羊の告解 の商品レビュー
中学生用の選書。読み易く、でもいろんな仮定を想像させてくれる、気づかせてくれる一冊。 意識はしてなかったけど、テレビの中で人が死ぬことは自分にとって日常になってしまっていることに初めて気がつきました。 いついつ、どこどこで、何歳で何々をしている誰々さんが死亡しているのが見つかり...
中学生用の選書。読み易く、でもいろんな仮定を想像させてくれる、気づかせてくれる一冊。 意識はしてなかったけど、テレビの中で人が死ぬことは自分にとって日常になってしまっていることに初めて気がつきました。 いついつ、どこどこで、何歳で何々をしている誰々さんが死亡しているのが見つかりました。そんなことを聞いても、自分にゆかりがなければ心は動かない。 殺人であれば当たり前に加害者がいて、被害者にも加害者にも大体家族がいる。そこは想像できていないだけで自分と同じ世界の出来事。事故ではなく、故意に人を殺してしまうような人は自分とは異質な生活を送る別の世界の生き物なのだと、なんとなく認識していたんじゃないかと思います。 序盤で不思議に思っていたのは、友達の家族、同僚の家族が殺人を犯したからといって見る目は変わるか? そこは想像でしかないけど変わらないだろうと。みんなそうじゃないのかな?と。 報道だったり、関係の薄い野次馬だったり、そういうことを面白がるような程度の低い他人だったり、その辺からの攻撃があることは予想されるけど、自分にとってのその人は何も変わらないと思っていました。 でもやっぱり、「絶対的に変わらない」ということは不可能なんでしょうね。 不可逆性というか。知ってしまったことで何かしら変化は生まれてしまう。それが憐憫であれ、応援であれ、変化に変わりはない。完全なるフラットではいられないでしょう。 そしてそれが相手にどんな角度で、どんな深さで刺さるかはわからない。そのことでまた不安になる。 自分が加害者家族側だったら?それは前者の仮定よりさらに想像するのは難しい。多分想像し得ない葛藤が生まれるのでしょう。 でも、絶対的な味方でいてくれる人達の顔を具体的に複数思い浮かべられる私は、この本の234ページから242ページで涙腺が緩む。そうなる自分は幸せなんだなあ、とも思います。
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夏休み前のある日、いつものように朝食を食べていた涼平(中3)の家を警官が訪ねてくる。サラリーマンの父親を任意同行していった。動揺する母親と涼平。小2の周平は、よくわかっていないようだ。父親の容疑は「殺人」だった。父親は警察へ向かう車の中で容疑を認め、その場で逮捕されたという。学校...
夏休み前のある日、いつものように朝食を食べていた涼平(中3)の家を警官が訪ねてくる。サラリーマンの父親を任意同行していった。動揺する母親と涼平。小2の周平は、よくわかっていないようだ。父親の容疑は「殺人」だった。父親は警察へ向かう車の中で容疑を認め、その場で逮捕されたという。学校で、近所で、加害者の(殺人犯の)家族と後ろ指を指されることを心配した母親は、3人で実家へ身を寄せ、夏休みを機に実家近くの学校へ転校し、名字も実家の名字に変え、ほどなく離婚する。 仲の良い友人もいる。彼女から告白され地元のお祭りでダブルデートをする約束もしていた。すべてを捨て、ケイタイの電源を切り母親の実家へ引っ越した涼平。残された中学生活を、静かに誰ともかかわりなく過ごそうとするが、新しい学校で起こった痴漢事件が涼平を父親と向き合わせる。 加害者家族の苦悩を描いた小説や映画・TVドラマはたくさんあるが、主人公が中学生、冤罪ではない殺人事件という事だけでもハードだが、これはYA小説として出版されていることに驚く。 弟が真実を知った時のショックや、母親・祖父母(母方・父方)・弁護士そして父親の対応、どれも無理なく書かれている。それだけに辛い。 涼平と周平の素直な成長を祈ってしまう。
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ある日突然加害者家族となる。 様々な感情が渦巻き周りからも様々な対応を受け、その中でも救われる想いに光を見出だす。 気持ちに余裕があるときはなんとも思わない言葉も、そうでない時は引っ掛かり裏を読み自己嫌悪に陥る。難しい題材。
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父親が殺人容疑で捕まる衝撃の出だし。加害者家族としての苦しみ。 極限の中での人との関わりが、心に深く残る。
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羊の告解 いとうみくさん。 オレの父さんは人を殺した ある日突然「加害者家族」となった少年の、 再生とゆるしの物語。 良かった。
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『天使のにもつ』はいまいちだったが、これは良かった。 こういうテーマを描いた一般向け小説はあるけど、これはYA小説の枠の中で書かれたこのテーマのものとして、とても良かった。(中学生向けなら★5つとしてもいい) 同様のテーマでも、はっきり言って『赤の他人だったらどんなによかったか』は逃げ腰でつまんないなと思ったが、これは難しいテーマでも真正面から取り組み、思春期の子どもが読んでもつくりごとのうすっぺらさは感じず、作品の誠意を感じると思う。 こういう児童書としては難しいテーマによく挑戦したいとうみくは素晴らしいと思う。 刺激の強い一般向けの小説は子どもに読ませたくないし(もちろん勝手に読んでいいんだが、大人が薦めるのはどうかな、と思うし、ロウティーンがきちんと消化できているのかも疑問に思う。)、だからといって社会にある厳しい現実に気づき始めている思春期の子どもに、ごまかしたようなものも薦めたくない。 その点これは男女交際やSNSなどもできる限りリアルに描いていると思う。 まあ、大人目線で言えば、お父さんは本当はいい人なのについカッとなってという設定なんだから、そういう人は殴ったあと自分で救急車を呼んで自首するとは思ったけどな。
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