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平成はなぜ失敗したのか の商品レビュー

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17件のお客様レビュー

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2024/02/22

大蔵官僚出身の学者が、「失われた30年」をわかりやすい言葉で分析している。 他の書籍などでも繰り返し語られているのと同じく、「既得権益」「問題の先送り」といったキーワードが出てくる。 過去の成功体験が転じて、日本が「安心安全」を追及し、ある程度それが実現した(してしまった)の...

大蔵官僚出身の学者が、「失われた30年」をわかりやすい言葉で分析している。 他の書籍などでも繰り返し語られているのと同じく、「既得権益」「問題の先送り」といったキーワードが出てくる。 過去の成功体験が転じて、日本が「安心安全」を追及し、ある程度それが実現した(してしまった)のが日本からチャレンジや革新の気概を失わせてしまった根本的な問題なのかと思える。見方によっては「緩やかな衰退」が幸せなのかもしれない。SFモノで時々出てくる価値観だ。 中国や米国と日本の留学生の数の差が大きいというくだりでそれを感じた。中国も米国も、自分の国や通貨に頼らない(信用していない)がゆえにチャレンジするしかないという土壌の違いがあるのだと。

Posted byブクログ

2022/07/24

バブル崩壊後の平成時代の日本経済の低迷の原因は何なのか、というテーマに関しての本を続けて何冊か読んでいる。 本書も、そのようなテーマに関しての本である。世界経済は、1990年頃を境に大きく構造を変えているが、日本はその構造変化に対応することが出来なかった。ばかりではなく、古い産業...

バブル崩壊後の平成時代の日本経済の低迷の原因は何なのか、というテーマに関しての本を続けて何冊か読んでいる。 本書も、そのようなテーマに関しての本である。世界経済は、1990年頃を境に大きく構造を変えているが、日本はその構造変化に対応することが出来なかった。ばかりではなく、古い産業構造を温存することになる経済政策を続けてしまい、古い、競争力のない産業を保護し存続させてしまっていることを筆者は指摘している。古い産業構造を温存することになる経済政策とは、例えば、金融緩和や円安誘導、さらには例えばエコカー減税のような支援策や、雇用調整助成金のように競争力のなくなった産業での雇用を継続させるような施策を指している。すなわち、目の前の現状(例えば目の前の競争力のない産業の雇用)を守る、要するに現状維持を図るために色々なことをやり、現状維持は図れたが、世界の変化から取り残されてしまった、ということだ。この議論は、非常に説得力のある議論のように感じた。 バブル崩壊後、かつ、リーマンショック前の2004年頃、一時的に為替が円安に振れて輸出企業、特に電機会社の業績が回復したことがある。その際に、電機会社のいくつかは、日本に大型の工場をつくることを選択した。例えば、シャープ亀山工場であり、パナソニック茨木工場である。よく覚えているが、その当時、「亀山ブランド」という言葉があった。シャープの亀山工場は液晶テレビを製造する工場であったが、品質の良さ(すなわち不良率の低さ)を誇っていた。円安はいつまで続くか分からない中での国内工場建設への大型投資を正当化する(為替にかかわらず品質の良さで勝っていける)ためのスローガンであったと思うが、当時、この「亀山ブランド」という言葉に違和感を覚えた(電機産業以外の)サラリーマンは非常に多かったと思う。電機製品はどんな製品であれ、コモディティ化していくはずであり、早晩、日本以外の国も品質面では簡単に追いつくこととなり、更に円高方向に為替が振れた時に、亀山工場は立ちいかなくなるはずであると、割と多くのサラリーマンが感じていたはずである。結果はその懸念の通りとなった。シャープは経営破綻し、台湾の鴻海に買収された。鴻海はフォックスコンの親会社であるが、フォックスコンはアップル製品、iPhoneやiPadの製造を受託する会社である。すなわち、時代はアップルのように自社で製造工場を持たずに開発に特化する会社と、フォックスコンのようにそういった会社の製品を受託生産する会社の水平分業の時代に入ったのであるが、それにシャープやパナソニックは気がついていなかったということだ。整理して言えば、製造業においてすら、もはや製造すること自体は競争力の源泉にならず(フォックスコンのように、それを、これまでとは全く異なるレベル・規模で徹底すれば別だが)、製品企画力・開発力にしか競争の源泉は存在しないにもかかわらず、古いタイプの産業モデル(製造すること自体を競争力として、輸出で稼ぐ)に固執した結果、日本の企業は競争力を失っていった、という議論である。 日本経済の不調は構造的な問題であるというのが筆者の主張であるが、それに対して、筆者は次の3つの課題を解決することが必要であると主張している。 1) 人口の高齢化によってもたらされる問題に対処すること。とりわけ、労働力不足の問題と、将来の社会保障支出の問題に対処すること 2) 変化する世界の条件、とくに中国の急速な成長に対処すること 3) 改革の遅れを取り戻すこと。とりわけ、企業のビジネスモデルを転換させ、生産性の高い新しい産業を作りだすこと 現在の政府・日銀の政策の考え方は、「日本の衰退の原因は物価の下落だから、金融を緩和して物価を引き上げれば解決する」というものであり、それが現在の異次元金融緩和政策のベースとなっている。実はこの政策を取り始めたのは2013年であり、もうすぐ10年になる。この間、日本経済は好転の兆しを見せておらず、そもそも、金融緩和策によって(今年に入ってからを別にすれば)物価は上がらなかった。 私自身は、筆者の主張(日本が構造的に立ち遅れている)の方が合理性があると感じる。 最後に本書は2019年の発行であり、コロナ前の状況をベースに執筆されている。コロナ禍によって、また、ロシアのウクライナ侵攻によって世界の状況は更に変化しているが、その間に日本の産業競争力は世界に追いつこうとしているかと言われれば、全くそんなことはなくて、むしろ差は開きつつあるように思える。 引き続き、バブル崩壊後の平成日本経済の低迷の原因を探った本を読み続けるつもり。

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2022/06/08

平成が失敗した理由は色々と書かれているが、やはり、日本が世界の産業構造の変化について行けなかったことが最も大きな原因だと感じた。そして、その状況はまだ続いていることも忘れてはならない。 個人のレベルに落として平成の失敗を活かすのであれば、時流を見極めてそれにあったスキルを自分で身...

