わたしの良い子 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
初めてタイトルを見た時、手に取るのを躊躇いました。 なんと言い表して良いかわからない『わたしの』『良い子』という言葉への違和感、気持ち悪さがあったからです。 どんな話なのか気になるけど、誰かが子どもを軽んじたり自分の理想に押し込めたり、そんな苦しい展開がもしあったら。 散々迷いながら読み始めましたが、全くの杞憂でした。 椿と朔と、2人を取り巻く人々の生活に近づきすぎずあっさりと、でも決して冷たくもなく描き出していく文章がとても心地よかったです。 終盤の『良い子、という言葉を使うことに、ずっとためらいを感じていた。わたしたち大人にとっての(扱いやすくて)良い子でいなさい、という脅迫みたいになってしまうことがこわかった。』という一節を読んだ時、自分が最初に感じていたのはこれだったのか、と腑に落ちました。 そこから続く椿の朔に対する祈りのような愛を見た時、タイトルが自然と思い返されて、じんわりと物語の風景に馴染んで溶けていくような、そんなイメージが浮かびました。 初めて手に取った時と180度違う気持ちで、今、表紙を眺めていられることが嬉しいです。
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椿のように、感情に支配されずに自分を俯瞰できる人ににりたいなぁ。 『普通は〜』とは、本当によく聞く言葉だ。 その『普通』はその人にとっての普通であり、普遍性はないはずなのに、 違和感を持ってはいても、誰かに普通はこうでしょ、と言われたらなんとなく同調してしまう人は多いと思うけれど...
椿のように、感情に支配されずに自分を俯瞰できる人ににりたいなぁ。 『普通は〜』とは、本当によく聞く言葉だ。 その『普通』はその人にとっての普通であり、普遍性はないはずなのに、 違和感を持ってはいても、誰かに普通はこうでしょ、と言われたらなんとなく同調してしまう人は多いと思うけれど、そこで『なぜ?』を言える椿の強さが、読んでいて気持ちが良かった。 かと言ってすごく尖っていて誰にでも噛みついていくようなタイプではないのがすごく良い。 それこそ、『普通なら』鈴菜にもっと怒ったり文句を言ったりしても良いのに、と思ってしまったけれど。笑 椿の、周りに合わせるわけではないが静かに自分を貫いている生き方がとても素敵だと思う。
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妹、鈴菜の子供である朔を預かった椿。朔が一歳の頃から小学二年生になる頃までの日々の出来事や椿の思い、周りの人々とのかかわりなどが描かれている。子供を育てるのは大変だ。椿は朔が大きくなるにつれて、他人の子供と比べて葛藤したり、よくわかってない人に知ったふうなことを言われたりする。そ...
妹、鈴菜の子供である朔を預かった椿。朔が一歳の頃から小学二年生になる頃までの日々の出来事や椿の思い、周りの人々とのかかわりなどが描かれている。子供を育てるのは大変だ。椿は朔が大きくなるにつれて、他人の子供と比べて葛藤したり、よくわかってない人に知ったふうなことを言われたりする。そんな中で自分の子でなくても、周りの子のように何でも要領よくいかない子でも、朔はそのままで充分良い子なんだと悟った椿。朔も椿の気持ちは成長するにつれてわかっていくと思う。椿がお付き合いしている高雄は素敵な人で、友人の穂積もいい人だ。担任の先生や子育てを他人事に感じている高原、平気でセクハラ発言をするような部長にも、はっきりと自分の意見を言える椿の強さは朔と生活する上でできたものだと思う。これからの椿と朔と妹の鈴菜の新しい生活でもいろいろなことがあるはずだが、なんとか乗りきっていくのではないかと思う。色々と考えさせられることが多い物語で、読んでよかったと思える一冊だった。
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ストーリーは淡々と進んで行く。特別大きな出来事が起こるわけでもなく。 でも、この方の紡ぐ言葉が好きで好きでたまらない。
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訳あって椿が一緒に生活している 妹 鈴菜の子供 朔(さく) 小学校入学と同時に勉強が始まり、周りの子と我が子を比べてしまい戸惑う椿。子の為と大人の考えを押し付けているのでは、マイペースな朔に不安から苛立つ椿「自分のやっていることが本当にただしいのかわからない」私も悩んだ事があった...
訳あって椿が一緒に生活している 妹 鈴菜の子供 朔(さく) 小学校入学と同時に勉強が始まり、周りの子と我が子を比べてしまい戸惑う椿。子の為と大人の考えを押し付けているのでは、マイペースな朔に不安から苛立つ椿「自分のやっていることが本当にただしいのかわからない」私も悩んだ事があったなと思い出す。 目には見えない愛情 朔には伝わっていると思う。
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甥っ子と暮らす独身女性の話。寺地はるなの作品に出てくる女性は弱めな傾向があると思っていたが、この主人公ははっきり物を言う女性で、読んでいて気持ちが良かった。 つくづく世の中は母親信仰というか、子育てイコール母親と見なされているのだなぁと感じた。と言っても、保育園に迎えに来る30代...
