がっていく。 ここまでアッサリした話が続いていたので、理世ともなんだかんだで最終的にはくっつくのだろうと楽観的に構えていたら全く違う展開だった。 この小田原藩の中の不協和音は先に書いた某番組でも指摘されていたので理解出来た。 またこの頃ちょうどシーボルト事件も起きていて、そことも上手く繋げてあった。 元を辿れは国を思ってやったことであっても、その方向性の違いは時に悲劇的な対立を生む。小田原藩で言えば二宮金次郎を上手く使えなかったし、後々の幕末では国を思う同士が戦争まで引き起こした。 この物語で騎市やその師がどうなったかまでは書かれていない。しかし武一との友情は離れていても続くだろうことが想像出来た。 また理世との関係も予想とは全く違う方向ではあったが、何故かそれが心地よかった。 結局武一という男が無骨なまでに正直で当たって砕けろ精神なのが良い意味で爽快だったからだろう。その性質は父親譲りだったのも痛快だ。 関所を越える者がいれば越えない者もいる。中には疚しさを抱えて越えようとする者もいた。 武一のような関所で働く者たちも含め、様々な物語があった。ちょっと物足りなさもあるが全体的には楽しく読めた。

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2021/06/04

「せき越えぬ」 最後読み終わった時は、このタイトルが心に沁みました。あまりにもこの物語にはまっていて、最後の章『関を越える者』で、パズルがはまったような、なんともいえない感慨深い気持ちになりました。こんなにタイトルが心に響いた作品は、初めてかもしれません。 小田原藩士の武一が、思...

「せき越えぬ」 最後読み終わった時は、このタイトルが心に沁みました。あまりにもこの物語にはまっていて、最後の章『関を越える者』で、パズルがはまったような、なんともいえない感慨深い気持ちになりました。こんなにタイトルが心に響いた作品は、初めてかもしれません。 小田原藩士の武一が、思わぬなりゆきから関守となり、箱根の関所を境に、関を越えようとする旅人の人生ドラマが描かれた短編集のようでありながら、ちゃんと最初から最後まで繋がっているところが、とても良く思えました。 箱根の関所を舞台に、関を越えるのか越えないのか、旅人一人一人にドラマがあり、それがまた面白かったです。

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2020/12/12

関所に勤める武士の日常が、関所破りと言う大罪を成す事になったが、良く考えればその時の時代の掟があったからにすぎない。今でも似たようなことはあると思う。 作者は日常から掟破りの流れをごく自然にえがいてるのが素晴らしい。

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2020/08/02

友情、恋慕、親兄弟との家族の絆と人間関係の切なさや尊さがふんだんに盛り込まれている 武一はとても人に恵まれていて、それは彼の人となりが真っ正直で優しいからなのだろう 叶わぬ想いも寂しさも他人のせいにせず受け止める強さは格好いい それぞれのエピソードから箱根関所の難儀さもよくわかる...

友情、恋慕、親兄弟との家族の絆と人間関係の切なさや尊さがふんだんに盛り込まれている 武一はとても人に恵まれていて、それは彼の人となりが真っ正直で優しいからなのだろう 叶わぬ想いも寂しさも他人のせいにせず受け止める強さは格好いい それぞれのエピソードから箱根関所の難儀さもよくわかる…昔は旅や引っ越しするにも大変なことが多かったのだな

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2020/06/01

箱根の関所が舞台。国防のためひとの出入りを厳しくチェックするという意味では今の時代ちょうどイメージしやすいのかもしれない、、そんなことないか。関所破りってかなりハードなんだなあ、でも、あったんだろうなあ。 職役も出世も結婚も、生まれついた立場の許す範囲が極めて制限されていた時代な...

箱根の関所が舞台。国防のためひとの出入りを厳しくチェックするという意味では今の時代ちょうどイメージしやすいのかもしれない、、そんなことないか。関所破りってかなりハードなんだなあ、でも、あったんだろうなあ。 職役も出世も結婚も、生まれついた立場の許す範囲が極めて制限されていた時代なのよなあ。不自由をどう生きるか、ということを武一や理世や騎市、さまざまな登場人物の立場に心を寄せて、考えてみたりする。 衛吉がいいキャラだなあ、心根も優しくあったかく、物語全体に良い柔らかさを出してくれてる。 胸のすくストーリーではないけれど、なにを大事に生きるかという強い思いを見せられて、余韻が後ひく1冊でした。

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2020/04/16

身分の違いを超えた幼い頃からの変わらぬ友情がとても尊い.また類は友を呼ぶのか武一を取り巻く人々(特に父親)が皆優しく筋が通っている.物語としてはあらすじを読んでいるようなところもあるが,心の中の様々な思いはこちらにも充分伝わって簡単に会うことのできない状況の中で信じることの素晴ら...

身分の違いを超えた幼い頃からの変わらぬ友情がとても尊い.また類は友を呼ぶのか武一を取り巻く人々(特に父親)が皆優しく筋が通っている.物語としてはあらすじを読んでいるようなところもあるが,心の中の様々な思いはこちらにも充分伝わって簡単に会うことのできない状況の中で信じることの素晴らしさが光る.

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2020/04/09

「隠居すごろく」でファンになった西條奈加さんの2作目。 小田原藩士・武一は箱根の関で不当な目に遭い仕返しを企み成功したようにみえたが、自身が関守として任命されることとなる。箱根関所にやって来る、西国へ帰る訳ありげな兄妹、江戸から夜逃げしてきた臨月の女など切実な事情を抱えた旅人など...

「隠居すごろく」でファンになった西條奈加さんの2作目。 小田原藩士・武一は箱根の関で不当な目に遭い仕返しを企み成功したようにみえたが、自身が関守として任命されることとなる。箱根関所にやって来る、西国へ帰る訳ありげな兄妹、江戸から夜逃げしてきた臨月の女など切実な事情を抱えた旅人などが登場する人間ドラマはそれなりに面白い。でもちょっと弱いなぁと飽きかけていた頃、同じ道場で学んだ高い家柄の騎市との友情を絡ませて大きな展開が待ち受けていた。 武一は今でいうところの体育会系の男子だが、人を見る目に優れていると思う。騎市に頼まれ、小田原藩の城主に影響を与えた巴田木米の関所破りを請け合う。前半から騎市の人物描写に何かがあるとは感じていたが、冷静な騎市がまさか高い出自を捨て恩師である木米を救うためについていく展開は予想できなかった。後半になるにつれ面白い。

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