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パラドックス・メン の商品レビュー

3.4

8件のお客様レビュー

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2023/06/28
  • ネタバレ

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SFリテラシーが低いので、2年前に「劇場版 少女☆歌劇レヴュースタァライト」で初めて知った言葉だが、「ワイドスクリーン・バロック」という概念が生まれるきっかけになった作品。 1953年発表作が今まで邦訳されていなかったという経緯込みで伝説だったが、最近素晴らしい刊行を続けている竹書房文庫から遂に。 が、正直、うまく乗れず。 当時最先端だった科学や技術を援用しているだけ古臭いわ、ピンチ→失神の繰り返しが単調だわ、驚愕のオチも後の作品群を思い出してしまうわ(順序は逆だろうけれど)、その他いろいろ。 ネット上にまとめられているあらすじを改めて読むと、うわ面白い、と思うが、読んでいる最中は読みづらさに戸惑ったり、自分の想像力の欠如に戸惑ったり、していた。 https://note.com/nebou_june/n/n0a3081cc1687 「スタァライト」好きの有識者の記事によれば、 なんでも歴史学者アーノルド・J・トインビーの歴史哲学が作中に盛り込まれている。 ざっくりいえば文明にも死と再生があり、(円環的にではなく)螺旋的に循環している。 この世界観自体が「スタァライト」にもつながっているのだ、と。 なるほど……。 やはり後ほど考えると面白い小説だった気がしてきた。不思議。 命名者ブライアン・オールディスが、 絢爛華麗、劇的場面、飛躍、自由奔放、宇宙冒険もの、時間と空間を手玉に、狂ったスズメバチのように、機知、深淵かつ軽薄、全太陽系、世界を身代金に、 など書き連ね、なんでも後の人々が比較的独自解釈ありで発展させてきたらしい、ワイドスクリーン・バロック。 さらにネットの海から拾ってみれば、 荒唐無稽、複雑怪奇、超絶怒濤、無尽蔵のアイデア、時間錯綜、迷宮、ドタバタ群像劇、滅茶苦茶、大法螺、ハッタリ叙事詩、破綻上等、理屈っぽい馬鹿、冒険娯楽活劇、スリリングでスピーディー、 など。 そりゃ「ワイルドスクリーンバロック」と活用変化させても全然問題なさそう。 @ 【005 プロローグ】 【007 01 心理学者に輪縄を】 【020 02 淑女とメガネザル】 【037 03 メガネット・マインド】 【056 04 襲撃】 【070 05 投影】 【080 06 帝国の避難所】 【102 07 狼の群れ】 【117 08 拷問の末の発見】 【127 09 超能力】 【145 10 尋問】 【185 11 ケイリスの帰還】 【175 12 自己の探求】 【192 13 星界からの訪問者】 【205 14 月からの脱出】 【223 15 ホットスポットの狂気】 【237 16 エスキモーと太陽人】 【248 17 太陽近傍での再会】 【265 18 決闘の終わり】 【283 19 絶体絶命】 【297 20 ハルマゲドン】 【311 21 永劫回帰】 【322 22 トインビー22】ー325 ◇326 訳者あとがき――元祖ワイドスクリーン・バロック 中村融 2019

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2022/11/10

その昔のワイドスクリーン・バロックの定義に「日本人が登場する」というのがあった。もちろん、与太の類いなのだけれど、ならば東方連合大使のシマツは、やっぱり日本人なのかねえなどと考えて笑ってしまう。お話の方は巻末の解説にあるとおりで、とんでもなくぶっとんだ展開を、きちんと畳んでみせる...

その昔のワイドスクリーン・バロックの定義に「日本人が登場する」というのがあった。もちろん、与太の類いなのだけれど、ならば東方連合大使のシマツは、やっぱり日本人なのかねえなどと考えて笑ってしまう。お話の方は巻末の解説にあるとおりで、とんでもなくぶっとんだ展開を、きちんと畳んでみせる力業に感心しなきゃいけないんだろう。とはいえ出来の悪いスパイアクションみたいな、一難去ってまた一難を行き当たりばったりに切り抜けていくようなストーリーテリングには多少げんなりする。

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2021/12/11

1953年アメリカの作家ハーネスによって書かれたワイドスクリーンバロックSF。ワイドスクリーンバロックといえばヴォークトが思い浮かぶが、本作にも武器店シリーズ、非Aシリーズのオマージュとも言うべきシーンが度々登場する。体制側と鋭く対立する秘密結社、自分自身正体不明の主人公に秘めら...

