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戦下の淡き光 の商品レビュー

4.3

16件のお客様レビュー

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2024/06/21

第2次大戦直後のロンドン、父の転勤により14才のナサニエル(Nathaniel)と姉のレイチェル(Rachel)は母ローズの友人であり彼等が蛾(moth)と呼ぶウォルター、元ボクサーでグレイハウンドの密輸業者のダーター(Darter)、民族学者のオリーブなどの怪しげな人物たちと過...

第2次大戦直後のロンドン、父の転勤により14才のナサニエル(Nathaniel)と姉のレイチェル(Rachel)は母ローズの友人であり彼等が蛾(moth)と呼ぶウォルター、元ボクサーでグレイハウンドの密輸業者のダーター(Darter)、民族学者のオリーブなどの怪しげな人物たちと過ごすことになる。物語の前半は姉弟を守る人物たちの正体は明かされないまま、両親に置き去りにされた内向的なナサニエルの感傷的な日々が綴られる。前半の最後に姉弟が何者かに襲われた事件をきっかけに母親が姿を現す。 後半では28才になったナサニエルが亡き母の過去を探る日々が語られ、母に関する空白がジグソーのように埋められていくが、失われた一部のピースは見つからないまま物語は終わる。 僕たちはぼんやりとしかわからない物語で人生を整理する。紛らわしい風景のなかで迷子になったかのように、目に見えないもの、語られないものを集めて、 We order our lives with barely held stories. As if we have been lost in a confusing landscape, gathering what was invisible and unspoken…

Posted byブクログ

2024/05/10

代表作「イギリス人の患者」と近しく、第二次大戦直後のイギリスが舞台。 突如消えてしまった両親に取り残されたレイチェルとナサニエルの姉弟。 弟であるナサニエルが、両親の消失と突如親代わりとしてあてがわれた男達との日々、困惑から彼らへのほのかな愛情を持つに至り、青年に至るまでの彼らと...

代表作「イギリス人の患者」と近しく、第二次大戦直後のイギリスが舞台。 突如消えてしまった両親に取り残されたレイチェルとナサニエルの姉弟。 弟であるナサニエルが、両親の消失と突如親代わりとしてあてがわれた男達との日々、困惑から彼らへのほのかな愛情を持つに至り、青年に至るまでの彼らとの(やや破天荒な)生活を語る第一部。 そして両親の、とりわけ母の失踪の原因が明らかになり、その母の半生が語られる第二部という構成。 本作品では様々な愛が語られる。 親代わりの男達に対する愛情、ナサニエルのガールフレンドに対する愛情、失踪した母への複雑な愛情、そして母自身の恋の物語。 戦後の、とりわけ複雑な環境に身を置く人々の、尋常ならざるストーリーが展開される中で、これらの愛が訥々と語られる。 「イギリス人の患者」でも感じたことだが、オンダーチェが語る愛は、とても静かで、美しい。 静かなシチュエーションではないのだけれども、なぜかそこで語られる愛には、静けさが伴っている。 詩人だからなのか、あるいは「彼は詩人だからな」という先入観を私が持っているからなのかはわからない。 一人称で語るという設定にそういう効果があることももちろんあるとは思う。 ただ、それが何に起因するのかを深く考えるより、この美しさをかみしめたい。 よい文章だった。堪能した。

Posted byブクログ

2023/10/18

戦下の淡き光WARLIGHT~戦時中の灯火管制の際、緊急車両が安全に走行できるように灯された薄明り、とあり、この物語全体もまた、そうしたほのかな明かりに照らされるかのように、真実がおぼろにかすみ、なかなか姿を現さない、と訳者あとがき。まさにおぼろに霞んだほの明かり、というのがこの...