甥っ子と暮らす独身女性の話。寺地はるなの作品に出てくる女性は弱めな傾向があると思っていたが、この主人公ははっきり物を言う女性で、読んでいて気持ちが良かった。 つくづく世の中は母親信仰というか、子育てイコール母親と見なされているのだなぁと感じた。と言っても、保育園に迎えに来る30代前半の女性は大半が母親だから、そう見てしまうのも無理はないとも言える。この主人公のように、子育て中の女性が叔母とか、親戚という可能性も頭の片隅に入れて会話したいなぁと思った。 最近は彼氏彼女とか夫・妻と言わず、恋人やパートナーと呼ぶ流れがあるが、性的嗜好に限らず全ての事柄で役割を決めつけるのはやめたい。 甥っ子の母親(妹)は未婚で子供を産み、失踪するというとんでもない母親だが、このような人物をダメな母親と糾弾しても何も解決しないし誰も救われない。それぞれの事情を汲んで、無理のない範囲で解決策を考えている主人公は合理的で前向きだと思った。
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不自由なことはいっぱいある。悩むことも。でも不幸じゃない。 「あきらめる、なんて言いかたおかしい。やめて」 自分の家庭を持ってない女の人は幸せじゃないの?偏見も甚だしいね、などとは言わなかった。思ってはいたけれども、思ったことをぜんぶ言う必要はない。言葉は刃で、鈍器だから。 ...
不自由なことはいっぱいある。悩むことも。でも不幸じゃない。 「あきらめる、なんて言いかたおかしい。やめて」 自分の家庭を持ってない女の人は幸せじゃないの?偏見も甚だしいね、などとは言わなかった。思ってはいたけれども、思ったことをぜんぶ言う必要はない。言葉は刃で、鈍器だから。 主人公椿の周りの登場人物たちは、どれも現実にいそうな人たち。でも、それに椿のように対応できる人はあまり知らない。 感情的に動きがちな私も少しは見習いたい。 あちこちにハッとさせられる表現が散りばめられていて、読み終わってしみじみ良さが胸にひろがる、そんな話でした。
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親ガチャならぬ、子ガチャ。どんな子が産まれるかは分からないし、産みの親だからと言って必ず子を愛せる訳ではない。人間合う合わないがあるから仕方ない。 自分ひとりで抱え込まず、周りに頼ることが大事だと思った。 思ったことをはっきり言う椿さんカッコいい!男だからとか、上司だからと...
親ガチャならぬ、子ガチャ。どんな子が産まれるかは分からないし、産みの親だからと言って必ず子を愛せる訳ではない。人間合う合わないがあるから仕方ない。 自分ひとりで抱え込まず、周りに頼ることが大事だと思った。 思ったことをはっきり言う椿さんカッコいい!男だからとか、上司だからとか関係なく、嫌なら嫌と言うこと大事!でも、ちょっと嫌なことなら、陰で友達に愚痴って受け流す懐の深さ!バランス最高!!! 何が「いい子」なのか判断難しいけど、その子が生きる力をつけてくれればとりあえずOK!
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男を追いかけて沖縄へ行ってしまった妹に代わって、その息子朔を育てている主人公、椿。 おっとりしていてマイペースな朔に、いらいらすることもあるが冷静に、そして彼のことを大切に考えている椿がとても立派。 「やさしいくせに、他人への関心が薄い」と同僚に評される椿は、わたしにとっても理想...
男を追いかけて沖縄へ行ってしまった妹に代わって、その息子朔を育てている主人公、椿。 おっとりしていてマイペースな朔に、いらいらすることもあるが冷静に、そして彼のことを大切に考えている椿がとても立派。 「やさしいくせに、他人への関心が薄い」と同僚に評される椿は、わたしにとっても理想的で憧れる。 少し変なところがあるのも、読んでいて楽しい。彼氏の後輩女性真弓と鉢合わせをして、流れでお茶をするシーンは思わず笑ってしまう。 >「狙ってるの?高雄を」 >「だって悪くないでしょ?須田さん。顔もまあまあだし(略)結婚相手にはちょうどいい」 >「ちょうどいいのか。気立のいい男であるとは思っていたが」 >「気立がいいって日常会話で使う人初めて見たんですけど」 >「よかったね」 >「何がですか」 >「今日初めて見られて。日常会話で使う人を」 >もうやだ、真弓さんがテーブルに突っ伏す。 こういうテンポすきだ。緊張感ある空気のはずなのに、どこか斜め上を行っている。 真弓さんが「それなりに腹黒くて、計算高くて、でもそれを完全に隠蔽できるほど狡猾でも老獪でもない、そういう、いい子なのも伝わってくる。 タイトルにある、良い子にはいろんな意味があるんだ。
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ストーリーも好みで感動もできる。そしてなんと言ってもおもしろ可笑しい。冒頭の砂のところなんて最高だし、他にもくすりポイントが多い。 違う作家さんなら穂積を主人公に、または姉妹をパラレルに描くこともありそうな気がしたが、ずっと椿の視点が私には良かった。 それと、寺地はるなさんの...
ストーリーも好みで感動もできる。そしてなんと言ってもおもしろ可笑しい。冒頭の砂のところなんて最高だし、他にもくすりポイントが多い。 違う作家さんなら穂積を主人公に、または姉妹をパラレルに描くこともありそうな気がしたが、ずっと椿の視点が私には良かった。 それと、寺地はるなさんのこういう類の描写にも惹かれる。 『あのカフェに醤油を置き忘れてきたと、ふいに気づく。なにしに行ったんだよ、ばかだな、と思ったら、ようやく涙が出た。』
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