ある一生 の商品レビュー
ある一生、「ある人生」とも訳せる。ネットのおすすめ本で出てきたので、図書館で借りて読んでみた。短い話で、かつ淡々とした文章なので1日で読めた。しかし、この薄い本には、一人の男の一生が詰まっていると感じる。偉人でもヒーローでもない名もない男の一生が。 舞台はアルプスの村で、ア...
ある一生、「ある人生」とも訳せる。ネットのおすすめ本で出てきたので、図書館で借りて読んでみた。短い話で、かつ淡々とした文章なので1日で読めた。しかし、この薄い本には、一人の男の一生が詰まっていると感じる。偉人でもヒーローでもない名もない男の一生が。 舞台はアルプスの村で、アンドレアス・エッガーは私生児として生まれ、伯父に引き取られる。この伯父の元で、過酷な労働と虐待の中で右足が不自由になる。成長した彼は、伯父の元を離れロープウェイの建設現場で働く。やがて結婚して、ささやかな幸福を得る。しかし、それも長続きしなかった。妻を雪崩でなくしたのだ。その後は第二次大戦に従軍し、ソ連の捕虜となり抑留される。帰郷後はロープウェイの保守管理の仕事に就く。さらに年老いてからは、山岳ガイドを務める。そして、誰にも看取られることなく、一人静かに死んでいく。 彼は他人とコミュニケーションしない。例外は妻のみか。また自分と他人と比べることもしない。非常に内省的というか、人生を達観しているように感じる。他からみれば、彼の人生は幸福ではないと感じるかもしれないが、そうでないだろう。精一杯に生きた。そして彼は悪事をはたらくこともなく、誰も不幸にしていない。
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激動する時代の中で派手ではないしむしろ地味すぎるくらいだけど、天寿をまっとうしたエッガーは素晴らしいと思う。 もう少し幸せがあってもいいと思ったけど、イタリアの大自然の中で育まれる「幸せ」は私が思う「幸せ」とは違うんだと認識。
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「人の時間は買える。人の日々を盗むこともできるし、一生を奪うことだってできる。でもな、それぞれの瞬間だけは、ひとつたりと奪うことはできない」 何を言うてますのん? 高評価しておくとさすが分かってるなと思われる系小説です(なーんやそれ!) いやでも、分かったことはある ビビっと...
「人の時間は買える。人の日々を盗むこともできるし、一生を奪うことだってできる。でもな、それぞれの瞬間だけは、ひとつたりと奪うことはできない」 何を言うてますのん? 高評価しておくとさすが分かってるなと思われる系小説です(なーんやそれ!) いやでも、分かったことはある ビビっと降りてきたことはある 人の一生より、地球の一生のが長い! どうだゼーターラーさんよ まさかこのお話で、この感想を抱く読者は想定してなかったろう! いやでも地球すげー!ってのがたぶん隠されたテーマだな 見破ってしまいました ゼーターラーさんも気付いてなかったと思うけど、わいは見破りました わいすげー! 地球の次の次にすげー!(地球の次が気になるわ!)
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淡々とした筆致で綴られる、一人の男の一生。変わらぬアルプスの山々、移りゆく20世紀を背景に、エッガーが生ききった人生の小さく硬い砂粒に似た手触りが胸を刺す。愛も希望も悲劇も辛苦も、与えられた命の一日。恨まず悔やまぬその静かな強さが印象的。「人の時間は買える。人の日々を盗むこともで...
淡々とした筆致で綴られる、一人の男の一生。変わらぬアルプスの山々、移りゆく20世紀を背景に、エッガーが生ききった人生の小さく硬い砂粒に似た手触りが胸を刺す。愛も希望も悲劇も辛苦も、与えられた命の一日。恨まず悔やまぬその静かな強さが印象的。「人の時間は買える。人の日々を盗むこともできるし、一生を奪うことだってできる。でもな、それぞれの瞬間だけは、ひとつたりと奪うことはできない」 過去や未来、環境に関わらず、目の前の一瞬は常にまっさらで、態度を選択する権利は我々にある。その積み重ねとしての誠実な一生、難しいけど理想。 瞬間の積み重ねとして、選択の連続としての生を生きること。鼓動が続く限り、この鼓動を支えている大きな力に誠実に応えていくこと。フランクル『夜と霧』やブッツァーティ『タタール人の砂漠』なども思い出しつつ読んだ。一瞬一瞬に対して誠実に生きたい。
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第2次世界大戦を挟んで、アルプスの山村に暮らした一人の男の一生を描いた作品。 主人公のエッガーは私生児として生まれ、母は早逝。引き取られた山村で叔父にこき使われた挙句に折檻で足を不自由にされ、愛した妻を雪崩で失い、戦争ではソ連の捕虜となって酷寒の地で8年の捕虜生活。そんな厳しい人...