戦下の淡き光WARLIGHT~戦時中の灯火管制の際、緊急車両が安全に走行できるように灯された薄明り、とあり、この物語全体もまた、そうしたほのかな明かりに照らされるかのように、真実がおぼろにかすみ、なかなか姿を現さない、と訳者あとがき。まさにおぼろに霞んだほの明かり、というのがこの物語の読み心地だった。それは「僕」によって語られる、14才からの今にわたるマイ・ストーリー。 1945年、うちの両親は、犯罪者かもしれない男ふたりの手に僕らをゆだねて姿を消した、と始まる。場所はロンドン、戦争は終わっているようだ。僕は14才、姉のレイチェルはもうじき16才。ある朝、両親に1年間の間、子供ふたりを置いてシンガポールに行くと告げられる。子供を託したのは最近階上に間借りし始めた「蛾」と僕らが呼ぶ男。父母のいなくなった家はやがて「蛾」の知り合いが入れ替わりやってくるようになり、ある日父のイスに「ダーター」と言われる男が座っていた。 そしてある日姉が地下室でみつけた母のもの・・・ ここからミステリーの色合いを帯びてくる。きわめて影の薄い父。僕は父の職場、ユニリーバに連れて行ってもらったことがあるにもかかわらず、母の中に父はいないかのよう。 それに対し留守を託された「蛾」と知り合いの「ダーター」、ダーターのころころ変わる恋人たち。僕のアルバイト先の少女アグネス。ダーターはドッグレースの犬を夜のテムズ川を使い違法に配布していて、僕はそれを手伝う。ここらへんの疑似孤児の僕の生活描写がなんともいい。実際はとんでもない状況ともいえるが。 そして大人になった僕。母の死後10年たって外務省に志願するよう通知を受け取る。戦後しばらくの間、戦争の残り禍がまだある、というのだ。そこで明らかになる母の過去。題名のごとく、戦下の淡き光に導かれた母、そしてその落とし子の僕と姉。読み終わってみると、けっこうはちゃめちゃなストーリーなのだが、なんともゆったりした読み心地だった。 2018発表 2019.9.30初版第1刷 図書館

Posted byブクログ

2022/03/13
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

単純なノスタルジーだけでは語れない、不条理さや生命力をも感じさせる自分だけの特別な「子ども時代」と、それを答え合わせするかのような主人公の成人後の物語。人生の取り換えのきかなさ・一回性を考えると、何が大事で何がそうでもないのかよくわからなくなってくる。

Posted byブクログ

2022/01/06

母が留守にする間、主人公が預けられたのは、不思議な後見人とその友人たち。 主人公はその暮らしの中で青春を送り、青年となったとき当時の母が本当は何をしていたのかを振り替える。 記憶はモノクロだ。そんな中で、 「僕たちはぼんやりとしかわからない物語で人生を整理する」 現代は“WA...

母が留守にする間、主人公が預けられたのは、不思議な後見人とその友人たち。 主人公はその暮らしの中で青春を送り、青年となったとき当時の母が本当は何をしていたのかを振り替える。 記憶はモノクロだ。そんな中で、 「僕たちはぼんやりとしかわからない物語で人生を整理する」 現代は“WARLIGHT”、あとがきによると、戦中の灯火管制の中、緊急車両が運転のため灯した淡い灯りのことだそう。 オンダーチェ、もっと読んでみよう。

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2021/07/18

第1部の子供時代、父母の出て行った後姉と後見人の蛾たちとの交流。そして第2部、大人になって母の人生を辿り発見する形で第1部の出来事がまた違った形で浮かび上がる。この巧みなストーリー展開、描写の美しさ、隠された心情のほのめかしなど読み応えがあった。

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2020/08/04

主人公が14歳の頃、両親は仕事で外国に行くことになる。姉と二人はかつての母の知り合いらしい人物2人に任せられる。母親はスパイ活動をしており、その仲間であり、家にも普通の感じじゃない大人が出入りするようになる。粗筋から手に取るも。この年代の都合の良い時だけ大人扱い、または子供扱い、...

