「砂漠の狐」ロンメル の商品レビュー
「砂漠の狐」ロンメル ヒトラーの将軍の栄光と悲惨 著:大木 毅 角川新書 K-254 エルアラメンの英雄、砂漠の狐、ロンメルを扱ったドキュメンタリーです。 ナチスドイツは、第二次世界大戦の初頭、ポーランド侵攻に始まる東部戦線、ベルギー・フランスへの西部戦線、北アフリカ戦線、そ...
「砂漠の狐」ロンメル ヒトラーの将軍の栄光と悲惨 著:大木 毅 角川新書 K-254 エルアラメンの英雄、砂漠の狐、ロンメルを扱ったドキュメンタリーです。 ナチスドイツは、第二次世界大戦の初頭、ポーランド侵攻に始まる東部戦線、ベルギー・フランスへの西部戦線、北アフリカ戦線、そして、ウクライナを含む、ロシア戦線と戦線を拡大していく ロンメルは第1次世界大戦では、WGBに属して、戦場で卓抜な功績をあげた。 戦術的センスは、抜群にすぐれていたのだ。 ロンメルは、第1次世界大戦終戦時は、歩兵部隊の大尉だった。 縮小されていく軍隊に残るためには、WGBの戦功は役にたったが、軍の幹部教育を受けることができなかったロンメルにとって、その影響は、その後に大きな弱点として現れるのである。 第2次世界大戦の前半でドイツに勝利に導いたのは、機甲師団、戦車部隊、自動車部隊であった。 ロンメルは、ヒットラーの眼にとまり、第7装甲師団を率いて奮戦をした。ロンメルの名はドイツの英雄としてとどろいたのである。 西部戦線を制した、ドイツは、ロンメルを北アフリカ戦線へと投入する。 北アフリカ戦線は、 ドイツ・イタリア連合 vs イギリス・アメリカ・インド連合 の戦いであった。 だが、師団長としては、優秀でも、地域をとりまとめる、指令官としてはいただけなかった。それは、彼には、兵站を軽んじるところがあったからである。そして、ロンメルは兵站というものを学んだことはなかったのである。 やがて、北アフリカ戦線で敗北が決定し、イタリア国内に連合軍が上陸するタイミングになると、ロンメルは再び、西部戦線に呼び戻された。 ヒットラーにとって、ロンメルを、英雄として使える手駒としてあつかったのである。 こうして、イタリア戦線と、西部戦線を行ったり来たりする、ロンメルに最後の時が訪れた 1944年10月14日、ヒットラー暗殺の首謀者の一人として、ロンメルは、SSから毒を与えられて、それを呑んで自害した。 その死にあたっては、盛大な国葬で贈られている。何たる欺瞞。 ドイツをはじめ、連合国でも、ロンメルは、敵の戦士を尊重する紳士であるという評価である。 色褪せた英雄とはなったが、ロンメルの名声は、「砂漠の狐」とともに、そのフェアネスに対する評価を残したのであった。 目次 序章 死せる狐 第1章 ロンメル評価の変化 第2章 「アウトサイダー」ロンメル 第3章 第一次世界大戦のロンメル 第4章 ナチスの時代へ 第5章 幽霊師団 第6章 ドイツ・アフリカ軍団 第7章 熱砂の機動戦 第8章 エル・アラメインへ 第9章 アフリカの落日 第10章 イタリアの幕間劇 第11章 いちばん長い日 終章 ロンメルとは誰だったのか あとがき 主要参考文献 写真・図表について ISBN:9784040822556 出版社:KADOKAWA 判型:新書 ページ数:320ページ 定価:900円(本体) 2019年03月10日初版発行 2019年04月10日3版発行
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第二次世界大戦に興味がない人でも、本書で主題として取り上げているロンメルという名前を聞いたことがあるという人は多いだろう。ナチスドイツの軍人としてアフリカ戦線で活躍した彼は、ドイツの軍人としては過去から現在にかけて最も有名な軍人の1人だと思う。 本書はそのロンメルについて、その伝...
