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ある一生 の商品レビュー

4.3

40件のお客様レビュー

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2024/08/31

 オーストリアの山あいで二十世紀のほとんどを過ごした男の生涯をたんたんと146ページほどの文章で綴っています。76年の生涯で山から出たのはナチスの兵としてロシアのコーカサスに従軍し捕虜を含めて八年以上の従軍した以外オーストリアからの山からでることはなかった。  幼くして母をなく...

 オーストリアの山あいで二十世紀のほとんどを過ごした男の生涯をたんたんと146ページほどの文章で綴っています。76年の生涯で山から出たのはナチスの兵としてロシアのコーカサスに従軍し捕虜を含めて八年以上の従軍した以外オーストリアからの山からでることはなかった。  幼くして母をなくしアルプスの農場主のもと過酷な労働を強いられ農場主から足を痛めつけられ一生を足の障害を背負いながらもロープウェイの建設に従事して若き日の初恋を実らせるも数年で新妻を雪崩でうしなう。彼は自分を幸せな人生だったと思っている。彼の人生は他と比較することなく、金、色に溺れることなくごく平凡に真面目に過ごした。アルプスの山あいで一生を終えた人生を自然豊かに丁寧に描いてます。今年読んだ最高の文学作品と思います。  今、新宿武蔵野館で映画上映されてます。

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2024/08/07

映画化された「ある一生」の原作。 映画は原作をほぼ忠実に表現していたと思う。 オーストラリアアルプスの寒村に生きた、一人の男の生涯。 孤児の私生児として、親戚に引き取られた男の子。 農村の仕事を強いられ育つ。 成長し、男となっても、村から出ることはなく、山の村で過ごす。 妻を娶...

映画化された「ある一生」の原作。 映画は原作をほぼ忠実に表現していたと思う。 オーストラリアアルプスの寒村に生きた、一人の男の生涯。 孤児の私生児として、親戚に引き取られた男の子。 農村の仕事を強いられ育つ。 成長し、男となっても、村から出ることはなく、山の村で過ごす。 妻を娶り、亡くし、兵隊に行き、そ してまた村に戻り生涯を終える。 映画を先に観たが、書籍で読むと、より深く男の気持ちに入り込める。 ただ、映画を観ると、彼が暮らしたオーストラリアアルプスの山々の景色が、まざまざと目の前に浮かぶ。 淡々と生きた物語。 映画を観てから、本書を読んだのは間違っていなかったと思った。

Posted byブクログ

2024/07/01

【琉大OPACリンク】 https://opac.lib.u-ryukyu.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB28470442

Posted byブクログ

2024/05/25

積読していたが、映画化されるというので、本棚から手に取って読んだ。映像化されたらどうなるかなと思いつつ読む。鞭で打てれるシーンは絶対前半のメインのシーンだろうな。見るのが苦しそう。 短い小説なのですぐに読めてしまうのが勿体無い。「ストーナー」くらいの長さが欲しいなと思った。この淡...

積読していたが、映画化されるというので、本棚から手に取って読んだ。映像化されたらどうなるかなと思いつつ読む。鞭で打てれるシーンは絶対前半のメインのシーンだろうな。見るのが苦しそう。 短い小説なのですぐに読めてしまうのが勿体無い。「ストーナー」くらいの長さが欲しいなと思った。この淡白さがよいのかな。 日本の小説家だが、河崎秋子の「ともぐい」の世界と似ている。山の中で過酷な自然の中で過ごす男の一生という点で。

Posted byブクログ

2024/01/24
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

静かないい本でした。生涯唯一の大切なパートナーマリーとの思い出の残るかけがえのないあの場所。彼女の死後、ロシア抑留の地から書いた読まれることの無い恋文。長い年月と山との邂逅。

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2024/01/08

ゆっくり考え、ゆっくり話し、ゆっくり歩く。 しっかりとその足跡を残す。 古いものが死ねば、新しいもののための場所ができる。 人の時間は買える。人の日々を盗むことはできるし、一生を奪うことだってできる。 でも、それぞれの瞬間だけはひとつたりとも奪うことはできない。 人生とは瞬...

