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Sports Graphic Number PLUS の商品レビュー

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2019/11/18
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「桜は同じ周期にその蕾を咲かせる。また会おうブレイブブロッサムズ。」 文藝春秋社より発行されている総合スポーツ雑誌「Sports Graphic Number」の増刊号、「Sports Graphic Number PLUS December 2019」です。 事前のそこはかとない不安も何のその、日本中に一大ムーブメントを巻き起こすハッピーエンドで幕を閉じたラグビーW杯2019日本大会。観客動員数、視聴率、その他もろもろ予想を遥かに上回る反響ぶり。「全員玄人」状態のラグビー界でにわかファンの存在が取り沙汰されるなんて夢にも思いませんでした。 表紙を捲るとカマされる”笑わない男”の相貌に思わず冊子をノックオンしそうになる本誌は大会総集編。決勝レポを皮切りにジャパンの回顧録、仔細な論評やノンフィクション、ミニレビュー付の全試合記録集等々…。ラグビー熱に浮かされた者ならばマストな一冊となっています。 先ずは余韻生々しい決勝レポ。冗談抜きで岩だった南アの強さを歴史から、すっかり論客ぶりが板に付いた五郎丸歩の視点から紐解くゲームレビュー。「モノがちげぇわ…」と唖然とさせられた強さも「用兵がスマートだった」との指摘を受けると「…ジャパンもイケるんじゃね?」と思わされてしまうから不思議です(?)。 また印象的だったのが日本戦について語るボクスのキーマン・デアレンデとデュトイの2人。写真と言葉の節々に滲み出る「気は優しくて力持ち」を地で行く好漢ぶり。終始お騒がせだった某英傑様には日本流しきたりに倣い彼らの爪の垢を煎じて飲んで頂きたい位です。 大特集は「桜の証言」。結果も歩みも最高だったジャパンの5戦を回顧する6人のインタビュー、喜怒哀楽が蘇り気付けば手に汗を握る。…正直、31人全員の証言が読みたかったのが本音ではありますが、流石にそれは無理な注文か…。 全ては準備の結果であると切々と語る(一抹の後悔に翻意は…無いか)福岡堅樹、良くも悪くも目立ってたけどフランクで憎めない田村優、ワイルドだけどクール、そしてユーモラスな堀江翔太、不遜な佇まいとはかけ離れた丁寧な語り口の稲垣啓太、実直に次を見据える松田力也。リーチが掲げた「多様性こそジャパンの強み」を証左する、個性豊かな支柱たち。 そして田中史朗…。蕾咲かせた花咲かフミさんとつぶさに見ていた男の回顧。ブライトン以前も以後も真っ只中にいた繊細な巨人は、「君が代」における観客の斉唱に最もジャパンを取り巻く空気の変容を見る。 曰く、「今回はたしかに聞こえました」と。 「あのとき、日本が変わったと実感しました」 ただ、終わってほしくなかった。 多分、勝てない。何も出来ないかもしれない。本気のボクスに戦う前から萎縮した。 ただ、終わってほしくなかった。夢の続きが見たかった。決勝でも3決でもぶっちゃけどっちでも構わないから、奇跡でも奇跡と言わせても言わせなくてももう何でもいいからここだけは勝って、一瞬でも長くジャパンのラグビーを見ていたいだけだった。 だから、歌った。負けないように。本気のボクスは怖かったけど、負けはないんだと信じて歌った。勝て。勝て。勝て。勝て。勝ってくれ。 ひたすらにのめり込んだ熱狂の記憶は、これからも私をグラウンドへと突き動かしてゆくことでしょう。

Posted byブクログ