住まいの基本を考える の商品レビュー
ベーシックな住みやすく住み心地のよい家についての考察という縦糸と,住まいをとりまく時代や環境について,自身の経験と考えに裏付けられた確かな目線から語られる文化論という横糸で織り込まれたタペストリーのような,良い言葉あふれる小本.
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堀部安嗣の建築を見たことはない 洗練されてるけれども緊張感を与える建築ではなく伸びやかな空間が作られてるなと思った 竹林寺を見てみたい
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※このレビューにはネタバレを含みます
斬新ではない、けれど馴染み深く居心地の良さそうな住宅を作り続ける堀部安嗣さんの住宅論。気付きが多すぎて嬉しい。改めて感じたのは利己的な住宅ではなく、永く風景の一部となるような住宅をつくりたい。住宅の軒庇はしっかりと出したい。間取りに回遊性と可変性を持ちたい。パッシブは健康や広さをももたらす。 以下、メモ。 ・小さな家の魅力 延べ床面積100㎡前後がちょうどいい。 広く感じられる工夫を取り入れたい。 ①コストを抑えられる ②維持管理がしやすい ③周辺環境にやさしい ④軒庇、植物のある懐の深さを持てる ⑤日照や通風を(雨の日でも)取りやすい ・良いプランニング ①プランに抑揚がある ②練られた動線計画。回遊性は効率と広さを与えられる。 ③確かな配置計画 ④構造的・設備的な配慮。水廻りはまとめる。更新のしやすさを考慮。 ⑤家族構成の変化にも対応可能なつくり。 ⑥居場所がたくさんある。人間関係もいい関係を保ちやすい。 ・パッシブな家の魅力 機械設備を否定するのではなく自然風土を活かすデザインとともに取り入れ共存させる。 ①身体が楽になり、健康に貢献 ②温度差が減り、家中を使え、広く感じられる ③ヒートショックやカビ、結露を防ぐ ④プランの自由度が増える ⑤光熱費が下がり、省エネに貢献 ⑥必要なエアコン台数が減る ⑦より自然を身近に感じられ、楽しめる ・本当の財産 この時代はいまを生きる人のためだけにあるわけではない。 ①木造の建築をつくることは木材という日本が持っている素晴らしい再生可能な資源を活かし、森を育て、自然環境を循環させることにつながる。 ②どんな工法、材料にも一長一短がある。 ③一体何が本当に大切なものかを意識する。 ・住宅の寿命 建築は6つのSの層でできており、各層の役割を認識することが肝要。各層に対して適正なバランスで考えられた住宅の寿命はおのずと長くなる。 ①敷地選定を上手く行えば経済的で合理的で省エネにもつながる。配置計画次第で住宅の質が大きく変わる。 ②構造はほぼ一生もの。木造は増改築、減築、移築がしやすい。 ③外装は情感のために大きな役割を担う。瓦屋根は耐久性が高く、一生もの。 屋根の軒庇をしっかり出すことで外壁は情感のある木の板や左官材で仕上げることができ、メンテナンスの頻度も変わってくる。 ④設備は更新を前提にして、あらかじめ取り替えやすいように、メンテナンスしやすいように計画する。 ⑤空間設計(間仕切り)は変化に対応できるように壊せる壁などを想定しておき、柔軟にプランが変更できるようにしておく。 ⑥家具調度は模様替えのバリエーションが増やせる家は楽しく飽きない家につながる。本当にいい家具は世代を超えて使ってゆくことができる。 ・懐かしい未来に向けて ①外観は町の記憶の継承のためにあることがふさわしく、内部は性能を向上させ、現代の生活のためにあることがふさわしい。 ②懐かしさの感情を抱くことができれば安心感と寛容さを感じることができる。人は誇りに感じるものは自然と大切にしようとする。 ③世の中が更新し続けるもので埋め尽くされてゆけばゆくほど建築こそは慣れ親しんだ変わらない価値を示すものでなければならない。建築は人の記憶を宿し、呼び起こす能力が極めて高いもので、記憶の拠り所という役割をしっかり果たしたい。 ④居心地のエッセンスは昔と今とでそんなに変わらず、そんなに種類があるわけでもない。 ⑤人工物の減少と連動させて自然を取り戻すことで生活の質の向上、町づくりの魅力につなげたい。 ・その他 ①切妻屋根は原初的で高性能でコストパフォーマンスも高い形式。 ②正方形平面は放熱面積が少ないため断熱性能を高めやすくコストパフォーマンスに優れる。 ③杉板張りの外壁は山並みにも住宅地にもスッと馴染むことができる。補修もしやすく、コストパフォーマンスも高い。経年変化にも味わいがある。 ④空間の質を高めるために必要なのは、プロポーションが整った的確な寸法で構成すること ⑤雨樋の代わりに雨落ち部分に排水パイプを埋め込んだ石敷きにするという方法も。 ⑥レンガの壁は蓄熱、蓄冷、蓄湿効果が期待できる。 ⑦桐の壁は調湿作用に優れる。 ⑧無垢の杉床はやわらかく足腰にやさしい。肌触りが、よく、冷え性も治り、梅雨時のジメジメがらなくなり、冬は体温が奪われにくい。 ⑨平屋であれば生活は土地とつながりおおらかな家になる。 ⑩シニア世代がマンションに住むことには魅力がある。公共交通を利用しやすい、バリアフリーや設備が充実、維持管理や治安場も安心で生活しやすい。
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住まいの基本を考える。堀部安嗣氏の住宅建築。基本をコツコツと積み重ねていく「だけ」。それがいかに難しいことなのか。求道者。
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