ソンジュの見た星 の商品レビュー
この本には、1997年からおよそ5年間の北朝鮮の現実が描かれている。 1997年の時、10歳の少年だったソンジュ。 彼はこの物語の主人公であり、著者である。 そう、この物語はノンフィクションなんです。 1991年、共産主義の大国だったソ連が崩壊し、北朝鮮は最大の貿易相手国兼支援...
この本には、1997年からおよそ5年間の北朝鮮の現実が描かれている。 1997年の時、10歳の少年だったソンジュ。 彼はこの物語の主人公であり、著者である。 そう、この物語はノンフィクションなんです。 1991年、共産主義の大国だったソ連が崩壊し、北朝鮮は最大の貿易相手国兼支援国を失った。 その後、異常気象による飢饉。 配給制度の崩壊。 そして1994年7月8日、北朝鮮のキム・イルソン主席が死去。 ソンジュは、夢・教育・家・両親と、全てを失い路上生活者となる… この当時の北朝鮮の実情は本当に壮絶で、信じ難いものがある。 当時私も、ニュースなどで北朝鮮の飢饉の様子を知ってはいた。 しかし、すぐ隣国の事であるにもかかわらず、若かった私はどこか他人事のように感じていた… 同じ時代を生きていながら、生まれた国によってこんなにも生活が違う事実…改めて考えさせられる。 そして20世紀の日本と朝鮮半島の歴史… ソンジュは浮浪児になったが、歳の近い6人の仲間と“兄弟”になる。 掟は“絶対に仲間を見捨てない” “誰かが取り残されたら、みんなで探しにいく” “助け合い、信じ合い、何でも分け合う” “絶対に内輪もめはしない” 兄弟がいたから、生きてこれた。 そんなソンジュの言葉。 “家って、場所じゃなくて、人なんた” ソンジュ(著者)はその後脱北し、韓国国籍を取得する。 ソウルにある大学を卒業後、イギリスの大学院などで学び、南北朝鮮の統一や、脱北者の人権問題などに取り組んでいるという。 この本は、図書館の児童書コーナーで目に止まり、借りてみたのだけど、…(先日まで「脱北航路」を読んでいたから)… こんなにも壮絶なノンフィクションとは思わず、読み終えた今、息も止まるほどの胸の苦しさを感じている。 隣国を知るために、そして私達日本との関わりを知るためにも、多くの人に読んでもらいたい作品です。
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平壌は比較的普通の暮らしが出来るが、都落ちすると全く生活が違うのだと驚いた。 鏡城や田舎での浮浪児生活はとても衝撃的でよく生き抜いたなと思った。
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すごい本だった。 未だに素性を明かすことができない北朝鮮の現実。 あの90年代の飢餓の話はこういう話だったんだなあと驚きながら読んだ。
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ノンフィクション。北朝鮮、裕福な家庭に生まれた少年が、1997年に平壌を離れてからコッチェビ(浮浪孤児)となり、仲間と路上で生き抜きながら絆を深めていく。酷い飢饉で食べ物がなく、死と隣り合わせの生活でも、兄弟と呼ぶ仲間といる事で「家」は場所ではなく、人なのだと気づく。 昔、父と見...
