もう二度と食べることのない果実の味を の商品レビュー
綺麗に終わった恋、醜く終わった恋、蒸発するように消えた恋。どんな別れも、もう味わうことはできない。 届かない代わりに消えない、あの日常。 渇き、熱を帯びた疼き、崩れゆく脆さ。 薄昏く、消えそうに儚く、そして、ほわほわと光っている物語でした。 とっても好み。 時が経ち、この渇きを...
綺麗に終わった恋、醜く終わった恋、蒸発するように消えた恋。どんな別れも、もう味わうことはできない。 届かない代わりに消えない、あの日常。 渇き、熱を帯びた疼き、崩れゆく脆さ。 薄昏く、消えそうに儚く、そして、ほわほわと光っている物語でした。 とっても好み。 時が経ち、この渇きを忘れた頃に、もう一度読もうかな。
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十代の、恋愛とも呼べないような性の熱。あの頃特有の渇き、脆さ。友達には話せない、ひっそりと心のうちに秘めた激情。大人になると忘れてしまう感覚を、鮮やかによみがえらせてくれる作品。 短編『ジェリー・フィッシュ』を読み終えたあとの、胸を掻きむしられるようなせつなさを、この『もう二度と...
十代の、恋愛とも呼べないような性の熱。あの頃特有の渇き、脆さ。友達には話せない、ひっそりと心のうちに秘めた激情。大人になると忘れてしまう感覚を、鮮やかによみがえらせてくれる作品。 短編『ジェリー・フィッシュ』を読み終えたあとの、胸を掻きむしられるようなせつなさを、この『もう二度と食べることのない果実の味を』の読後感でも味わいました。まさに、もう二度と触れられないあの頃の感情の純度に、泣きたくなる。 主人公の女子中学生・冴は受験生。成績は学年2位、毎日決められたことをやり、正しい道を進もうと心がけている。 成績1位は同じクラスの土屋くんで、彼は何かにすがるように勉学に励んでいる。 理科準備室の掃除当番で二人きりになった冴と土屋。偶然の事故をきっかけに、二人は体をあわせるようになる。 妊娠の危険があるからと土屋くんがコンドームを買い求める場面から、これが伏線となるんだろうと読めたけど、そのわりにはページ数が薄めなのでどうなるのかなと思っていたら、あぁそうなるのか……ときれいなまとめ方に感心しました(結局どうなったのかという点は直接的には書かれていないので、生理や妊娠に関する知識が薄い人にはピンとこないかもしれないけど)。エンタメを求めるなら、もっとストーリー展開があってもいいのかもしれないけど、この世界観にはこの展開がグッときました。 土屋くんの心のうちは直接表現されていなかったけど、彼視点から深めた物語も読んでみたいとも思えるような、余韻の残る終わり方。 雛倉さりえさんの作品を読むのは、『ジェリー・フィッシュ』『ジゼルの叫び』に続いて三作目ですが、わかりやすさや共感のしやすさでいえば本作が一番でした(だからこそコミック化もされたのでしょうが)。そういえば他の二作は連作短編集ですね。短編は複数視点から読める楽しみがあるけど、やっぱり中編や長編が良いですね。深く潜れるので。 体をテーマにしているだけあって、理科準備室の臓器模型の描写が美しかったです。
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雛倉 さりえさん、初読み。 「女による女のためのR-18文学賞」を機にデビューされた1995年生まれの作家さん。 本作の主人公は高校受験を控えた15歳の冴。 成績こそ学年2位でありながら、心の中には姉や友人へのコンプレックス、両親への承認欲求を隠している。 受験勉強だけの満...
雛倉 さりえさん、初読み。 「女による女のためのR-18文学賞」を機にデビューされた1995年生まれの作家さん。 本作の主人公は高校受験を控えた15歳の冴。 成績こそ学年2位でありながら、心の中には姉や友人へのコンプレックス、両親への承認欲求を隠している。 受験勉強だけの満たされない毎日の、救いであり逃げ道となったのは好きでもない男子との性行為だった。 共感は出来ないけれど、思春期に感じる鬱屈とした思いや、15歳と言う年齢ならではの性への好奇心、頭で考えるより先に行動を起こしてしまう勢いを文中から熱く激しく感じた。
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たまたま目に止まって、内容も知らずに借りてきた本。高校受験を控えた多感な15歳の少女の一人称で語られる小説。アラフィフのおじさんが読む本とは程遠く、電車内で読んでる姿を訝しく思われたかもしれん。 性的な描写が多い。むしろ、本作の重要なテーマだった。なんの予備知識もなしに読み始め...
