ミドルマーチ(2) の商品レビュー
19世紀イングランドにおける架空の地方都市ミドルマーチを舞台に多彩な人間模様を描く。第3部と第4部を収録。 複雑かつ絶妙に絡み合う人間関係が面白すぎる第2巻。主要となる人物のみならず、脇役やちょっと出のキャラクターにも魅力が満載だが、さしあたり主に気になるのは次の3つの愛のゆく...
19世紀イングランドにおける架空の地方都市ミドルマーチを舞台に多彩な人間模様を描く。第3部と第4部を収録。 複雑かつ絶妙に絡み合う人間関係が面白すぎる第2巻。主要となる人物のみならず、脇役やちょっと出のキャラクターにも魅力が満載だが、さしあたり主に気になるのは次の3つの愛のゆくえだ。 1.ドロシアとカソーボンの夫妻、それに関わるウィル・ラディスロー 2.リドゲイトとロザモンド 3.フレッドとメアリ、フェアブラザー? 男性名を使っているが作者は女性なので、不美人でも賢く、強い輝きを放つメアリという人物は作者の自己投影が色濃く反映されているのではないかと想像する(本名メアリ・アン・エヴァンズだし……)。そして、女性の心理がよく描かれているのはわかるが、この作者は何故こんなに男性の気持ちがわかるのだろう?と不思議になるほど、カソーボンやリドゲイトの心の軌跡には共感するものがあって感動を覚えた。 本作の主要人物はほとんどが姻族関係でつながっていることもあり、「相続」という問題が大きなファクターとなっている。これの如何によってその人物の運命が大きく変わってくるわけで、良心的だが軟弱なフレッド君が翻弄される様子が本巻の見どころの一つ。幼なじみのメアリが彼についてどう考えているのか、今ひとつ見えにくいのももどかしくて面白い。さらにフェアブラザー牧師というライバルも現れて……? 順調になるようになってしまうリドゲイトとロザモンド。出会いから恋愛に至る描写にウットリしてしまった、一部の文章は書き写してメモに残してしまったほど上手い。しかし、この二人にはどこか不協和音を感じさせる要素があり、どうなるかわからないがこれが先の伏線にもなっているのだろう。 そして、やはりこの物語のメインディッシュはドロシアの愛のゆくえだろう。個人的にはかなり共感を覚えたカソーボンという人物。ウィルとの対立と病のため、彼の運命には徐々に不穏な空気が立ち込めていく。夫と心が噛み合わず、すれ違うドロシアは妻としての努めを果たすべく真摯に向かい合うが、無意識的にウィルに惹かれていくのが見えて、自分としては心が痛かった。彼らの運命はいかに?とても引き込まれる人間模様だ。 ドロシアとカソーボンとウィル、リドゲイトとロザモンドは、『アンナ・カレーニナ』におけるアンナとカレーニンとヴロンスキー、リョーヴィンとキティの関係に構造が似ている(名前までどこか似てない?)。しかし、それぞれのキャラクターの性格はかなり異なっているので、結末はまったく違う方向に行きそうだ。これらの対比も考慮しながら、この先も楽しんでいきたい。 さらに、カソーボンVSウィル、カソーボンVSリドゲイト、ウィルVSリドゲイト、ロザモンドVSメアリなどなど、作品内で各人物が直接絡むとは限らないが、いくつもの人間性のコントラストが物語世界を彩っている点も見逃せない。 当時の政治情勢や農地の実情、前衛的すぎるリドゲイトによって示される科学・医学へのリテラシーの問題など、人間関係以外にも考察すべき要素が多々ある。ただ情報量が多すぎるので、そのあたりは再読時に掘り下げることにしよう。そう、本作は二読三読に値する類稀な傑作なのだ。
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心理描写等ジェイン・オースティンから多くの影響を受けているところもあるだろうが,それよりもさらに地域社会の観察に特化した書と言える。人々の変化はそれなりに大きかったが地域としての変化は少ない,と感じたことは覚えておく。訳者については,解説にある「〈分別〉と〈多感〉」という視点が興...