ゆっくり考え、ゆっくり話し、ゆっくり歩く。 しっかりとその足跡を残す。 古いものが死ねば、新しいもののための場所ができる。 人の時間は買える。人の日々を盗むことはできるし、一生を奪うことだってできる。 でも、それぞれの瞬間だけはひとつたりとも奪うことはできない。 人生とは瞬間の積み重ね 負った傷あるいは負わされた傷、負わせた傷は抱えて生きるより他ない。 氷の女に会ったことはないけれど、あの冷たさがどういうものか、わかる。 冷え切った身体に流れる涙はとても熱い。

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2023/10/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

オーストリアの小説。 ==== エッガーはうなずき、部長はため息をついた。そしてこう言った。その言葉を、エッガーはその瞬間には理解できなかったが、一生のあいだ忘れることはなかった。「人の時間は買える。人の日々を盗むこともできるし、一生を奪うことだってできる。でもな、それぞれの瞬間だけは、ひとりたりと奪うことはできない。そういうことだ」(p.45) ==== この言葉の通り、一生のうちの瞬間瞬間が150ページの中にくっきりと描かれている。特に最後の20ページくらいの「氷の女」との出会いの場面だけでも、またいつか読み返してみたいくらい強烈に印象づけられた。「氷の女」とはいったいなんなのだろう、と読んだ後も考え続けている。

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2023/06/29

オーストリアの山岳地帯で20世紀を生き抜いた男の『ある一生』。 本来なら物語の主人公にはなりえない、平凡で簡素で、厳しい山の男、エッガーの人生。それでも、この物語を読み終わった読者は彼にアルプスを見上げるような大きな敬意を抱くだろう。 何のためでもなくただ毎日を耐え抜くということ...

オーストリアの山岳地帯で20世紀を生き抜いた男の『ある一生』。 本来なら物語の主人公にはなりえない、平凡で簡素で、厳しい山の男、エッガーの人生。それでも、この物語を読み終わった読者は彼にアルプスを見上げるような大きな敬意を抱くだろう。 何のためでもなくただ毎日を耐え抜くということ、生き抜くということ、それこそが人生なのだと教えてくれる一冊だった。彼の一生はこの本の中で静かに眠り続け、しかしエッガーの心の中はたしかな幸せで満たされているのだろう。

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2023/05/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

私生児として生まれ、幼少期は理不尽な扱いを受けるも成人する。あるがままを受け入れ弱音を吐かず生き延びる。山で生きた不器用な男の話である。 『ストーナー』読後は余韻から抜け出せなかったのだが、今回はなぜか余韻がない。エッガーの感情があまりにも無いせいだろうか。エッガーが人と関わろうとせず、自然の中でただ静かに生きようとだけしたからか。

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2023/05/09

多くの人は、何かを手に入れたいという願いに満ちた日々を送る。多くの物語は、何かをなした人々の一生を記す。そのどちらでもない、ある男のある一生。 パール・バック『大地』でひたすら土地を耕し続けた初代の人生も思い起こすが、彼ですら土地というものを欲し、贖い、子孫に残した。何も持たず、...

多くの人は、何かを手に入れたいという願いに満ちた日々を送る。多くの物語は、何かをなした人々の一生を記す。そのどちらでもない、ある男のある一生。 パール・バック『大地』でひたすら土地を耕し続けた初代の人生も思い起こすが、彼ですら土地というものを欲し、贖い、子孫に残した。何も持たず、何も残さずこの世を去ったアンドレアスだけど、これも生であり、これこそが生なのだと思う。そもそも、人生は(例えどんなに短くても)全うされた時点で勝ち得たものなのだろう。アンドレアスの人生が、正直さと勤勉さにより全うされたものであるように。

Posted byブクログ