なぜ脳はアートがわかるのか の商品レビュー
豪華絢爛な中世ヨーロッパの絵画やルネサンス期のロマンチックな絵画、印象派の画家たちによる名作に負けないほど、美術館で堂々と飾られていて、独特な存在感を放つ抽象絵画。本書を読む前にマーク・ロスコの‘Black Stripe’(1958)を見て、どのような感想が浮かび上がってくるだろ...
豪華絢爛な中世ヨーロッパの絵画やルネサンス期のロマンチックな絵画、印象派の画家たちによる名作に負けないほど、美術館で堂々と飾られていて、独特な存在感を放つ抽象絵画。本書を読む前にマーク・ロスコの‘Black Stripe’(1958)を見て、どのような感想が浮かび上がってくるだろう。そんな複雑怪奇で前衛的な芸術をわれわれはどう“アート”ととらえるのか。それを`REDUCTIONISM IN ART AND BRAIN SCIENCE`という原題の通り、脳科学とアートという分野を往来しつつ、抽象絵画の魅力を解説しているのが本書である。 脳科学の知見によれば、どこか見たことのある風景などを描いた具象絵画は、先天的な知覚システムによるボトムアッププロセスにしたがって処理される。しかし、他方でモノのフォルムを極限まで解体したり、色と線形フォルムだけで絵画を高度に単純化させたりしている抽象画を前にしては、鑑賞者の創造性がより喚起されるトップダウン処理が機能する。それによれば、鑑賞者が独自の経験に基づいて絵を補完できる状況を生み出し(鑑賞者の創造的プロセス)、創造性をよりはたらかせるので、抽象芸術は具象芸術よりも強く鑑賞者の情動を揺さぶるということだった。 感覚されたもの、そして私たちが認識したもののギャップが、より経験を強固なものにする「抽象」の強さを活かした絵画には、鑑賞者をこれまでの経験とともにその世界に飛び込ませ、私たちはさらに新たな経験を得られるというわけだ。 それは、私たちが見ている世界はあるがままではなく、また、モノを認識するのに必要な情報が提供されているだけで、完成されたものが脳に届けているわけではないからである。 本書にあった、光と空間のアーティストと呼ばれるJames Turrellの「私たちが直面している視覚的なリアリティは、自分自身が作り出したリアリティであり、私たちの知覚的、文化的な境界の内部にある」は、ひょっとすると脳科学を対抗分野として自身の分野へと統合していき、また萌芽的な研究を生み出すような、その先のアートのフロンティアを表しているかもしれない。
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なぜ脳はアートがわかるのか 2023年2月22日読了 「芸術作品の創造や知覚がいかにしてなされるのか」を脳科学の観点から解き明かした一冊。現代アートを数多く紹介しながら、知覚や認知といった脳の機能を解説しており、難しく感じる箇所もあったが、結果的に楽しく拝読させていただいた。(...
なぜ脳はアートがわかるのか 2023年2月22日読了 「芸術作品の創造や知覚がいかにしてなされるのか」を脳科学の観点から解き明かした一冊。現代アートを数多く紹介しながら、知覚や認知といった脳の機能を解説しており、難しく感じる箇所もあったが、結果的に楽しく拝読させていただいた。(というのも実は、一度挫折している…。だが一気に読むと理解が進み、読書が進むことができた。一気読みおすすめの本。) 本書では、芸術作品(特に抽象的な作品)を鑑賞した際に、各人でいくらか異なったあり方で感知・認識する点に注目している。 そこで持ち出されるのが、ボトムアップ情報(処理)とトップダウン情報(処理)である。 ボトムアップ処理とは、脳に生得的に備わる計算プロセスによってもたらされるもので、各人でほぼ同じ基本情報を引き出すことができる。 一方のトップダウン処理とは、自分の経験に基づき眼前のイメージの意味を推測することで、イメージは個人の心理的な文脈置かれる。つまり、個々人で異なる情報が引き出されるのだ。 芸術作品を鑑賞した際、様々な認知がなされるのは「トップダウン処理」によるものとされる。 抽象作品を鑑賞すると、トップダウン処理によって記憶・情動・経験に関するシステムが動員される。 すると、①イメージの構成を分析し、②トップダウン処理によって関連付けが行われ、③これらの脳の動きに基づき情動的反応が起こる、というわけだ。 たしかに私たちは作品を鑑賞すると、作品に物語性を付与したくなってしまう。 おそらく、自分の経験と作品を結びつけ、その中で「自分だけ」のストーリーを構築していたのだろう。作品と個々人経験の両者がそろって鑑賞となるならば、各人の認識は異なって当然といえる。 なお、抽象作品の鑑賞は本質的に「快」の情動が引き起こされる。そのわけは、この関連付けによる「補完」によって、私たちの創造性が刺激され、ポジティブな経験がもたらされるからだ。 鑑賞している間に補完や再構築によって、脳内で創造が起こっていたとは…。人間はかくも何かを生み出さずにはいられない生き物なのだなと思った。 自分が好きな芸術鑑賞について、なぜ好きか説明することができなかった。 ただ、作品が好きだから、美しいものが好きだからと思っていた。 しかし、本書を読み作品鑑賞が「内省」となっており、自分自身と向き合える場になっていることに気づくことができた。(もちろん、それだけではないのだろうけれど…) 好きなことへの理由付けができたこともあり、大変腑に落ちた一冊でした。
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記憶の研究で有名な脳科学者による、現代抽象芸術と脳科学の領域横断的解説 抽象画の見方と現代脳科学を同時に学べる。 アーティストやその作品も掲載されていて、これまでわからなかった抽象画に興味が湧いた。 脳内のことも、ボトムアップ・トップダウンといった簡単な言葉でまとめているので理...