たまたま目に止まって、内容も知らずに借りてきた本。高校受験を控えた多感な15歳の少女の一人称で語られる小説。アラフィフのおじさんが読む本とは程遠く、電車内で読んでる姿を訝しく思われたかもしれん。 性的な描写が多い。むしろ、本作の重要なテーマだった。なんの予備知識もなしに読み始めたので「こういう作品だったんだ」と少し驚いた。若い時に読んでいたらかなり違った印象を本作に持っていただろう。この歳で読むと、登場人物達の若さゆえの危うさにハラハラしながら読んでしまう。 普段小説をあまり読んでいないが、たまにはこのような作品を読んでみるのも新鮮な気分になれて良いものだと思った。
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セックスに溺れた中学生の末路。高校受験や家庭環境に耐えきれなくなった自暴自棄ゆえの行為。結局妊娠したのか、最後はどう対処したのかも書かれておらず、何を伝えたい物語だったのか?不完全燃焼もいいとこだ。
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うーーーーん…? 自分の子どもが…と思ったら、それは困るわーと思ったし、で? この、初恋の様なものを、傷痕のように抱えて生きていこう。チャンチャン(終) みたいなやつですかねぇ…
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人間が持つ欲望とそれが満たされる快感にひょんなことから中学生で気づいてしまった。性行為って改めて何だろうと思う。愛の表現でもあり、快楽を満たす行為でもある。動物としての役割としては、子孫を残すための行為なのに、なぜここまでの衝動が呼び起こされるのだろう。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ブクログの献本でいただきました。 初めて読む作家さんです。 中学生の性愛を描いた作品ということで、読み始めるまでは気が重かったのですが、読み始めたらあっさり読めました。 でも、何も無かったかの様に終わるラストでは、共感も出来ないし、心に残る物も無いです。(キツくてすみません・・・)
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ブクログの献本で頂きました。性的な描写は確かに全面に出ているのですが、あまり下品な印象もなく、透明な水の底で交わらされているような、不思議な陶酔感がありました。これから磨かれていく作家さんだと思います。 正直、性愛でしか埋まらないなにかもあるように、性愛でなくともどうにか出来る...
ブクログの献本で頂きました。性的な描写は確かに全面に出ているのですが、あまり下品な印象もなく、透明な水の底で交わらされているような、不思議な陶酔感がありました。これから磨かれていく作家さんだと思います。 正直、性愛でしか埋まらないなにかもあるように、性愛でなくともどうにか出来る問題も、あるので。 この時期の冴と土屋くんには、この方法しかなかったのでしょう。此処から先、どうやって「それ以外」の鬱屈との向き合い方を知るのか、そしてそれを身に着けてから、もう一度愛する人とのベッドに身を投げる時、大人になった冴は何を思うのか、の方を、私は読みたい気もします。 読み進めてゆくと、土屋くんは離れていくし、冴も死にはしないだろうな、と、ある時点ではっきり解ります。そして、そのことがとてもつらかったですね。 女は結局、いくつであっても、好きな人でなければ抱かれないし、身体で表す愛情だけだと思っていても、気が付ないままに、こころも惹かれているものだと、つくづく思い知らされる作品でした。男性は、ここまでにしておかなければ、俺にとってヤバイな、と思えば「好きだったよ。さよなら。」で終われます。そして、綺麗にそれを脱いで、次の女を愛することも出来るでしょう。 女の心の中の葛藤とか、振り向く思いとの戦いは、その底からが本番。あの時の絶頂感は、あの時のせつなさは、と、こうして言葉に出せるようになるのに時が必要で。そんなこともあった、と無色透明な思い出にするには、もう一段階時が必要です。 冴がいつか、何も失わない交わりに、幸せに溺れていける日が来ますように。その時彼女が、別れなくていい大人でありますように。
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うん。すごかった。 本の中の世界は、青色でも緑色でもないような グレーが少し混ざったようなドブのような色。 一度入ると抜け出せない世界。 一気に読んでしまわないと 自分のこの現実の世界にもそのドブ色が 侵食してきそうな感じがして、 一気に読み進めました。 大人でもない、かといって...
うん。すごかった。 本の中の世界は、青色でも緑色でもないような グレーが少し混ざったようなドブのような色。 一度入ると抜け出せない世界。 一気に読んでしまわないと 自分のこの現実の世界にもそのドブ色が 侵食してきそうな感じがして、 一気に読み進めました。 大人でもない、かといって子供でもないあの時期だからこそ、先のことも考えず、行動してしまうことはあるし、自分の周りのあらゆることをあまりにも深く考えてしまう。私も10年ほどまえの学生時代を思い出してしまいました。 ほんの世界にどっぷり浸れるような作品でした。
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