どうで死ぬ身の一踊り の商品レビュー
風格ある文体もあいまって、古くマイナーな作家をひとり熱心に研究しているだなんてずいぶんと高尚なと思いきや、急にはさまれる頽廃美などとはほど遠いだらしなさに意表をつかれるとともににやりとしてしまい、当初そういう惨めさとの懸隔を演出するかに思われた文学的な情熱もどんどん(清造の墓が汚...
風格ある文体もあいまって、古くマイナーな作家をひとり熱心に研究しているだなんてずいぶんと高尚なと思いきや、急にはさまれる頽廃美などとはほど遠いだらしなさに意表をつかれるとともににやりとしてしまい、当初そういう惨めさとの懸隔を演出するかに思われた文学的な情熱もどんどん(清造の墓が汚ないアパートに持ち運ばれたかのごとく)その最低な暮らしぶりになんじでいって、もうなにもかもがどうしようもない、なのに女が出ていったのちにおのれの醜態を緻密に振りかえるそのいじらしさのようなものになんだか泣きそうになる、ほんとに最低なのだが。
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藤澤清造愛に溢れている私小説。読んでいてあまりいい気分はしないDVの場面はあるけれども、なぜか読み進めてしまいたくなるほど不思議な小説だ。それを解説がわかりやすく書いてくれていた。 『藤澤清造に少しでも近づけることを求めながら、自らは小説家になることを目指していなかった西村賢太の...
藤澤清造愛に溢れている私小説。読んでいてあまりいい気分はしないDVの場面はあるけれども、なぜか読み進めてしまいたくなるほど不思議な小説だ。それを解説がわかりやすく書いてくれていた。 『藤澤清造に少しでも近づけることを求めながら、自らは小説家になることを目指していなかった西村賢太の私小説にその種(作家になることを目指し私小説というジャンルを選び、自分を美化して描くこと)の美化はない。なるほど彼の小説に登場する「私」は常に愚者である。すれはすがすがしくも本当の愚者である。だから西村賢太の小説は不思議にあと味が悪くない。』 それにしても、「根は◯◯なので~」が好きだ。 この小説内では彼の根はわがまま/未練にできている/ペシミスト/虫のつくほど青臭い文学青年/テレクラ嫌い/姑息/狡猾/甘ったれ/苦労性 らしい。 「便座あげとけって言ってんだろがっ!」と怒鳴る場面の理不尽さは笑ってしまった。
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「何んのそのどうで死ぬ身の一踊り」、大正期の私小説作家・藤澤淸造に惹かれた「私」は、その菩提寺を訪ね、古くなった墓標を譲り受けて部屋の一隅に置いて墓と共に暮らすようになる(墓前生活)。さらに藤澤の追悼法要を営み全集を発行したいとのめり込むが、そのために同棲中の女から金を借りるだけ...
「何んのそのどうで死ぬ身の一踊り」、大正期の私小説作家・藤澤淸造に惹かれた「私」は、その菩提寺を訪ね、古くなった墓標を譲り受けて部屋の一隅に置いて墓と共に暮らすようになる(墓前生活)。さらに藤澤の追悼法要を営み全集を発行したいとのめり込むが、そのために同棲中の女から金を借りるだけでなく、かっとして暴力をふるい、女が出て行くと涙ながらに戻ってほしいと懇願する(どうで死ぬ身の一踊り)。女が戻ってきたのもつかの間、女のために買ってきた蟹を愚弄されたことに怒り、ついに殴って骨折させてしまう(一夜)。ただの情けないDV野郎で、気色が悪い、側にいてほしくない、近づきたくもない。
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私のブログ http://blog.livedoor.jp/funky_intelligence/archives/1993469.html から転載しています。 西村賢太作品の時系列はこちらをご覧ください。 http://blog.livedoor.jp/funky_inte...
私のブログ http://blog.livedoor.jp/funky_intelligence/archives/1993469.html から転載しています。 西村賢太作品の時系列はこちらをご覧ください。 http://blog.livedoor.jp/funky_intelligence/archives/1998219.html 「小銭をかぞえる」と同様、西村賢太自身の私小説。相変わらず藤澤清造なる大正期の私小説家に傾倒し、法要に参列したり、記念講演に登壇したり。まさに狂人のよう。 かの藤澤清造という人を知らず興味もない私は、その狂人めいた活動の中において随所に登場する同棲女性との喧嘩が楽しみである。西村賢太は仕事どころかアルバイトや日雇すらやっておらず、その女性がスーパーのパートで稼ぐ日銭をもって生計費や自身の活動費に充てている。まさにヒモである。女性の親からは自費出版名目で500万円借りたのにアパートへの引越し費用に使ってしまうし、更にもう100万を借りるよう画策する。そして数々の暴言や暴力。これほど最低な男を私は見たことがない。 それでも、西村賢太が嫌いになるどころか、更にもっと彼の私小説を読んでみたいと思わせる魅力に溢れている。実に不思議な感覚である。友達にはしたくないけど(笑)
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「どうで死ぬ身の一踊り。これで最後の一踊り。それでもダメとなれば、その時はそう深刻ぶるがものはない。脳をマヒさせた上でこの人を追い、芝公園に行けばいいだけのことではないか、と考えたら急に心が楽になった。」
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