主人公が14歳の頃、両親は仕事で外国に行くことになる。姉と二人はかつての母の知り合いらしい人物2人に任せられる。母親はスパイ活動をしており、その仲間であり、家にも普通の感じじゃない大人が出入りするようになる。粗筋から手に取るも。この年代の都合の良い時だけ大人扱い、または子供扱い、多感なのに不安な毎日、寄り処というか、一人前に見えて、自分の意見を聞いてくれる大人に盛大に寄りかかりたくなる。それは決して肉親とは限らない。全体的にこういう、もやもやーんとした作風。

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2020/07/28

オンダーチェ「戦火の淡き光」http://www.sakuhinsha.com/oversea/27709.html 読んだ。よかった。キャッチーな出だし、内容もミステリー色が強くて実際ちゃんと結末もあるんだけど、とにかく文章がノスタルジックで映像的で、読後の余韻がものすごい。ち...

オンダーチェ「戦火の淡き光」http://www.sakuhinsha.com/oversea/27709.html 読んだ。よかった。キャッチーな出だし、内容もミステリー色が強くて実際ちゃんと結末もあるんだけど、とにかく文章がノスタルジックで映像的で、読後の余韻がものすごい。ちょっとFadeがかった質感の画面で映画になったらきれいだろうな(おわり

Posted byブクログ

2020/08/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

初めてのマイケル・オンダーチェ。スリランカ生まれカナダベースの作家で御年76歳。長いキャリアを感じさせる洗練された内容で胸に深く響いた。イギリスが舞台の小説で少年が大人になる過程に家族と戦争を絡めてエンタメ性を担保しつつ美しい瞬間がいくつも描かれている。本著は前半後半で大きく分けることができて前半は青年の泥臭く甘酸っぱい青春、後半は孤独を抱えた大人の人生。前半では両親不在の生活の中にいる大人と子どもが関係を作っていく過程がとてもオモシロい。親ではない、なんだか実態のよく分からない大人への憧憬というのは中高生の頃、必ず持つと思うのだけどそれが瑞々しくて好きだった。特にお互いのみが知る秘密が介在することで大人の仲間入りしたような気持ちになったことは自分にも記憶がある。実親の不在は不幸なこととして語られるのが定石の中で、それに閉じていないところが良い。あと彼女と過ごす背徳感と甘酸っぱさがないまぜになった空き家での時間は尊すぎて遠い目をしてしまう。前半から後半へ移行していくのが一番スリリングで青春小説だったところから急にサスペンスの要素が盛り込まれてくる。この唐突さが戦争を象徴しているように思うし、遠因としては戦争であることの表現として「戦下の淡き光」という邦題は最高だと思う。(表紙も本家より圧倒的にかっこいい…)直接的に戦火が襲わないのに戦争が各人の人生にもたらすインパクトの大きさを本著を読むとヒシヒシと感じた。後半は前半の謎解きしながら大人になっていき孤独を深めていく過程が描かれている。時間軸と視点がぐらぐらと変わっていく構成になっていて読んでいるうちに、誰がどういう過程を経てこの状態になったのか分からなくなる場面もあった。(あとがきによると著者が好むダブルナレーションなる方法らしい。)しかし混乱しながらも淡々とした描写の中で様々な事実が露呈していって「あぁ」という声にならない声が何度も出た。誰かにとって輝かしい思い出だったとしても、誰かにとっては二度と思いだしたくない事実なんだと見せつけられる。他の作品も読んでみたい。

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2020/05/10

「たとえ今、あのなかの誰かの行動を思い出そうとしても、浮かび上がるのは非現実的で順序を無視した一瞬一瞬だけだ。」 誰かのすべてを知ることはできない。 たとえそれが母であっても。一時期一緒に暮らした人であっても。 戦後の混乱とスパイであった母。 1つ1つのエピソードだけがすべてて...

「たとえ今、あのなかの誰かの行動を思い出そうとしても、浮かび上がるのは非現実的で順序を無視した一瞬一瞬だけだ。」 誰かのすべてを知ることはできない。 たとえそれが母であっても。一時期一緒に暮らした人であっても。 戦後の混乱とスパイであった母。 1つ1つのエピソードだけがすべてて、重なり合ったときにどきりとすることもある。重なりを見つけることができずに過ぎてしまったこともたくさんある。

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