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大洪水の前に の商品レビュー

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8件のお客様レビュー

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2022/10/07

斉藤さんにしては、固い文章だなぁと感じていたが、例の博士論文をベースにし、プラスαしたリミックス本。数字やグラフなどもなく、誤魔化してない。ロッシャーによる掠奪農業主観、SDGsへの批判にもカスる所ある。あと、文庫が出ていたとは!特に叢書である必要はないので、文庫がお勧めかな?値...

斉藤さんにしては、固い文章だなぁと感じていたが、例の博士論文をベースにし、プラスαしたリミックス本。数字やグラフなどもなく、誤魔化してない。ロッシャーによる掠奪農業主観、SDGsへの批判にもカスる所ある。あと、文庫が出ていたとは!特に叢書である必要はないので、文庫がお勧めかな?値段がかなり違うので。

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2022/09/11

ー ここでの問題は、物質代謝の亀裂が世界規模の問題となっていることだ。グアノの枯渇に直面して、イングランドとアメリカ合衆国は貴重なグアノと硝石の資源をめぐってのペルー沖のみならず、南アメリカ大陸の諸島をめぐる領土争いを繰り広げるようになっていった。アメリカ議会は一八五六年にグアノ...

ー ここでの問題は、物質代謝の亀裂が世界規模の問題となっていることだ。グアノの枯渇に直面して、イングランドとアメリカ合衆国は貴重なグアノと硝石の資源をめぐってのペルー沖のみならず、南アメリカ大陸の諸島をめぐる領土争いを繰り広げるようになっていった。アメリカ議会は一八五六年にグアノ資源のある島の併合をアメリカ市民に認める「グアノ島法」を可決し、太平洋上の島々を占有したのである。こうした帝国主義的掠奪は、自然資源も食いつくし、生態系を攪乱していく。例えば、フンボルトペンギンはグアノのなかに巣を作る習性をもっているため、グアノの掠奪は、ペンギンの繁殖を著しく困難なものとした。さらには、グアノ採掘は海鳥の巣そのものも破壊してしまうことで、海鳥も激減してしまう。また、植民地下では深刻な経済的・政治的不平等が生まれ、グアノ採掘のために原住民の生活が破壊されたのみならず、中国人の苦力も劣悪な環境で働かせたのだった。 物質の循環に亀裂の入った資本主義における掠奪と乱費のシステムは、生産力と輸送手段の発展とともに、世界市場上の商品交換と植民地支配を通じた暴力による収奪によって、ますます大量の自然資源を資本蓄積のために利用しようとする。だが、そうした自然資源の利用は、土地の肥沃度や自然資源をかつてない世界的規模で枯渇させ、より暴力的な争いを生み出す。最終的に、「環境帝国主義 (ecological imperialism)」はグローバルな物質代謝の亀裂を生み出し、グアノ戦争や硝石戦争が勃発することとなったのである。 ー マルクスが語らなかった地球の有限性と持続可能性について、マルクスの膨大なノートから読み解く研究書。「物資代謝」という言葉を頼りに読み解いていく面白い作品。 最近、SDGsを意識した仕事もあるので、やっぱマルクスから資本主義について考えるところから始めないといけないかなと。

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2021/12/25

マルクスは、いわゆる経済的な側面しかみていなくて、エコロジー的な側面がないとされる通説に対抗して、エコロジーも視野にはいっている新しいマルクス像を提示。 エコロジカルなマルクスについては先行研究はあるようだが、著者は、新しい全集で整理されつつあるマルクスのノート類や読書記録など...

マルクスは、いわゆる経済的な側面しかみていなくて、エコロジー的な側面がないとされる通説に対抗して、エコロジーも視野にはいっている新しいマルクス像を提示。 エコロジカルなマルクスについては先行研究はあるようだが、著者は、新しい全集で整理されつつあるマルクスのノート類や読書記録などを踏まえながら、丁寧に新しいマルクス理解を展開していく。 読み終わったあとには、かなり説得されていて、マルクスはエコロジカルだったんだと自然に思ってしまう自分がいた。 とはいえ、基本、当時は出版されていない、しかも思索のプロセスを残したノートではなくて、読んだ本の抜き書きなどを踏まえて、出版されたテキストを読んでいくというのはどうなんだろう?とも思ってしまう。まあ、ノートも出版されれば、一つのテキストとして流通するわけだから、テキスト外からマルクスは本当はこうだったみたいに議論するのとは違うと言えば違う。 そこまでマルクス自身がどう考えていたかを問題にせずに、マルクスの思想に現代のエコロジーの考えをどう統合すべきかを議論したほうが早いじゃんというのが素朴な感想。 でも、ちょっとだけわかる気がするのは、マルクスの思想自体から内在的にでてくるものとしてエコロジーをダイナミックにとらえるということのインパクトは、後付けしたものよりパワーがあるなということ。 たとえば、エンゲルスもエコロジカルな視点はあって、自然を収奪する経済発展は、どこかで限界に到達して破綻するということは言っている。これは現在で流通しそうなディスコースだと思う。 が、これは資本主義の外部にエコロジカルな限界を設定しているだけの議論であまり面白くはない。 これに対して、マルクスは資本主義の内在的な論理として、エコロジーが捉えられているという議論。そして、それは初期の労働の疎外といった議論も、同じく資本主義が人間という自然を破壊していくプロセスとして、エコロジーと一貫したものとして捉えることができるという視点を提供している。 この辺の議論は、面白いと思う。