平成が失敗した理由は色々と書かれているが、やはり、日本が世界の産業構造の変化について行けなかったことが最も大きな原因だと感じた。そして、その状況はまだ続いていることも忘れてはならない。 個人のレベルに落として平成の失敗を活かすのであれば、時流を見極めてそれにあったスキルを自分で身につけ、必要なら転職してスキルを身に着けたり、給料を上げたりするのが解決策だと思う。

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2022/05/08

2022.5.8 読了 内倉さん(元GSのバンカー)のオススメということで手に取った。 経済史と日本への提言を手頃にまとめてある印象だった。 また読み返したい。

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2021/07/23

日本経済の停滞は、90年代からまことしやかに言われているようなデフレによるものではなく、変化する世界に対応できなかった・しようとしてこなかったツケである、ということを解き明かしてくれている本。   折々で著者の思い出話が挟まってくるのでエッセイのような側面もありつつ…苦笑   既...

日本経済の停滞は、90年代からまことしやかに言われているようなデフレによるものではなく、変化する世界に対応できなかった・しようとしてこなかったツケである、ということを解き明かしてくれている本。   折々で著者の思い出話が挟まってくるのでエッセイのような側面もありつつ…苦笑   既得権益をぶっ壊す規制緩和が政府のなすべきことだ!個別産業に肩入れするのではなく人材育成のような基本的条件を整備しろ!というのは大いに賛成。 ですが女性の労働参加に関して 「子育て期の女性の労働力率を高めるには、子育て支援などの政策が必要です。それは、決して容易な課題ではありません。」で済ませてしまうのはちょっと片手間が過ぎるのではないかと。長時間労働を背景に家庭・子育てを"免除"されてきたのは父親の既得権益ではないですかね。 (もちろん人を長時間労働に至らしめるような低生産性・低賃金が温存されてきた構造があるとは理解しつつ。)

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2020/05/26

1980年代、世界経済における日本の地位が高まった。日本経済は成長し、80年代後半には地価が高騰した。 これはバブルだが、当時は経済の実体的な変化によるものだと考えられた。 1990年代初め、日本経済は天井に突き当たる。 91年から地価が下がり始め、企業の売上高の増加も止まった...

1980年代、世界経済における日本の地位が高まった。日本経済は成長し、80年代後半には地価が高騰した。 これはバブルだが、当時は経済の実体的な変化によるものだと考えられた。 1990年代初め、日本経済は天井に突き当たる。 91年から地価が下がり始め、企業の売上高の増加も止まった。 だが、こうした変化は一時的な現象と考えられ、バブル的な気分は続いた。 1980年代の末、日本がバブルの頃、中国をはじめとする新興国の工業化、情報通信技術の革新などが進んだ。 こうした基礎的経済条件の大転換は、日本経済の基礎を揺るがした。 アベノミクスは、日本経済を持続的な成長経路に乗せることに失敗した。 ・「アベノミクスは企業の活動を活発化させた」といわれるが、現在の企業の売上高は、2013年初め頃とほぼ同じ。 ・日本経済が持続的な成長を実現するには、実質消費が成長する必要がある。  現在の消費水準は、異次元金融緩和が始まった2013年とほぼ同じで、増加したとはいえない。 日本が抱える問題は、金融緩和や円安ではなく、経済構造を変えることでしか解決できない。 その課題は、次の3つ。 ①労働力不足への対処: 高齢者や女性の労働力率を高めるとともに、移民を大幅に増やす。 ②世界経済の構造変化への対処: 中国は将来、1人当たりGDPで日本と並び、GDPは日本の10倍になると予想される。特に、この中国の急成長に対処する。 ③新しい産業の創出: 企業のビジネスモデルを転換させて、GAFAのような生産性の高い、新しい産業を作り出す。

Posted byブクログ

2020/04/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2020/04/07:読了  日本単独で見ても、答えはでないと思う。  もしもの話だが、日本の半導体を潰し、バブルを発生させつぶし、さらに金融自由化して、それに寄生し、原子力発電所を地震という名目で危機に陥れて、というようなことが出来る人達が、仮にいたとしたら、そりゃあ、誰が日本を運営してたとしても、失敗するでしょ。  仮にの話だけど。  そんなことをされながらの今を、どう考えるのか。それでも、やりようによっては、今より、良い状況になったというのであれば、それを示して欲しい。

Posted byブクログ

2019/12/25

https://www.gentosha.co.jp/book/b12282.html , https://www.noguchi.co.jp/ , https://note.com/yukionoguchi

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2019/08/16

評価3.5くらいですが、「平成は良かった」ではなく、「何でもかんでも悪い」でもなく、自らの世代の失策として失敗を冷静に説く。これは是非我々の世代も見習い、かつそれを成功にするための冷静な議論につなげたく4点。

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2019/08/15

昭和46年生まれの私にとっては、過去を振り返るのに最適でした。 ただ、過ぎた過去を分析できたとしても、やって来る未来を予測はできましぇん…。

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