1953年アメリカの作家ハーネスによって書かれたワイドスクリーンバロックSF。ワイドスクリーンバロックといえばヴォークトが思い浮かぶが、本作にも武器店シリーズ、非Aシリーズのオマージュとも言うべきシーンが度々登場する。体制側と鋭く対立する秘密結社、自分自身正体不明の主人公に秘められた力、あらゆる組織から追われる主人公、時間も空間も股にかけて展開する物語。しかし、ヴォークトと異なるのはヴォークトが主人公周辺に言及する形で半ば唐突にエンディングを迎えるに比べ、力を持った者の責任を果たす形でエンディングを迎えるところではないだろうか。

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2021/08/31

2021-08-30 再読 つい続けて再読してしまった。あらためて気恥ずかしくなるほどピュアなラブストーリー。 今にして思うと、大まかなプロットはそう複雑ではないけれど、最後の大技はもうここにくるか!という驚愕物。うん。傑作。 2021-08-25 分断したアメリカ帝国、その礎...

2021-08-30 再読 つい続けて再読してしまった。あらためて気恥ずかしくなるほどピュアなラブストーリー。 今にして思うと、大まかなプロットはそう複雑ではないけれど、最後の大技はもうここにくるか!という驚愕物。うん。傑作。 2021-08-25 分断したアメリカ帝国、その礎となる発見をした後行方不明になった英雄の妻、帝国の行く末を左右する預言者、帝国支配に抗う盗賊組織。 主人公は5年前に記憶を失った状態で発見され、脅威の成長を見せて一線で暗躍する盗賊。 このワクワクする人物設定を駆使して、舞台は地球上から太陽にまで、そして時空すら超える。 けれどその物語は気恥ずかしくなるほどのラブストーリー。 流石にやや古くなった部分はあるけれど、傑作の名は伊達じゃない。堪能堪能。

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2020/09/16

ワイドスクリーン・バロックというジャンルのSF作品だそうだ。とはいっても、本作品の定義として、ワイドスクリーン・バロックという言葉を作ったようなので、そもそもワイドスクリーン・バロックとは何ぞやといわれても、これを読むしか理解できない。わけのわからないことを書いているが、本作品も...

ワイドスクリーン・バロックというジャンルのSF作品だそうだ。とはいっても、本作品の定義として、ワイドスクリーン・バロックという言葉を作ったようなので、そもそもワイドスクリーン・バロックとは何ぞやといわれても、これを読むしか理解できない。わけのわからないことを書いているが、本作品も突飛だ。しかし、ストーリーはあるし、SF的にきちんと成立していて読みにくいことはない。肩ひじ張らずにページを繰れば楽しさが伝わってくる。1953年に書かれた作品であるが、オリジナルであるがゆえに時間を超えて今でも楽しめる。それとも未来に書かれた作品が時間を逆行して過去に出版されたのだろうか。そんなことを思ってしまう作品だ。

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2020/08/14
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

本書は「幻の名作」とされながら、長らく邦訳されていなかった(らしい)チャールズ・L・ハーネスの長編SF小説。 主人公は<盗賊結社>の一員であり記憶喪失の男アラール!彼を追うは悪しきアメリカ帝国宰相バーン・ヘイズ=ゴーント!次々と襲い掛かるヘイズ=ゴーントの放つ追っ手!アラールは帝国宰相の魔の手から逃れることができるのか!?また、失った記憶を取り戻すことができるのか!?取り戻したその先にあるものは!?そしてアラールを危険因子であるとヘイズ=ゴーントに教示した全知全能の男メガネット・マインド(Mega-net Mind)の正体とは!? 序盤から度々挿入されるアクションシーン、アラール(結社)を密かに手助けする宰相夫人ケイリスとのラブロマンス等、ハリウッド映画を観ているような臨場感溢れる展開・・・かと思いきや、難解なSF要素(科学理論)や、文化人類学の話題を挿入してきたり・・・とにかく様々な要素(ネタ)が入り乱れている。良く言えば読者を飽きさせない、悪く言えば忙しい。個人的には後者の印象が強かったか。 「アラールとメガネット・マインドの正体」については明確に示されているので問題はなかったのだが、ラストのネアンデルタール人とエアントロプスに関する挿話と「すべての人間は兄弟だ!」という台詞の意味にイマイチ答えが得られなかった。 太陽に埋没したステーションにおいて、高度な知性体(超人)となったアラールが大量のミューリウム(人類の知る最高のエネルギー物質)を浴びて消滅したことが、(何かしらの反応を起こして、)時空を超えて人類の祖先(ネアンデルタール人ら)の遺伝子を変容させたのか?(本文「想像を絶するほど巨大な知性によって遺伝学的に再設計されており~」より。) そしてその変容は人類の未来をいくらか良いものにしたということだろうか?(本文「ついには宇宙にあまねく広がるトインビー22の先触れだったのである」より。)(※トインビー22・・・作中で語られる文明相で、作中はトインビー21。つまりトインビー22は次の文明相となる。トインビー21(作品の舞台)は東方連邦とアメリカ帝国との戦争で終焉を迎えることになるので、本来であればトインビー22にシフトできないはずなので。)