第二次世界大戦に興味がない人でも、本書で主題として取り上げているロンメルという名前を聞いたことがあるという人は多いだろう。ナチスドイツの軍人としてアフリカ戦線で活躍した彼は、ドイツの軍人としては過去から現在にかけて最も有名な軍人の1人だと思う。 本書はそのロンメルについて、その伝説と事実を切り分けた上で、軍人としての評価をすることを目的とした1冊だ。 最初に告白しておくと、自分は別にロンメルに対して特別な思いがあるわけでもないし、彼の伝記を読んだことがあるわけでもない。 ただ戦略と戦術の究極的な活用は求められる戦場において、卓越した能力を見せたのであれば、一度は詳しく知っておきたいと思ったのだ。 結論から先に言えば、本書におけるロンメルの評価は「勇敢にして偉大な戦術家ではあったが、戦略家としては凡庸であり師団長以上の素質はなかった」ということになる。 この評価は決して著者だけのものではなく、現代におけるロンメルの一般的な評価と言えるらしい。 本書では何故にそのような評価になったのか、そして彼がそのように評価される軍人になったのはどのような理由なのかを丁寧に解きほぐしていく。 また決して主題ではないと言え、そのプロセスの最終章としてロンメルがヒトラーの暗殺に関わっていたのかと言う疑問に対しても著者なりの回答を提示する。 本書を通読して感じるのは、戦術家と戦略家と言うのは決して同じ素養を求められるものではないし、戦略家は多くの学びと経験から生まれてくるのだと言う当たり前の事実だ。 漫画や小説ではしばし天才的な戦略家というのが登場してくるが、残念ながら現実の世界においてはそのような期待をする事はもはやできない。もちろん素養がないものが優れた戦略家になる事は決してないと言えるが、複雑な事象を大局的な観点からコントロールするためには、座学での学びと実際での経験を融合させることが不可欠なのだ。 本書によれば、プロイセンとその後のドイツにおいてメインストリームを歩んだわけではないロンメルは、そのような学びを提供される機会がなかったらしい。 また彼は、その生来の性格上、いわゆるデスクワークが好きではなかったようだし、戦場において後方から指揮を取ることも好まなかった。さらに 現在の軍事活動においては不可欠となる補給についてもあまり注意を払う事はなかったらしい。数十万人やそれ以上の軍人の生殺与奪を握る人間としては、著者が言うように失格なのだろう。 一方でそのような欠点、例えば常に前線で指揮をすることを好むであるとか、独断専行や果敢な判断と言うのは戦場の現場において指揮を行う戦術家にとっては好ましい性質となる。 本社では、彼のそのような特質により特に彼のキャリアの前半で多くの戦果を勝ちとったことが丁寧に説明されている。 本書は新書という形をとっているが、戦場に関する記述についてはあまり図表がなく、事前知識を必要とする部分が多くある。またロンメルの一生を描くと言う性質上、彼が関わった多くの人間が次々登場しては去っていくために、 人間の名前を覚えるのでも一苦労だった。 そういった意味ではわかりやすい戦場の英雄端や紋切り型の軍人に対する評価を期待する人には、あまり本書を向いてるとは言えない。 丁寧な記述を口にせず、紋切り型ではない人物評価を読みたいという硬派な読者向けの一冊に仕上がっていると思うし、 戦争や軍事史に関する本と言うのは本来はこうあるべきなのだと思う。
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ヒトラー暗殺計画に加担したと追及され、非業の死を遂げたドイツ国防軍の英雄ロンメル将軍の虚像と実像を、『独ソ戦』の著者・大木毅氏が最新学説から分析された英雄神話の解体新書。 ロンメルは勇猛果敢、師団長としては適格であるが、昇進し、作戦的・戦略的な知識を要求されるにつれ、その能力に限界ありと指摘された。故に危険を冒しても成功をつかむ必要があり、自らの功績を誇張せずにいられなかった。その努力の結果、総統の愛顧を受けて、思いがけぬ高みに昇りつめた。総統暗殺の陰謀に、どの程度関与したのか確たる証拠はないが、服毒自殺を強いられた死顔には、蔑みの表情が深く刻まれていたという。 ヒトラ-に傾倒し、自己顕示欲とナチスの一大プロパガンダに翻弄された、栄光と挫折の己の生涯への蔑みであったかも知れないと、著者は締めくくっている。
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昔読んだ戦車の本で、砂漠の名将的に取り上げられていた覚えがある。 戦後、敵であった英国からも名将と称えら得ていたのが、いやアイツは功名心の塊でろくでなしやで的な批判があり、その批判も批判するための捏造だって証拠が上がったり。 少なくともそういう研究対象になる、有数の軍人ではあ...
