1,800円以上の注文で送料無料

彼女に関する十二章 の商品レビュー

3.9

21件のお客様レビュー

  1. 5つ

    3

  2. 4つ

    12

  3. 3つ

    4

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2021/05/02

最初は何となく垣谷美雨さんのような作品かと思った。 特に思い入れを持ってこの本を読み始めたわけではないけれど、面白く、すっかりはまってしまった。 49歳、税理士事務所パートの主婦、宇藤聖子。 夫の守は大学の同級生で、ライター。 その夫が、ある企業のPR雑誌に、創業者から女性論を...

最初は何となく垣谷美雨さんのような作品かと思った。 特に思い入れを持ってこの本を読み始めたわけではないけれど、面白く、すっかりはまってしまった。 49歳、税理士事務所パートの主婦、宇藤聖子。 夫の守は大学の同級生で、ライター。 その夫が、ある企業のPR雑誌に、創業者から女性論を連載する注文を受ける。 その女性論とは、伊藤整の『女性に関する十二章』。 これがストーリーの要所要所で、聖子の読書に連れて作中に導入されていく。 時に登場人物がこの文章を批判したり、思わず同感したり。 その塩梅が絶妙で、伊藤整に引きずられることもない。 こういうところが、キャリアのある作家だなあ、と感心するところ。 しょっぱなから、そろそろ閉経か、とか、息子の勉にいつまでも彼女がいないことを憂えたりと、中年女性あるあるネタが連発。 どんな紋切り型の話なのかと思いきや、聖子の身の回りで起きていく出来事は、かなり特殊だ。 初恋の男性久世佑太の息子、穣との出会い。 若く見目もよい穣と一緒に過ごす快さを感じたりするのだが、佑太がアメリカで四度結婚と離婚を繰り返し、それぞれの妻、愛人との間に息子を儲けていることを知り、初恋のノスタルジーも一気に冷める。 出向先のNPOに出入りする「調整さん」、片瀬氏との出会い。 金に振り回された半生から、金を持たない、使わない生活をしようとしている、一風変わった人物である。 次々と現れる男性たちとどうかなってしまうのではないかと思われたけれど…。 割と流れに身を任せるタイプのように見える聖子が、意外に手堅く身を処するところに、大人の分別が見える。 それがちっとも「ご立派」な感じでないところがいい。 例えば、片瀬氏が自転車で最寄り駅まで聖子を送ろうとするとき、中年男女として『海街diary』みたいになり得ないと自覚してしまうような感じだ。 そんな大人も、揺れ動く。 勉の同棲相手が妊娠し、産むかどうか迷っている彼女に、聖子はこの世は生きるに値すると言いきってあげられず、それを気に病んでしまったりもする。 この作品は、そういうもやもやも含め、包容しているように見える。

Posted byブクログ

2021/01/31
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

50歳を迎える主婦宇垣聖子の日常を、1950年代に大流行した伊藤整のエッセイ「女性に関する十二章」を照らして描く日常小説。 夫婦のなんということもない雑談が知的でいい。大滝迎える主婦宇垣聖子の日常を、1950年代に大流行した伊藤整のエッセイ「女性に関する十二章」を照らして描く日常小説。 夫婦のなんということもない雑談が知的でいい。何気ない会話に出てくる比喩や発展する話が、大瀧詠一だったり明治文学だったり詩集だったりシュトーレンだったり…。やっぱり教養は日常を刺激的に色をつけてくれるんだなぁと思う。 主婦の目を通してみる世の中が面白く描けていて、これって俺みたいな読者よりそれなりの年齢を経た女性読者の方が絶対楽しめるんだろうな。 中原中也の「思えば遠くきたもんだ」が引用される部分が秀逸!『それは海援隊よ、「へ」がつくだけでダサく台無しなのよ。女に振られてしのうと思ったとか、うっとうしい歌詞にしちゃって…』に大爆笑!ほんま、それな!

Posted byブクログ

2020/03/26

50歳になっても、人生はいちいち驚くことばっかり。 帯の文言。この一文の内容で、共感したり疑問符付けたり面白く読めました。

Posted byブクログ

2020/03/15

50歳、更年期、子どもも手を離れ、自分の時間を持ち、これまでや、今や、これからを考える主婦聖子。 あるある、な文面も多く、少し理屈っぽい感じもあるけど、共感できた。 調整さんと自転車に二人乗りのくだりが一番笑えた。

Posted byブクログ

2020/01/09

本書の舞台は、銀婚式を迎え、一人息子は地方の大学院に進み、今は二人暮らしの家庭。夫 守は小さな編集プロダクションを営み、妻 聖子は経理事務所でパートとして働いている。 ある日、夫がある企業のPR誌に女性論の執筆依頼を受け、参考文献として書棚から60年前のベストセラーエッセイ 伊...