ノンフィクション。北朝鮮、裕福な家庭に生まれた少年が、1997年に平壌を離れてからコッチェビ(浮浪孤児)となり、仲間と路上で生き抜きながら絆を深めていく。酷い飢饉で食べ物がなく、死と隣り合わせの生活でも、兄弟と呼ぶ仲間といる事で「家」は場所ではなく、人なのだと気づく。 昔、父と見上げた北斗七星や祖父に教わった流れ星を時々見上げるシーンがありタイトルになっている。(原著はE very Falling Star) 脱北してアメリカでフリーランスの記者、共著のスーザン・マクレランドと出会いノンフィクションの出版が実現したが、このような子ども達が沢山いたのだとそして、亡くなった人が沢山いたのだと今更思う。そういえば、昔、北朝鮮の飢饉を支援したり脱北者を助けるドキュメンタリーをテレビで見た気がする。 プロローグ前にある「二十世紀、朝鮮半島の歴史」が、若い読者にも国の理解を促す。 ストーリー自体は小学生でも読めるが、想像力を膨らませてこの問題を考えて欲しい。 読中に感じたのは、生死を分かつような場面に底力を出せるのは、幼い頃に親や近い者から自分を認められ可愛がられた経験が体の奥底に力を溜めさせるのではないか?ということ。 大人も子どもも忙しすぎる時代だからこそ、毎日の些細な場面でも愛情を込めて接して欲しいと思う。 蛇足 たまたま昨夜テレビで高学歴ニートと橋下徹の授業?のようなものを見た。「今の日本は治者と被治者との関係がイコールだ。君たちは治者から命を脅かされる事があるか?」という話があったが、この日本にとても近い国では、この話の様に国を治める者が人々の命を奪うのだとわかる。 初版の奥付にNDC943とあるが、図書館では933が多いようだ。289(個人伝記)の館もあり。
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凄まじいの一語に尽きる。 大人から守られず、自力で生き抜く子どもの実話はいくつもあり、近年では『走れ、走って逃げろ』が思い浮ぶが、これはもっとひどいかもしれない。『走れ』は、ナチス・ドイツ時代、親とはぐれたユダヤ人の少年が、身の上を偽りながら窃盗団に入ったり、農家の下働きをしたり...
凄まじいの一語に尽きる。 大人から守られず、自力で生き抜く子どもの実話はいくつもあり、近年では『走れ、走って逃げろ』が思い浮ぶが、これはもっとひどいかもしれない。『走れ』は、ナチス・ドイツ時代、親とはぐれたユダヤ人の少年が、身の上を偽りながら窃盗団に入ったり、農家の下働きをしたりしながら(見つかれば強制収容所行き)生き抜く話だった。しかし、ドイツ人達は戦争中とはいえそこそこの暮らしをしており、働きを認められれば食べることができた。 ところが、金正日時代の北朝鮮は平壌以外の都市は深刻な飢饉で、誰もろくに食べてない。そうなると、他人や他人の子どもに思いやりを示す余裕が無い。学校でも教育しない。(校外学習は、脱北者の公開処刑見学。)役人の汚職は当たり前。警察も機能していない。盗む奴は子どもでも、死ぬまで叩きのめす。子どもに何とか食べさせたい親は不法行為に手を出さざるを得ず、著者(主人公)の両親も食糧を手に入れるために出かけたまま帰ってこない。子どもたちは生きるために窃盗団を結成。喧嘩と(ヤクザと同じで、収穫の多いシマは取り合いになるので、喧嘩で勝負をつける。死ぬこともある。)盗みに明け暮れる。寂しさと不安に押しつぶされそうな毎日。現在にも将来にも希望が持てない人間は酒と薬物で一時だけ苦しみから解放される。10代の少年たちも同じ。なんという地獄。(少女たちは性的虐待を受けている。) ニュースで平壌の立派な建物や着飾った人々、デパートや遊園地の様子が流れるが、地方はどんな様子なのか、この本で良くわかった。少しは改善されているかもしれないが、大差あるまい。国民は食べるものもなく痩せ細っているのに、太った指導者や贅沢な平壌の生活や大金を注ぎ込んだロケットの映像をテレビで見せられて、どんな気持ちかと思っていたが、平壌以外は電気もろくに来てないし、テレビも当然ないのだから、何の問題もないのだ。あれは平壌市民のための映像なのだ。 著者は脱北できたが、できない人々は今どうやって生きているのだろう。 何とかして北朝鮮の国民に直接支援ができないものだろうか。自由に発言もできず、情報も入らない恐怖政治を続けさせる訳にはいかないと思う。 子ども向けの本として出されているが、大人が読んでも十分手応えのある本。多くの人に読んでほしい。
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