記憶の研究で有名な脳科学者による、現代抽象芸術と脳科学の領域横断的解説 抽象画の見方と現代脳科学を同時に学べる。 アーティストやその作品も掲載されていて、これまでわからなかった抽象画に興味が湧いた。 脳内のことも、ボトムアップ・トップダウンといった簡単な言葉でまとめているので理解しやすい。
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初めて見る、自分の常識とは真逆だ、訳がわからない…こんな芸術作品に出会うと不快になったり、脳がグルグル回転するような感覚になったりする。対象は人でも、試験問題でも、会社で与えられたタスクでもよいだろう。 この現象を脳科学の観点から解説してくれた本。抽象画やモダンアートのことをよ...
初めて見る、自分の常識とは真逆だ、訳がわからない…こんな芸術作品に出会うと不快になったり、脳がグルグル回転するような感覚になったりする。対象は人でも、試験問題でも、会社で与えられたタスクでもよいだろう。 この現象を脳科学の観点から解説してくれた本。抽象画やモダンアートのことをよくわからないが、たまに観に行ってしまう私にとってとても興味深いものだった。 いわゆるアートがわかるわけではないが、脳の活性化のためにこれからも見続けたいと思った。いつかわかるようになると信じつつ。
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p30.34.67~68.86から92 115 120~122 173 183最終行 187最終行 192 194
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「視覚について、ひいては絵画を見る時、脳はどのような 処理を行っているか」という話と「人はどのような抽象絵画 を描いてきたか」という話、二つのトピックスを平行して 語り、そのうち関連付けられそうな所に橋をかけて人文と 科学の連結を図るという内容。タイトルは少々大げさな気も するが...
「視覚について、ひいては絵画を見る時、脳はどのような 処理を行っているか」という話と「人はどのような抽象絵画 を描いてきたか」という話、二つのトピックスを平行して 語り、そのうち関連付けられそうな所に橋をかけて人文と 科学の連結を図るという内容。タイトルは少々大げさな気も するが、読んでいて楽しい本であった。ちなみに、私は抽象 絵画はよくわからない(笑)。
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原題は「REDUCTIONNIZIM IN ART AND BRAIN SCIENCE」…芸術における還元主義と脳科学?よくぞ「なぜ脳はアートがわかるのか」という邦題をつけてくれました。訳者のファインプレー!副題の「現代美術史から学ぶ脳科学入門」も本書の主題を端的に表していますが...
原題は「REDUCTIONNIZIM IN ART AND BRAIN SCIENCE」…芸術における還元主義と脳科学?よくぞ「なぜ脳はアートがわかるのか」という邦題をつけてくれました。訳者のファインプレー!副題の「現代美術史から学ぶ脳科学入門」も本書の主題を端的に表していますが、一方「脳科学で語る現代美術史入門」という本でもありました。そう、アートといっても現代美術、特に、ニューヨーク派の抽象芸術が鑑賞者の心を揺さぶるのか、をノーベル医学生理学賞を受賞した科学者がシンプルに語ってくれます。今回初めて知ったキーワードは視覚に対する脳のボトムアップ処理とトップダウン処理。自分の理解ではボトムアップ処理は脳に入ってきた情報を整理し、トップダウン処理はそれに過去の知識や学習を加えるプロセス。具体を、フォルム、線、色に還元する抽象芸術はトップダウン処理に大きく関わる芸術なのだ!ということで「アートの還元主義」という題名に繋がるのです。ターナー、モネから始まり、カンディンスキー、そして音楽家のシェーンベルク、モンドリアン、で、ニューヨークに移りデ・クーニング、ポロック、ロスコ、ルイス、フレイヴァン(知らない!)、タレル、カッツ、ウォホール、クローズ(彼も初めて!)の抽象美術の流れを画像もバンバン使って解説してくれていて、同時に脳科学の解説の図も同じくらい使ってくれていて、まるでDNAの二重らせん構造のようにアートと科学が対応しながらぐるぐる回っているような楽しい本でした。この先のAIと芸術の関係、それからこの夏、東京芸術大学の美術館で展覧会が行われたアール・ブリュットとの関係とか、もっともっと知りたくなりました。
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脳、前衛芸術に挑む。絵画を見て、それを「よい」と思うとき、脳では何が起こっているのか。複雑怪奇な現代アートが「わかる」とはどういうことなのか。脳科学、医学、認知心理学、行動科学から美学、哲学まで、あらゆる知を総動員し、人間の美的体験のメカニズムを解き明かす。(e-honより)
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芸術と脳科学の統合を試みて書かれた挑戦的な書籍。現代アートをかじってみようと手に取ったが、カラーの挿絵も多く読みやすかった。脳科学に関しては知っている話ばかりだったのが少々残念だったが読んで得るものもあった。
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【医学部図書館リクエスト購入図書】 ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆ http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB28476471
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