昔読んだ戦車の本で、砂漠の名将的に取り上げられていた覚えがある。 戦後、敵であった英国からも名将と称えら得ていたのが、いやアイツは功名心の塊でろくでなしやで的な批判があり、その批判も批判するための捏造だって証拠が上がったり。 少なくともそういう研究対象になる、有数の軍人ではあったわけだ。 生まれやその他の要因で軍の出世の主流には乗れず、上がっていくためにはアピールが必要だった。コンプレックスの塊もあったのかな。 それでまあ、それを実現するための才能に恵まれていたわけだ。あり得ないような戦果をあげて、ヒトラーにも気に入られて、ぐいぐいとのしあがっていった。 ところが戦術面では極めて優秀であったのが、戦略とか作戦とかになると、全く弱いという面が、偉くなってから露呈する。 大日本帝國陸海軍とか、日本プロ野球とかみたいなもんか。 最後は破滅。 もっとも戦場において、非人道的な行為には一切背を向けていたのは事実らしい。戦争自体が非人道的ではあるが。 戦後長年経っても、研究者を魅了する人物なんだろうな。 沢山の戦闘が詳しく書かれているが、そこは興味ある人向け。
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ドイツでアウトサイダーとして社会に出てから軍で目覚ましい活躍を重ね、出世していき、伝説的な将軍となったロンメル。 ヒトラーに重用されたこと、運の良さ ナチスにうまく利用もされた。私見だが名前の響き、顔の良さも宣伝のために好都合だったのではないか? 読了120分
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こういう近代戦の戦記を本で読んだのは初めてかもしれない。 歴史フィクションでカッコよく描かれている将軍という存在が、現実の戦争においてどういうものなのかについて、よりクリアに見えてきた。
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第二次世界大戦時、ドイツの陸軍軍人として活躍し、悲劇的な最期を遂げたロンメルについて、最新の研究を元に毀誉褒貶を余すところなく描いた一冊。
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「砂漠の狐」として名をはせたエルヴィン・ロンメルは良くも悪くも脚色された物語を持つ英雄だと思います。 プロイセン軍人が幅を利かせた帝政時代にあってはそこから外れたアウトローからキャリアをスタートさせ、第1次大戦では大胆な戦術を駆使して次々と戦果を挙げ、ついにドイツ軍最高の勲章(ブルーマックス勲章)を獲得。 第2次大戦のフランス戦線において、彼が指揮した師団はその神出鬼没ぶりから「幽霊師団」と恐れられ、アフリカ戦線では常に劣勢な物量下で英国軍と互角以上にわたりあい、ついに元帥に上り詰める。 戦局が悪化するにつれて何とか講和による戦争終結を目指すものの受け入れられず、最後はロンメルにスポットライトをあてた当人であるヒトラーからの命により自ら毒をあおぐという悲劇によって人生の幕を下ろす・・・。まさに映画や小説のような筋書きです。 しかし逆に、どこまでが脚色でどこまでが真実なのかがはなはだわかりにくい人物でもあります。 本書を読むとわかりますが、ロンメルを題材にした著作物は様々な思惑によって彼を持ち上げ、またこき下ろしていることから事実が非常にわかりづらくなっている。 そんな中にあって本書は「真実のロンメル」を明らかにせんとして書かれた一冊なので大変参考になります(ただし、それがゆえに「夢から覚めてしまう」不安も付きまといます)。 読み終えての感想ですが、本書は非常に親切な構成でとても分かりやすいです。 文章は簡潔にして明快です。 章立てとしては、ロンメルの生い立ちから軍人としてキャリアを築いていく流れを時系列で説明しています。 その中で意外な事実も多々記されています(まさかあのロンメルがルチー(後の婦人)に黙って愛人との間に子をもうけ、しかもその子を公然と養っていたとは・・・!) また各所で説明されるロンメルの人物評ですが、実際に彼と関わりを持った人物たちの証言が公平に取り上げられ、そこか浮かび上がる人物像として説明されているのでとても客観性が高いと感じます(当然証言者の思惑やバックボーンについても言及されています)。 それと同時に、巷のロンメル戦記の中では邪魔者として彼の足を引っ張ったかのように描かれている人物たちや、ロンメルに苦も無く蹴散らされたかのように描かれる将領たちの実際の姿も客観性を持って補足されているので、読んでいて感心します。 くわえて具体的な戦闘状況の文章描写とともに戦局図や地図が挿絵として豊富に掲載されているのも助かります。 本書を読んで浮かび上がってくるロンメル像は、大胆かつ勇敢な天才戦術家としての(馴染みのある)姿とともに、実際以上に自分を大きく見せたがる自惚れ屋、そして大きな戦略的見地を欠き、己が戦術の完遂のためには部下の命を顧みない非情な姿、です。 本書を読むとわかりますが、彼の指揮下で幾人もの師団長レベルの将領が戦死し、また捕虜になっています。この人数ははっきり言って異常です。あの血みどろの独ソ戦にあっても初期の時点ではアフリカ戦線よりましだったのではないか、と思わせるレベルです(師団長レベルがそうなのですから、下士官レベルは言わずもがな、です)。これだけを見ても、ロンメルの指揮には重大な問題をはらんでいたことが見て取れます。 個人的に彼の行動は、第1次大戦でのルーデンドルフや、もっとさかのぼって北伐における魏延の行動とかぶって見えました。 ちょっぴり夢から覚めて、真実のロンメル像を垣間見たい方におすすめの一冊だと思います。
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「アフリカ戦線を戦った名将」という印象しかなかったロンメルの人生について詳細に書かれている。 そのような印象は、主に下記の理由によるとのこと。 ・ゲッペルスによる士気高揚のためのプロパガンダ ・本人も自己宣伝に努める傾向があった 2番目については、本人の性格もあるが、ロンメル...