心理描写等ジェイン・オースティンから多くの影響を受けているところもあるだろうが,それよりもさらに地域社会の観察に特化した書と言える。人々の変化はそれなりに大きかったが地域としての変化は少ない,と感じたことは覚えておく。訳者については,解説にある「〈分別〉と〈多感〉」という視点が興味深い。
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人間性は悪くはないけれど,フレッドのいい加減さにげんなりし,うまく行っているような人々も何かしら綻びが見え,うまく行ってない人々はこれからどうなるのかと嵐の予感にはらはらする.ほんと面白い.
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全8部のうち本巻では第3部及び第4部収録。 自分より優れている人のもとで魂の安らぎを得たいと考え、妻として我が身を捧げ、夫の生活を確固たるものにしながら、自分の生活を高めていこうと結婚生活に入ったドロシアであったが、夫カソーボンとの関係は結婚当初から違和に満ちたものとなって...
全8部のうち本巻では第3部及び第4部収録。 自分より優れている人のもとで魂の安らぎを得たいと考え、妻として我が身を捧げ、夫の生活を確固たるものにしながら、自分の生活を高めていこうと結婚生活に入ったドロシアであったが、夫カソーボンとの関係は結婚当初から違和に満ちたものとなってしまっていた。 他方医学の発展と自己の成功の大志を抱く医師リドゲイトは、美しいロザモンドに魅せられ、予期していたよりも早い時期に結婚に向かうこととなった。 また、ごうつくばりの老人の遺産を巡るゴタゴタや、政治に関心を示し始めた地主と周囲の者たちとの軋轢など、物語が動き出す速度が早まってきている感がする。 人と人との関わりに関して、それぞれの考え方や思いが綿密に記述され、随所に挟まれる語り手による考察と相俟って、多面的な角度から登場人物に対するイメージを構築できる。 また、一つの地方に暮らす多様な階級の人物が存在感を持って描かれており、社会的地位や財産に伴う上下関係意識や体面の問題、職業に関する意識や価値観、男女・夫婦の役割分担、政治や宗教についての考え方などが、各人の発言や行動を通して多層的に取り上げられる。 本巻終盤では、全体的に不穏な気配を感じさせるようになってきており、どのような展開が待っているのか、次巻が楽しみだ。
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本作は、副題に「地方生活についての研究」と銘打ったとおり、狭い人間関係の中で、右往左往する人びとの心理が精緻に描かれている。ドラマチックな場面は少ないが、それが人生と達観させる説得力がある。 解説の当時の政治状況と職業観は参考になる。
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主人公ではなく、周囲の人のひとりひとりのエピソードである。その出生、死亡、といろいろな出来事を会話で進行させていく。特別な偶然は設定されていないが、ひとりひとり丁寧に説明している。
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1巻を読み終えてしばらく経過していたので、誰が誰だか辿るのが大変だった(笑)。 いやはやどうなるのかこの先。 今回ドロシアのピシッとした自論の展開があったのは、やっとちょっとスッキリした。 進行は第三者の目線で書かれていて、結構この進行役の発言も多い。遠くのものに目を向ける前...
1巻を読み終えてしばらく経過していたので、誰が誰だか辿るのが大変だった(笑)。 いやはやどうなるのかこの先。 今回ドロシアのピシッとした自論の展開があったのは、やっとちょっとスッキリした。 進行は第三者の目線で書かれていて、結構この進行役の発言も多い。遠くのものに目を向ける前に自分の足元を見よ、というようなところの例えは、今も昔も変わらない。 さて。第3巻はいつ出るのだろう。3巻までで終わりと思ってたけど、全8部の3部と4部がこの2巻だと言うから、もしかして4巻まであるのか?と不安。 話が長いのは一向に構わないが、出版を待つ時間が増えるのは少しばかりもどかしい。
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