僕が神さまと過ごした日々 の商品レビュー
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アクセル・ハッケとミヒャエル・ゾーヴァのコンビはすごく好きだ。この本も良かった。妄想とも幻覚ともつかない「事務ゾウ」を飼っている主人公のもとに現れる、自己嫌悪に苛まれているイタズラ好きの創造主。その神様が語るのを総合すると、この世界は完璧に作ったわけじゃなくて、幸せや美しさのために悪や残酷さを取り入れたら、ちょっとコンセプトとは違う感じになってしまった(人間は予定外の副産物だった!)らしい。 神様はどうしたいのか、意味のない私達の生はいったいどうすればよいのか。神様のイタズラでへんてこな不思議が起こる日常で、二人が散歩したり語り合ったりするのをゾーヴァの絵で見られるのが良い。 一人ひとりの短い生に意味なんてない残酷な世界だからこそ、自分のできることやりたいことを自ら掴み取るしかない、という一つの諦めのような、希望のような世界の核心に触れる「どおでもええ」のくだりが特に好きだ。主人公は怒るけれど、結局は受容するしかない。思いっきり「どおでもええ」をくすぐったりやめたりしてやるのが、せめてもの抵抗だ。 この本は世界に対する「くすぐり」のようなユーモアに満ちている本で、読んでいて笑ったりちょっとしんみりしたりと楽しい。またいつか読み返したい。
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感想 果たして創造主は神なのか。どこにでもいる人間が世界を作っているのかもしれない。僕たちひとりひとりが創造を司る。神に責任はない。
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『ちいさなちいさな王さま』を読んで、アクセル・ハッケの物語に興味を持ったので手に取った。今回の物語は、創造主と世界がテーマにあるので『ちいさな(略)』よりも壮大な感じがした。
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登場する神様はどこか人間くさい。煙草も吸うしビールも飲むし、ガラス瓶はリサイクルに出す。 神が創ったものは実は絶対的・完璧ではなくて、人間のように失敗事例もあったのかもしれない。 世の中で起こっている宗教への争いや、神を拠り所として考えることを放棄している人への皮肉にも思えた。
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散歩に出た<僕>の前に現れた<老紳士>は、ただ者ではなかった。鉄製の地球儀が頭の上に落ちてくる寸前、その見知らぬ老人は僕を押しのけて救ってくれた。それから毎日のように現れては、奇妙な光景を見せつけられる。火の輪をくぐる石象ライオン、喫煙する蛇と野良犬、ライタ-を持った野良猫、世界...
散歩に出た<僕>の前に現れた<老紳士>は、ただ者ではなかった。鉄製の地球儀が頭の上に落ちてくる寸前、その見知らぬ老人は僕を押しのけて救ってくれた。それから毎日のように現れては、奇妙な光景を見せつけられる。火の輪をくぐる石象ライオン、喫煙する蛇と野良犬、ライタ-を持った野良猫、世界の中心という「どうでもええ」倉庫・・・僕は問う「あなたは、この世界の創造主なんですか?」 「わしが世界を創造しなかったら、この世のすべての悪しきことはなかった、赦しを請いにきた」と神様。 ハッケ&ゾーヴァ、翻訳の妙に酔い痴れる。
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大人の絵本的小説。“どうでもええ”の存在に何を思うのか。見た目は上品な老紳士の神さまと自宅ではお父さんな“僕”との交流を通して、とかく人間中心主義で世の中を見てしまいがちなことに複雑な心境を抱く。他の動植物から見たら人間こそ「どうでもいい存在」になるだろうし、どこに立場を置くかで...
大人の絵本的小説。“どうでもええ”の存在に何を思うのか。見た目は上品な老紳士の神さまと自宅ではお父さんな“僕”との交流を通して、とかく人間中心主義で世の中を見てしまいがちなことに複雑な心境を抱く。他の動植物から見たら人間こそ「どうでもいい存在」になるだろうし、どこに立場を置くかで答えは変わってくるし、考え出したらキリがない。ぐるぐるしながらも、“事務ゾウ”の存在に和んだ。小型犬サイズ、いいなぁ。
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寂しがりの許されたい神様と「僕」の話です。ハッケ独特の素晴らしい世界とミヒャエルの絵が最高です。お酒を飲み、愚痴をこぼし、人間に許され認められたい神様が愛おしくなる本 です。
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中年作家の主人公の元に現れた老人は なんと神様だった!…でも別になにか とてつもないことが起こるわけでもなく 主人公の「ぼく」と神さまは一緒に散歩 したりお酒を飲んだり…。 神さまはこの世界を創ったことを 後悔しているのかな?
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ごく自然に存在している日常の中のファンタジー。 とぼけた感じの世界観に潜む、深い問いかけ。 ハッケ&ゾーヴァは素敵な大人の童話だ。 でも、『ちいさなちいさな王様』のが好みかな。
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『ちいさなちいさな王様』のコンビによる現代の寓話。 ドイツ人が書いた本ではあるけれど、現代の都会に住む人間が想像する神様って、どれも(一神教の人には変な言い方だけど)こんな感じではないかと思った。神様は白いヒゲの老人という姿だが、特にキリスト教的ということはなく、どの国の人でも受...
『ちいさなちいさな王様』のコンビによる現代の寓話。 ドイツ人が書いた本ではあるけれど、現代の都会に住む人間が想像する神様って、どれも(一神教の人には変な言い方だけど)こんな感じではないかと思った。神様は白いヒゲの老人という姿だが、特にキリスト教的ということはなく、どの国の人でも受け入れられる普遍性をもっている。 人間を作ったのはいいが、まさかこんな風になるとはね・・・、それでもこいつら(人間)にはいいところがあるし、地球には美しいところがあるからね・・・という諦めとも優しさともつかない気持ちで見守っているんじゃないか、神様がいるとしたら。そんな思いで書いたのではないだろうか。 「人間は神と向き合うふりをしながら、結局のところ、自分自身と話しているにすぎない」(P32)。 悪い人間には天罰を下せば?と言われて「ああ、だがどっから始めてどこで終えればいいのだ?毎日、毎日、世の中のそこらじゅうでひどい悪事が起きているのだぞ、そのたびになにかしていたら、わしはひどく忙しくなってしまうではないか。」(P41)。生きたイモムシに卵を産みつけるハチを見ながら「おまえたちは、平然と無意味に悪いことをするではないか。あの蜂と違って生物としてはまったく意味のない次元で、もっと残酷なことをしているだろう?たとえば『非人間的』って言葉があるだろう。でも、これには笑うしかない、非人間的なことをやってのけられるのは人間しかおらんというのに!」という神様の嘆きはもっともだと思う。 衝撃なのは、天地創造の原則は「どおでもええ」。 ドイツ語でなんて書いてあるのか気になるところ。 生き方、善悪、歴史、家族や愛情など、様々なことを考えさせる本。 深刻な場面もあるが、ゾーヴァの不思議な絵がユーモアと軽みを足していて、いい仕上がりになっている。 ドイツでは舞台化されているらしく、トレイラーを見たが、内容はそのままでも随分深刻な印象で、ゾーヴァの絵がなかったらこうなってしまうんだなと、素晴らしい挿絵の持つ力の偉大さを感じたのだった。
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