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2021/12/11
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 1867年にマルクスによって「資本論」第1部が発表された。第2部以降はエンゲルスの編集によるものだ。第1部を世に出した後、マルクスは自然科学をより深く学んでいたという。  そして最近、彼が書いた膨大な自筆ノートが編纂され、その内容を読み解くことが可能になった。著者は膨大なノートを丹念に読み解くことにより、マルクスの思考経路の新たな一面を炙り出している。本著はそんな力作だ。  第2部以降はどうしてもエンゲルスのフィルターがかかってしまうが、自筆ノートを読み解くことにより、直接マルクスの思考過程を辿れるということだ。  「マルクスは素材的世界の視点から、環境危機を資本の物象化した力との関連で把握していた。そのうえで、人間と自然の物質代謝の攪乱を乗り越えるためには、資本の主体化した力を廃棄することが不可欠であるとマルクスは唱えたのである。そのためには、資本の論理に抗して、社会的生産のより理性的な形態が実現されなくてはならず、(中略)資本の容赦なき採取主義に対する対抗戦略を構想しようとしたのである。」、なるほど。  もっと理解を深めるために繰り返し読みたい著書である。

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2021/08/13

氏のマルクス研究を知るには手っ取り早い本。さすがマルクス研究といったところで、前半のマルクスの「疎外」概念のまとめ方のうまさには舌を巻く。 本書の後半では『資本論』第一巻発表後、マルクスが死ぬまでに、彼の資本分析がの手段が哲学から自然科学へと変化していったことが詳細に述べられて...

氏のマルクス研究を知るには手っ取り早い本。さすがマルクス研究といったところで、前半のマルクスの「疎外」概念のまとめ方のうまさには舌を巻く。 本書の後半では『資本論』第一巻発表後、マルクスが死ぬまでに、彼の資本分析がの手段が哲学から自然科学へと変化していったことが詳細に述べられている。この部分が氏の独自の研究であり、革新性がある部分なのだろう。内容的にも当時の農業や科学に関する知識がまとめられていて哲学的要素はないので、本書の前半部よりもとっつきやすい印象である。 総括すると、たしかに本書はマルクス研究の新しい方向性を示す革新性を持ったものであり、氏の博士論文を核としながらも一般に開かれた比較的わかりやすいものである。 しかしマルクス研究を志さない人が読む必要性はあまり感じられない。この本を読むなら、氏の著作である『人新世の「資本論」』を読んだ方が、一般向けに書かれているためわかりやすいし、内容もマルクスに限定しない現代の思想家なども取り上げられているために幅広い。 『大洪水の前に』は『人新世』で展開される氏の思想が独自のマルクス研究を基盤としていることが分かるが、それゆえに『人新世』の前座のような立場が否めない。 そこまで深く氏の思想を検討するつもりがないなら『人新世』を読むだけで十分であろう。 あと、この本は装丁がとても美しい。この点は本書を手元におくべき本としてあげるのに十分な理由になる。

Posted byブクログ

2021/08/03
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※このレビューにはネタバレを含みます

☆マルクスの思想には環境保全(物質循環)の思想があり、研究ノートからわかるとする。しかし、なぜ人文系は特定の人の名前にこうも固執するのか?

Posted byブクログ

2021/03/19

著者の斎藤幸平を知ったのは、NHKの「100分de名著」という番組シリーズの「マルクス資本論」の回の先生として出演していたことによる。 この人は、もしかしたら浅田彰が登場したとき以上の衝撃があるかも知れんなあ。参った。 本書には、1987年生まれ大阪市立大学経済学研究科准教授とい...

著者の斎藤幸平を知ったのは、NHKの「100分de名著」という番組シリーズの「マルクス資本論」の回の先生として出演していたことによる。 この人は、もしかしたら浅田彰が登場したとき以上の衝撃があるかも知れんなあ。参った。 本書には、1987年生まれ大阪市立大学経済学研究科准教授という現職と、2018年ドイッチャー記念賞受賞という経歴くらいしか書いてないが、調べてみるととんでもない俊英であることがわかる。なにしろこの本自体がベルリン・フンボルト大学に提出した博士論文とその英語版を土台にして日本語で書き直したというシロモノ。おまけにその英語版が上記のドイッチャー賞を史上最年少(31歳)で受賞している。そして本書を読むとそれも納得できる。(内容が理解できるとは言ってない) 「あとがき」の最後の行に、著者が引用した宮沢賢治の言葉にしびれたよ。 新たな時代のマルクスよ これらの盲目な衝動から動く世界を 素晴らしく美しい構成に変へよ

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2020/08/29

2020年7月17日図書館から借り出し。 なんか、マルクス研究者の限界みたいなものを感じてしまい、途中で放棄。

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