宇宙はなぜ哲学の問題になるのか の商品レビュー

伊藤邦武(著者)

2024/05/16

　とても面白かったです。宇宙にも哲学にも興味はあるけど、宇宙の本は図や計算式が出てきて読めず、哲学の本は内容が難しすぎて読めず、なわたしにもびっくりするくらいわかりやすくて、内容もどんぴしゃな一冊でした。
「宇宙の中の人間の位置」がこの本の大きなテーマです。科学と哲学、宇宙と人間の関係をソクラテス、プラトン、カント、ルソー、ウィトゲンシュタイン等々、メジャーな哲学者の考えとともに解説されていて、いちばん頁を割かれていたのはカントでした。難しかったけど、少しだけ掴めたような気がします。少しずつ哲学の本にも挑戦したいです。

　言語学に興味があって、初心者向けの本は何冊か読んでいるものの、でも自分が興味がある分野がはっきりとしていませんでした。
　第3章『宇宙人は「知性」をもつのか？』で宇宙人の言葉を理解できるのか、宇宙人が何処かから発信しているかもしれないメッセージを受信し、翻訳することはできるのかといった問いが「なぜ言語は意味を持っているのか」「私たちはなぜ、言語を使って互いにコミュニケーションをすることができるのか」に繋がって、ここを読んだとき、自分が興味のある分野は言語哲学かもしれない、という発見がありました。また読みたい本が増えました。
　あと、SF小説への理解も深まりそうで、うれしいです。

2021/02/22

宇宙の捉え方を哲学、科学をもとに説明されている。歴史的に哲学者たちが宇宙を論題にしてきた例をあげて最後には地球外生命体の存在にも触れている。哲学について触れたことのない自分にとってとても難しい内容であった。

2020/09/03

宇宙をどのようなものととらえるかについて、カントの論を中心に、それ以前のギリシア古代とそれ以後の現代の論についてもとりあげている。カントについては、一般的なカントの解説書では見ることのない『天界の一般自然史と理論』等への言及など、新しく知ることがけっこうあった。また、現象世界と物自体の関係についての説明も丁寧で、すっきりわかるとまではいかないが、類書よりも、その辺りのところをきっちり説明しようとしていると感じた。

2020/05/26

帯に「いちばんやさしい哲学入門」とあるけれど、ひらがなの「やさしい」を「易しい」と勘違いすると読み出してすぐに投げ出したくなるはず。全然「簡単に理解できる」話ではないから。でも「優しい」だと思えば、嘘とは言えないものの、著書の丁寧で熱心で面白い話に「よく分からないけどもう少し読んでいたい、先を見てみたい」と思うようになるはず。
本書は古代ギリシアの哲学からはじめて「宇宙は無限か」「宇宙が無限の広がりを持つなら知的存在がいるはずだけど私たちはその宇宙人とコミュニケーションとれるのか」という問いに進んでいく。
私は「学問は哲学として始まった、具体的な対象や方法が固まると〇〇学として独立していった、最後に残った『よくわからないもの』を研究するのは今日でも哲学」という話が好きです。本書もその一つ。
ただし、第一章の古典〜近代科学と哲学の関係や第三章の宇宙の無限性や宇宙人とのコミュニケーションについては面白く楽しく読めたのに対し、第二章のカントの説明は理解できた気がしない。他の哲学入門書を読んでもそうなので私のツボ（の反転）がそこにあるのだろう。

2020/03/30

わかりやすく哲学の思考や実例を紹介し、科学との関係を説明してくれています。カント哲学における宇宙の有限性と無限性の話、大学の研究室に入った頃から科学的に証明することの正しさや限界についてあれこれ思案してきましたが、それらに着地点を与えてくれたような気がします。哲学入門にもってこいの一冊です。

2019/11/24

タイトルに惹かれる。哲学は天文学や科学と常に番いとして在る学問であり、科学の変遷はそのまま哲学の変遷でもある。それを宇宙と結びつけて紐解いていくのが面白かった。全体的にカントの理論が多かったけど、言語哲学からのパラダイムシフトの話も充実していた。

2019/10/05

タイトルからして「宇宙をどう認識してきたか」が展開されるのかと思ったら、がっつり哲学。それもカント哲学ときた。いけません。「純粋理性のアンチノミー」を展開されてもね。ちくまプリマー新書なのに難しくなってしまう。とはいえ、宇宙認識が人間の思考そのものに与える影響を無視できるはずもない。人間の認識力も宇宙と同じように拡大してきている、のかな。