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コクーン の商品レビュー

3.3

27件のお客様レビュー

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2019/09/30

 絶望の世界の物語なのに、なぜか神々しい世界へ連れて行かされる。今まで経験のしたことがない物語体験でした。  カルト教団、診療報酬、自殺サイト、震災、戦争、性的虐待……、  『ロストケア』『絶叫』と同様に今回も葉真中さんは社会の闇、人間の闇に容赦なく光を当てます。  各章...

 絶望の世界の物語なのに、なぜか神々しい世界へ連れて行かされる。今まで経験のしたことがない物語体験でした。  カルト教団、診療報酬、自殺サイト、震災、戦争、性的虐待……、  『ロストケア』『絶叫』と同様に今回も葉真中さんは社会の闇、人間の闇に容赦なく光を当てます。  各章に登場するそれぞれの登場人物たちが見る闇と地獄。そして幕間に登場するある女性の壮絶な人生。葉真中さんの筆力はますます乗ってきているというか、光無き世界とその運命に翻弄される人物たちを、容赦なく描きます。どれもシリアスで暗い話ばかりですが、ついつい引き込まれます。  そして、第4章を読み始めたとき「ん?」と思う人もいるのではないかと思います。 なんとも意味深な夢から始まり、そして4章の語り手の幼少時代も、人によっては「ん?」と勘ぐる人もいるかもしれません。  そしてその意味は最後に明らかになります。そして4章以外にもところどころで描かれていた、引っかかりたちにも、途方もない意味があったことが分かるのです。矛盾を最後に意味を持たせるということに置いては、これはミステリーなのかもしれません。しかし、そこから導き出される世界の真実は、ミステリという概念を大きく飛び越えてしまうのです。  介護、貧困……自分の世界も運命も、ふとしたきっかけで容易に反転しうることを、これまで読んできた葉真中作品では描いてきたように思います。それは個人ではどうしようもない、社会がそして世界が個人の上に乗っかり、押さえつけているからのようにも感じます。  しかし、その社会や世界を相対化するような光景を葉真中さんは用意します。それはある意味このどうしようもない世界の、一つの究極の真理なのかもしれません。  多分この種明かしに納得できない人もいると思います。ただこの物語の到達点は、おそらくそんじょそこらの作品では、決して描ききれないものだと僕は強く思うのです。

Posted byブクログ

2019/09/24

1匹の黄金蝶が導く、数多の人たちの過去、そして現在。 全ての人の運命は、1995年にカルト教団「シンラ智慧の会」が起こした銃乱射事件で繋がっている。 それぞれの人が各々の考えで行動し、生きていると思うことは当然なのか、それともこの世界の全ては巨大な装置に牛耳られ決まったルートをあ...

1匹の黄金蝶が導く、数多の人たちの過去、そして現在。 全ての人の運命は、1995年にカルト教団「シンラ智慧の会」が起こした銃乱射事件で繋がっている。 それぞれの人が各々の考えで行動し、生きていると思うことは当然なのか、それともこの世界の全ては巨大な装置に牛耳られ決まったルートをあたかも運命かのように選ばされているだけなのか…。 さすが葉真中顕さん、今回もめちゃくちゃ深かったです。 本書のキーワードであるバタフライ効果の着地点、なるほど!面白い! 「社会小説」「ミステリー」だけでは到底表現し尽くせない緻密さに酔いしれる作品でした。

Posted byブクログ

2019/07/31

オウム事件を下敷きにしながら並行世界を描いた、連作短編集のような異色ミステリー。戦中〜現在までの世相を絡めながら、バタフライ・エフェクトで話が繋がっていく。巻末(単行本ではカバー裏?)の衝撃的なオマケ「コクーン 2016」が作者らしいサービス。本編中でも、ある主要人物の来歴が…...

オウム事件を下敷きにしながら並行世界を描いた、連作短編集のような異色ミステリー。戦中〜現在までの世相を絡めながら、バタフライ・エフェクトで話が繋がっていく。巻末(単行本ではカバー裏?)の衝撃的なオマケ「コクーン 2016」が作者らしいサービス。本編中でも、ある主要人物の来歴が……。他にも気付いていない仕掛けや暗喩がありそうで、モヤモヤ感が残った。

Posted byブクログ

2019/07/22

カルト教団のテロってことで阿鼻叫喚が展開されると思いきや、その周辺のお話。生々しい地獄ではなく緩やかにじわじわ染み込む地獄。

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2019/07/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

読み応えはあるのに、なぜかとてもモヤモヤします。 新興宗教団体によるテロ事件に何らかの形で関わりのある登場人物の昔と今、ふたつの時代。モヤモヤの原因はおそらく最終章。事件を起こした教祖の母親がわが子を出産したことを悔やみつつ、自分がこの子を産まなかった場合、わが子の上を行く外道が出てきてさらなる大惨事が起きたであろうパラレルワールドを想像します。自分の息子が起こしたテロのほうがまだマシだったと考えることにモヤモヤ。 フィクションであっても、被害者や加害者の遺族のいつまでも癒えない思いや、その思いを抱えたまま暮らす様子には触れることができた気はします。事件を起こした犯人の思いはわからないから、とてつもなく不気味。 新興宗教のみならず、満州、行路病院(=生活保護を受ける患者を「転がす」病院)、東日本大震災のことまで盛り込まれてややこしく、誰が誰やらわかりにくい点と、性的に嫌な話が多いのと、それに目をつむったとしても陰惨すぎるのでめげます。それでも読み応えはあったから、他作品も読んでみたい作家。

Posted byブクログ

2019/05/17

葉真中顕、これまでの作品すごく好き。いつも社会問題を扱って、倫理とは問うてくる感じが好き。さらに、だいたい物語の後半でどんでん返しがあって「あああ、あなただったの〜」って展開が快感だったんだけど、この作品ではどんでん返しはなかったというか、弱かったというか。私が期待しすぎたのか。...

葉真中顕、これまでの作品すごく好き。いつも社会問題を扱って、倫理とは問うてくる感じが好き。さらに、だいたい物語の後半でどんでん返しがあって「あああ、あなただったの〜」って展開が快感だったんだけど、この作品ではどんでん返しはなかったというか、弱かったというか。私が期待しすぎたのか。 この作品は今までの作品より詰まっている要素が多いかなと思う。登場人物も多く、視点もコロコロ変わる。いろんな関係のない人が、いろんなところで関係していて、自分より大きなものに影響される人生に、「もしこうだったら」と空想することがある種の救いであり、とらわれる対象でもある。 おもしろくて買って3時間で読んでしまったが、これまでの作品の方が好きだったかな。

Posted byブクログ

2019/05/08

なかなか面白かった。ただ、登場人物が多く、最後につながるんだろうなと思いつつ、名前と状況を憶えるのが大変だった。私がうといのか?

Posted byブクログ