樹に聴く の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
雑感を乱暴に述べる。 良書である。「樹木たちの知られざる生活(ピーター・ヴォールレーベン)とうっかり併読してしまったので、内容が交ざっていたら申し訳ない次第である。どちらも樹木にかんする本であり、その生きようを、足繁く通って観察して得られた知見を示してくれているのであるが、なんとなく素朴なあたたかさを感じられるのはこちらだ。同じく数字数値を用いて生態を表していても、どうしてこうも違ってくるのだろうか。 とまれ、本書「樹に聴く」には、ケヤキ、サワグルミ、カツラ、オノエヤナギ、ブナ、チマキザサ、ノリウツギ、コブシ、キハダ、アカシデ、コナラ、ヤマナシといった木々(+コラム)が紹介されており、「樹は語る」の続書としても構成を受け継いだ展開をしている。 わたしは、両書に紹介されているとある森林にほど近く棲んでいるのだけれど、足を踏み入れられた経験が、残念かな、ない。木々の名前も、頭には入るのだが実地のそれとなかなか結びつかない。わずかに幼少の頃、宅地化される前の野っ原を歩いた経験があるくらいだ。その頃見上げていた樹冠は悲しいことに失われてしまって久しい。そして、そうした人間は最早、わたし独りではないのだろう。少なくともわたしはそれを寂しく思うし、著者清和研二氏の書く通り、木々の生態についてそれこそ地に足をつけて学び直し、再生に試行錯誤するときが(遅すぎはしても)来ているのだと考える。 身近なところから、まずは、樹に会いに行きたい。
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