本書の舞台は、銀婚式を迎え、一人息子は地方の大学院に進み、今は二人暮らしの家庭。夫 守は小さな編集プロダクションを営み、妻 聖子は経理事務所でパートとして働いている。 ある日、夫がある企業のPR誌に女性論の執筆依頼を受け、参考文献として書棚から60年前のベストセラーエッセイ 伊藤整著「女のための十二章」を取り出し、読み直している。その夫から「君も読んでみる?」という勧めもあって、妻はタブレットで読んでみることに。 本書は、妻 聖子の日常で起こる様々な出来事とふたりが読み進める「女のための十二章」が絶妙な塩梅で絡み、展開していく。 一見、平凡に見える日常も、いろんな小波が押し寄せては消え、また新たな小波が押し寄せるその繰り返し。この小説にも、妻の仕事に理解を示そうとしない夫の言動に苛立ち、女っ気のない息子が初めて連れてきた女性の器量のなさに呆れ、挙句に同棲してると聞かされ仰天、仕事先で出会った元ホームレスの初老の男の存在が気になったり…。 いまさらながら妻が担う家事は掃除洗濯料理だけでない。行き場のない案件を総務課が担うように、妻にお鉢が回り対処に当たることしばしば。総じて夫は及び腰で、矢面には立とうとはせず、口だけは評論家よろしくいっぱしのことを語る。 平凡な暮らしを維持するということは、押し寄せるいろんな出来事に苦悩、翻弄、動揺を経て、受容したり諦念を抱いたりしながら、歩みを進めていくことなんですな。 本書の白眉は、現代の出来事と60年前のエッセイの内容が重なり、今も昔も人間の「業」に根差すものは普遍であると同時に不変であることを思い知らされる。 それにしても、この手の小説やテレビドラマに登場するシニア夫の描かれ方が、あまりにもモジュラー化というかカリカチュアライズされ過ぎてるのでないかな。小太りで、小心なくせに不遜、デリカシーに欠け、妻に対し常に「こんなこと知らないの」的上から目線でものを言い、しょっちゅうお腹を空かしては何か作ってくれと言い、静かにしてればソファで口開けてうたた寝をしてる。幼児化が著しく、妻は呆れを通り越し、「なぜこの人と一緒になったんだろ」とトホホな気分に苛まれる。 本書は、妻目線で描かれた小説だからこそ、シニア夫にこそ読み、自己省察に励んでほしい。僕は妻から夫への提言書として読んだ。

Posted byブクログ

2019/12/24

面白かったけど少し違和感を感じました。主人公とその夫の性格設定が私には不自然に感じました。性格に微妙に統一感がないというか、知識があるのかないのか分からないところが変な気がしました。こう考える人ならこう考えるはず、これを知らないならこれも知らないはずというのが私の感覚とはズレてい...

面白かったけど少し違和感を感じました。主人公とその夫の性格設定が私には不自然に感じました。性格に微妙に統一感がないというか、知識があるのかないのか分からないところが変な気がしました。こう考える人ならこう考えるはず、これを知らないならこれも知らないはずというのが私の感覚とはズレていて、そういう些細な違和感が私は気になって作品に入り込めませんでした。他の方々のレビューは概ね高評価で面白いとあるので私が変なのでしょうけど…。 伊藤整の『女性に関する十二章』というエッセイをベースに展開される物語自体はすごく面白いです。うまいこと繋げてくるなぁと感心してしまいます。金を使わない人生を送る片瀬さんやゲイの義弟の小次郎さんや初恋の人の息子(ハーフ)とか、他の登場人物はとてもいいです。 伊藤整と中原中也の詩を読みたくなりました。

Posted byブクログ

2019/10/12

台風で外出しない一日の読書でこれをピック。タイトル通りの、50歳の女性が主人公のライトなお話。同い年のだんな、24歳の息子、久しぶりのフルタイムの仕事などなどがプロット。エピソードごとに軽く笑えるシーン多くて楽しい読書だった。

Posted byブクログ

2019/09/26

なかなか面白かった。 男女平等とか言われて だいぶ経つけど、 なんだか時代もあって、 様々な思いがある。 女性は女性の良さがある。 所詮、生きものが違うのだから 仕方ない。と思うのであった。

Posted byブクログ

2019/08/04

中島京子「彼女に関する十二章 」読了。中島さんには、昔の名作をモチーフにした作品がありますが、今回も伊藤整「女のための十二章」をネタにした、息子は独立、夫と二人暮らし、パート勤務の宇藤聖子五十歳のお話。これがいいんだよなぁ。星四つ!

Posted byブクログ

2019/05/27

五十歳になっても、人生はいちいち、驚くことばっかり――パート勤務の宇藤聖子に思わぬ出会いが次々と。ミドルエイジを元気にする上質の長編小説。

Posted byブクログ