「アフリカ戦線を戦った名将」という印象しかなかったロンメルの人生について詳細に書かれている。 そのような印象は、主に下記の理由によるとのこと。 ・ゲッペルスによる士気高揚のためのプロパガンダ ・本人も自己宣伝に努める傾向があった 2番目については、本人の性格もあるが、ロンメルがドイツ軍のエリートコースに入れなかったことにも由来するという理由は興味深かった。 (①「将校適正階級」以外の出世ルートである砲兵科・工兵科ではなく歩兵科、②プロイセン軍ではなくヴュルテンベルク軍出身、③陸軍幼年学校・士官学校を経ずに将校に任官した) また第一次世界大戦敗戦後に将校の数が大幅に制限されたため、必要以上にアピールしないと軍に残れないという理由もあったようだ。 戦略的視野や高級統帥能力には欠けるが、作戦・戦術次元では勇敢で有能な指揮官という評価が、現在では等身大の評価らしい。 更に最近ではロンメルの評価は政治的な色彩を帯びてくるようになったという。 ([「砂漠のキツネ」ロンメル将軍を追悼、 独国防省高官のツイートが波紋 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News](https://www.afpbb.com/articles/-/3194083)など) また、日本のアカデミアでは軍事史の研究は行われないこと、また旧日本軍・自衛隊でドイツ語がわかる人材がいなくなったことにより、未だに1980年代の研究が通説とされている点には驚いた。 文章中に何度も書かれている、優秀な野戦指揮官ではあるが、戦略次元では能力に欠けるという評価の他に特筆すべき美点が一つあった。 それはロンメルは非人道的な命令であれば、総統命令であろうと無視するような騎士道精神も持ち合わせていたという点だということである。 それが今もなおロンメルが人々の記憶に残っている理由の一つかもしれない。 (ただし「絶滅戦争」である東部戦線に参加しなかったという偶然の幸運もあったかもしれない、とも書かれている。) トップ(ヒトラー)の誤った命令や、軍の権力争いなど、現代にも通じるような組織の悪い面が、当時のドイツ軍にも表れていた点は興味深かった。 (ヒトラーについてはノルマンディー上陸作戦など正しい判断もあったようだが。) 難点は、地図が見づらく戦闘の推移がわかりづらかった点。
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「独ソ戦」著者によるロンメル評。 最近hoi4 にハマりww2を勉強し始めたため購入。 サクサク読めたし入門本として最適だと思う。 ロンメルがドイツ国防軍の中でもアウトロー的経歴の持ち主だった事を重視し、故に勇猛大胆、独断専行な戦術家として大成し、上級将官としての教育を受けなか...
「独ソ戦」著者によるロンメル評。 最近hoi4 にハマりww2を勉強し始めたため購入。 サクサク読めたし入門本として最適だと思う。 ロンメルがドイツ国防軍の中でもアウトロー的経歴の持ち主だった事を重視し、故に勇猛大胆、独断専行な戦術家として大成し、上級将官としての教育を受けなかったことから補給軽視、戦略的視野が弱い指揮官であったと分析している。 またアウトサイダーであったため、軍部で昇進するためにも功名心とその誇示には病的であったとも。 そんなロンメルの評価は現代に至るまで未だ定まらない。 ロンメルの活躍はナチスにより過度に喧伝されており、また彼が最後までヒトラーへの忠誠心を持ち続けたかも曖昧なこともあり、ナチスの忠実な一員かドイツ国防軍の良心の一人か、今日まで上振れと下振れを繰り返しているからだ。 ただしロンメルが度々戦場で見せた騎士道精神だけはいつの時代も変わらず評価されていると、この本は締めている。
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