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2021/08/17

おかしな言い方かもしれないが、 ハリウッド製SF映画のノベライズ本のような印象。 つまり、派手で、様々な要素が入り乱れていて、 キャラクターが魅力的なのだ。 帯の煽り文句から、 どんなワケのわからない変態的な内容なのか…… と、少々腰が引けていたのだが、 読み始めたら割にテンポよ...

おかしな言い方かもしれないが、 ハリウッド製SF映画のノベライズ本のような印象。 つまり、派手で、様々な要素が入り乱れていて、 キャラクターが魅力的なのだ。 帯の煽り文句から、 どんなワケのわからない変態的な内容なのか…… と、少々腰が引けていたのだが、 読み始めたら割にテンポよくページを捲ることが出来た。 敵との闘いは通常、 レイピアを用いた決闘(duel)というのがシブい。 ところで、コロッと忘れていたが、 著者の作品はアンソロジー『時の娘』で読んでいた。 https://booklog.jp/users/fukagawanatsumi/archives/1/4488715036 ズバリ、表題作のタイムパラドックスSF短編。 チャールズ・L・ハーネスは 2005年に亡くなったアメリカのSF作家。 『パラドックス・メン』初出は1953年、 実に60年以上を経ての初邦訳。 時は2177年。 東西冷戦の緊張状態の中、 アメリカ合衆国を盟主とする西側の連合が結成された際、 ラテン諸国が表看板となる皇族を立てようと提案し、 現在のアメリカ帝国元首は老女帝フアナ・マリア。 記憶を失った状態で助け出された男は アラール=「翼のある」の意=という名を与えられ、 奴隷解放を目指す地下組織のメンバーとなった。 何度も死の危険に直面しては自身の特異能力で、 あるいは周囲の助けによって窮地を脱するアラールは、 拷問を受けても苦痛を力に変えて事態を打開。 彼は海に不時着した宇宙船から脱出した折、 航宙日誌を携えていたが、 記されていたのは当の宇宙船《トインビー22》 建造前の日付だった――。 といったストーリーで、 諸々の謎が解かれて「ああ、やっぱりね」というラストだが、 昔の小説ではあるけれども、古臭さは感じなかった。 ピルトダウン人【※】への言及があって、 捏造の発覚が1949~1953年だそうなので、 作者は紛いものと承知でわざと作品に織り込んだのだろうか。 【※】https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%94%E3%83%AB%E3%83%88%E3%83%80%E3%82%A6%E3%83%B3%E4%BA%BA ともあれ、映画向きのお話だと思うのですが…… ダメですかね……。

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2019/09/20

元祖WSBという触れ込みで、「キャッチワールド」や「神鯨」のファンとしては是非読まねば、と思うところだけれど… うーん、いまさら感が強いかなぁ。 初出が53年、  ビーグル号 50年  幼年期 53年  永遠の終わり 55年  夏への扉 56年 今回の底本は99年版ということだ...

元祖WSBという触れ込みで、「キャッチワールド」や「神鯨」のファンとしては是非読まねば、と思うところだけれど… うーん、いまさら感が強いかなぁ。 初出が53年、  ビーグル号 50年  幼年期 53年  永遠の終わり 55年  夏への扉 56年 今回の底本は99年版ということだけど、50年代の名作群と肩を並べられるような出来ではありませんわな。 しかし、これが早川でも創元でも河出でもなく竹書房から出るというのが、「時代も変わった」ってことなのかな。

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