日本の部活 の商品レビュー
尾見先生とは何回かお話させていただいたこともありますが,研究の話をまともにしたことはなかった記憶があるので,ぜひとも読みたいと思っていた本でした。折しも,私自身がオートエスノグラフィーを学びたいと思っていた矢先に,本書がオートエスノグラフィーを用いて執筆されていることを知り,出...
尾見先生とは何回かお話させていただいたこともありますが,研究の話をまともにしたことはなかった記憶があるので,ぜひとも読みたいと思っていた本でした。折しも,私自身がオートエスノグラフィーを学びたいと思っていた矢先に,本書がオートエスノグラフィーを用いて執筆されていることを知り,出張の移動中に読んでみました。 なお,オートエスノグラフィーとは質的研究の一つで,個人的経験(自分自身の語り)をデータとして研究対象について探求することです。 自身の経験を基に分析したときによくある批判は「主観的」「根拠がない」だと思うのですが,本書はそのような批判を受け付けません。自身の経験を基にしながらも,それが独りよがりにならないようにきわめて冷静に,あるいは多角的に現象を見つめています。 本書の個人的な面白さは,部活論を日本文化論へと接合した箇所と,本書を通して導き出された部活(BUKATSU)への提言です。部活から日本文化を語るのはまさに文化心理学だなと感じましたし,具体的な提言があるのも心理学者の書物としては珍しいなと思いました。 私が拝読する限り,日本文化論も提言も尾見先生的には満足のいくものではなく,現段階での暫定的な結論だと感じましたので,今後のブラッシュアップが楽しみです。 ちなみに,以前から思っていましたが,尾見先生は口頭でのお話と,文章とのイメージが全然違うなあと改めて思いました。
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