第2次世界大戦を挟んで、アルプスの山村に暮らした一人の男の一生を描いた作品。 主人公のエッガーは私生児として生まれ、母は早逝。引き取られた山村で叔父にこき使われた挙句に折檻で足を不自由にされ、愛した妻を雪崩で失い、戦争ではソ連の捕虜となって酷寒の地で8年の捕虜生活。そんな厳しい人生が淡々と語られます。 しかし、老境に入ったエッガーは、洞穴の様な自宅で一人で暮らしながら「自分の知る限りではこれと言った罪を犯さず、酒、女、美食と言ったこの世の誘惑にも決して溺れる事の無かった」自分の生涯を「概ね満足のいく人生だった」と振り返ります。 150ページほどの薄い本ですが、何故か持ち重りのする作品です。
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アルプスの山に生きた1人の男・エッガーの物語。4歳の時、母親が病死(父親はいなかった)。農場を営む叔父に引き取られるが、こき使われ、お仕置きの鞭で足を引きずるようになる。その家を出て、出逢った女性マリーに一目惚れし、結婚するも、雪崩で妻を失う。戦争では捕虜となって、ロシアの収容所...
アルプスの山に生きた1人の男・エッガーの物語。4歳の時、母親が病死(父親はいなかった)。農場を営む叔父に引き取られるが、こき使われ、お仕置きの鞭で足を引きずるようになる。その家を出て、出逢った女性マリーに一目惚れし、結婚するも、雪崩で妻を失う。戦争では捕虜となって、ロシアの収容所へ送られ8年間を過ごした。復員してからは、以前働いていたロープウェイを設置・管理する会社で働いたり、年齢を重ねてからは山のガイドをしたりして、お金を稼ぐ。 そんな男の一生が淡々と語られる。 読んでいて、なんて不条理なことが起きるのだとか、マリーと共に生きた短い時間を除けば、ほぼ1人で過ごしたことに切なさを感じ、大変な一生だと思った。でも、エッガーは「自分の人生はだいたいにおいて決して悪くなかった」と述懐する。 理不尽なことや愛しい人との別れはあったものの、その思いに、エッガーは幸せな一生を送れたのではないかと思い至った。 翻って自分はどうだろう。こうありたい、こうしたいと色んなことを求め、時に焦燥感や無力感を抱く。希望や目標を持つことはいいことだと思う。でも、それに縛られすぎてはいないだろうか。そんなことも考えさせられた。 静かなストーリー、読み終わってからじわじわと響いてきました。
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淡々と描かれたある男の一生 20世紀の荒波にもまれながら、淡々と生きたエッガーの一生。人生のほとんどが貧しく辛く孤独、でも力強く生きたその一生に心が打たれた。
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「人の時間は買える。人の日々を盗むこともできるし、一生を奪うことだってできる。でもな、それぞれの瞬間だけは、ひとつたりとも奪うことはできない。」
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どうしてなんの変哲もない(と言うにはドラマティックなのだが)市井の男の一生が、こんなにも胸を打つのか。読み始めてすぐに、大傑作ジョン・ウィリアムズ『ストーナー』に非常に良く似た味わいの物語だと感じた。 もっと無骨で朴訥としているのだけれど、どんな人生にもドラマがあり、どんな人の内...
どうしてなんの変哲もない(と言うにはドラマティックなのだが)市井の男の一生が、こんなにも胸を打つのか。読み始めてすぐに、大傑作ジョン・ウィリアムズ『ストーナー』に非常に良く似た味わいの物語だと感じた。 もっと無骨で朴訥としているのだけれど、どんな人生にもドラマがあり、どんな人の内面にも宇宙がある。運命の糸や必然としか言いようがないできごと、それらが一点に集約されるような瞬間が淡々と描き出されるさまに心が震えた。
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主人公エッガーの生涯は、国は異なるが私たちの祖父母や曽祖父母が過ごした生涯と重なる。厳しい自然、厳しい時代のなかでも現代よりもはるかに生きる実感を得られるように思えるのはなぜだろう。表層的な豊かさや優しさとは別の、魂の価値ともいうべきものについて考えさせられた。心に静かな火が灯っ...
主人公エッガーの生涯は、国は異なるが私たちの祖父母や曽祖父母が過ごした生涯と重なる。厳しい自然、厳しい時代のなかでも現代よりもはるかに生きる実感を得られるように思えるのはなぜだろう。表層的な豊かさや優しさとは別の、魂の価値ともいうべきものについて考えさせられた。心に静かな火が灯ったような読後感。
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