ボダ子 の商品レビュー
平成最後の大型新人は62歳、無職、住所不定。 就職して消費者金融の支店長になり燃え尽き症候群、 娘が精神障害で自殺未遂を繰り返す、 起業のち破綻、 除染作業員として福島へ、 そして最後に所持金一万円で東京に逃れて住所不定となる。 著者の人生と一致する、語り手大西の設...
平成最後の大型新人は62歳、無職、住所不定。 就職して消費者金融の支店長になり燃え尽き症候群、 娘が精神障害で自殺未遂を繰り返す、 起業のち破綻、 除染作業員として福島へ、 そして最後に所持金一万円で東京に逃れて住所不定となる。 著者の人生と一致する、語り手大西の設定である。 どこまでが小説で、どこまでが私小説なのか、その境界が見えない。 それゆえにリアル。 ボダ子とはボーダー、境界性人格障害ゆえにつけられた娘のあだ名という設定だ。 ボーダーの娘ボダ子は三回目の結婚相手との間に生まれた。 その後離婚し、四回目の結婚をするも、ワークホリックの大西は家庭とは距離を置き、ただ娘を愛していた。 そのネグレクトと、母親のヒステリーの末にボダ子は境界性人格障害を発症しリストカットを繰り返すようになる。 大西は消費者金融で支店長を務めるも、燃え尽き症候群で退社後起業し成功していたが、家庭に爆弾を抱えていた。 やがて会社は行き詰まり、大西は福島の復興事業に食い込もうとする。 金、金、金、カネさえあれば。 家族に対する顔と、仕事での顔とを使い分けるも、大西の思い描いた一獲千金の絵は破綻に向かう。 震災、原発事故、そして事故後の処理。 膨んだ復興支援金がもたらす歪みを抉り出す。
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すさまじい。絶句。しかしこれまぎれもなく2019年、日本を描いた小説だ。懺悔なのか、自傷なのか、小説なのか、最後の1ページは、すべてを語るかのようで、これ以上語ることを拒否せんばかりの重みだけを告げるようだ。
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