黒の服飾史 の商品レビュー
西洋において「黒」がどの様に扱われてきたのか、服飾の歴史を中心に紹介されています。 【こんな人におすすめ】 西洋の服飾史に興味がある人
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最近、コーディネートを考えるのが面倒くさくなって、黒か白かオレンジ(※推しのメンカラ)しか服を買わなくなったのですが、黒という色に詰まった歴史が概観されていてとても面白かった。 色を危険とする価値観とモノクロームを道徳的(聖職者の色)とする価値観や黒を権力者(ブルジョワ)の色とす...
最近、コーディネートを考えるのが面倒くさくなって、黒か白かオレンジ(※推しのメンカラ)しか服を買わなくなったのですが、黒という色に詰まった歴史が概観されていてとても面白かった。 色を危険とする価値観とモノクロームを道徳的(聖職者の色)とする価値観や黒を権力者(ブルジョワ)の色とする価値観が相乗効果になったという話と、黒が象徴する悲しみへの受容(悲しみは敬遠するものではなく、理解できる感情に昇華されたこと)も黒の流行の起爆剤になったという話が本著のメインだったと思いますが、色一つでこんなにコンテクストがあるのかと興味深かった。(それから、黄色といえばコメディタイガーの色なので、黄色も実は悲しみを象徴する色だったというのは驚きだった) それから、最近読む美術史の本でも必ず触れられるジェンダーの話。文明が大衆化するにつれ黒の流行の範囲も(権力者から市民へ、男から女へ)拡大されていくというのも、鉄道誕生と共に鋼のグレーが流行ったというのもほんまかいなという感じですが、ミーハーな大衆心が伝わって楽しかった。 超余談ですが、ユイスマンス/さかしまに出てくる狂人がオレンジと青の組み合わせに協調・和らぎ・落ち着きを感じていたとのことで、やっぱりか……と(松松狂) ところで、コルビュジエは色を嫌ったって、ロンシャンもラ・トゥーレットもフィルミニもユニテも、どれも超カラフルなのはどう解釈すれば?とは思った。(東方への旅は未読だったので読む)
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「黒い」と言われて想像するものは人によって異なる。 身の回りの黒いものを探すと、様々なものが挙げられるが、濃淡や光沢感の違いから、同じ色でも、全く違う印象を与える色であるように思える。同じ「黒」でも、好きな「黒」と嫌いな「黒」があるのは、なんとも不思議。 そんな黒の中でも、服...
「黒い」と言われて想像するものは人によって異なる。 身の回りの黒いものを探すと、様々なものが挙げられるが、濃淡や光沢感の違いから、同じ色でも、全く違う印象を与える色であるように思える。同じ「黒」でも、好きな「黒」と嫌いな「黒」があるのは、なんとも不思議。 そんな黒の中でも、服飾にまつわる黒色の歴史について、この本には書かれている。 話は、街の景観のカラーコントロールから始まる。そして服の色へ。 喪服としての黒、流行としての黒…。 長い間、今でも愛され続ける黒は、時代とともにどう変化していったのか。 個性を隠す色から、主張する色への、劇的な変化を目の当たりにすると、ものすごく深みを感じました。 新しい発想は、常に自由の中で生まれるのではなく、制限の中にも浮かび上がるものなのです。 白黒を「単色で地味」と捉えるのでなく、色の制限という発想を捨てて、数ある中から黒を選び取る…。 黒に限らず、他の色に対しても言及されていますが、きっと、本を読み終わる頃には、服を選ぶ際には、「無難な黒」という考えは、変わることでしょう。(2020.12.10)
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我々日本人は嘗て禁色など貴族が着る色、庶民が着る色と地域や生まれによって使える色を分けた歴史を持つが、基本的にはどういった色でも嫌悪を持つことは少なく大いに多彩な色彩を楽しんできた。だがヨーロッパは気候の面や歴史的・宗教的な面が強く黒一つで自ら権力を誇示したり、貧民の色と蔑んだり...
我々日本人は嘗て禁色など貴族が着る色、庶民が着る色と地域や生まれによって使える色を分けた歴史を持つが、基本的にはどういった色でも嫌悪を持つことは少なく大いに多彩な色彩を楽しんできた。だがヨーロッパは気候の面や歴史的・宗教的な面が強く黒一つで自ら権力を誇示したり、貧民の色と蔑んだり女性軽視に利用したりとよくもまあ色々なことを考えるものだなと感心する。しかしそれだけヨーロッパの人々にとっては色の使い方というのは自らの外面を整えるのに重要であり、そもそも宗教的にあまり使えないからこそ興味関心を持つのだろうな。
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