ミステリーで読む戦後史 の商品レビュー
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国文学博士である著者が、戦後日本の社会や時代が抱えている掘り起こし、掘下げようとする推理小説に焦点をあて、ミステリ-でふりかえる歴史の新しい読み方を説いたガイドブック。 読食指をくすぐる未読作品は、二木悦子『猫は知っていた』、水上勉『海の牙』、檜山良昭『スタ-リン暗殺計画』、宮部...
国文学博士である著者が、戦後日本の社会や時代が抱えている掘り起こし、掘下げようとする推理小説に焦点をあて、ミステリ-でふりかえる歴史の新しい読み方を説いたガイドブック。 読食指をくすぐる未読作品は、二木悦子『猫は知っていた』、水上勉『海の牙』、檜山良昭『スタ-リン暗殺計画』、宮部みゆき『魔術はささやく』、奥田英朗『オリンピックの身代金』、佐々木譲『警官の血』・・・ 眩暈がするほど盛沢山で、死んでも死にきれない。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
日本のミステリー小説が戦後史をどう捉えてきたのかを読み解いた本。 1950年代から2010年代までの代表的な日本ミステリー小説を通して、戦後社会やミステリーがどのように変化していったのかが書かれています。 本書で紹介されている作品はネタバレ付きで解説が書かれています。ネタバレを回避したい方は、本書の目次を見て、自分が読みたい作品がある場合は本書を読むのは後回しにした方がいいと思います。 本書を読むと、日本ミステリー小説の変遷を一通り知ることができます。
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『文学はなぜ必要か』からの課題を引き継いだ新書。 文学史に興味を持つ著者が、戦後社会をミステリによって読み解いていく。ネタバレ厳禁の分野ではあるが専門家的な作業はなく、むしろ平易なあらすじと整理で作品を概観できる。読書案内の位置づけも獲得しているのが楽しい。 時事は表現に影...
『文学はなぜ必要か』からの課題を引き継いだ新書。 文学史に興味を持つ著者が、戦後社会をミステリによって読み解いていく。ネタバレ厳禁の分野ではあるが専門家的な作業はなく、むしろ平易なあらすじと整理で作品を概観できる。読書案内の位置づけも獲得しているのが楽しい。 時事は表現に影響を与えるので言語によって読むことができるミステリは、私たちが生きている歴史を異なる視座から見ることができるという方法が一貫している。この方法にともなって、ネタバレをせずに作品を物語のあらすじで捉えるため、むしろ作品の表層しか捉えられないのではと言いたい。ただしそこはミステリなので著者の配慮が妥当。 大切なのはミステリだけが戦後史を抱えているわけではないことかと思う。他分野もこの方法は可能であって、芸術や民俗ではどうだろうかと(あるかもしれないけれど)疑問が浮かぶ。たとえば別に建築だって可能なので、むしろミステリ、あるいは小説に限らないと新書の文量では済まないだろうと思う。〈了〉
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古典文学研究者である筆者が戦後に発行された推理小説からミステリーは戦後社会をどうとらえてきたかを10年ごとに時代を振り返る内容で書いてあり、戦後社会についてミステリーから読み解くという内容が新鮮だった。
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敗戦後の復興の光と影のなかで、『点と線』『ゼロの焦点』が書かれ、爆発的な人気を博し、推理小説に社会派という新たな流れをつくり出す。さらに、高度成長期へと続く時代のなかで、『海の牙』や『人喰い』、騒音公害を告発する『動脈列島』などの作品が生み出されていく―。ミステリーは謎解きが終わ...
敗戦後の復興の光と影のなかで、『点と線』『ゼロの焦点』が書かれ、爆発的な人気を博し、推理小説に社会派という新たな流れをつくり出す。さらに、高度成長期へと続く時代のなかで、『海の牙』や『人喰い』、騒音公害を告発する『動脈列島』などの作品が生み出されていく―。ミステリーは謎解きが終われば、それで一応の役目は終わりとなるが、歴史のなかに位置づけることで、時代が抱える問題が鮮明に浮かび上がる。はたして、ミステリーは戦後社会をどう捉えてきたか。まったく新しい読み方で、一〇年ごとに時代を振り返る。 ネタバレに注意。堂場瞬一の「雪虫」の記述には納得。
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目次に羅列されたミステリー小説の数々。 日本推理作家協会賞受賞作や江戸川乱歩省受賞作といった錚々たる作品ばかり。未読もあれば、既読もある。 ミステリーファンにとっては、どれも魅力的な作品であり、どんなことが綴られているのかとつい手が出てしまう。 古典文学研究者の著者は、年代別に各...
目次に羅列されたミステリー小説の数々。 日本推理作家協会賞受賞作や江戸川乱歩省受賞作といった錚々たる作品ばかり。未読もあれば、既読もある。 ミステリーファンにとっては、どれも魅力的な作品であり、どんなことが綴られているのかとつい手が出てしまう。 古典文学研究者の著者は、年代別に各作品を取り上げ、社会歴史的にその要旨を論じる。 いずれの作品もその時代を反映し、社会や時代が抱えている問題を掘り起こしていると、論評する。 そして、ミステリーで戦後史を振り返る必要性を説く。 一方で、作品としての出来ばえとか、人間が描けているかどうかと、辛口のコメントも容赦ない。 ともかく、掲載されている各ミステリー、読んでいない作品は読みたくなるし、すでに読んだ小説も再度読みたくなる、そんな罪深い?思いを起こさせるミステリー解説書。
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書名に惹かれて。「はじめに」で表明されている「文学を作家の固有性からみる読み方は古典には通じない。そういう読み方は近代にばって、個人に過剰な価値を与えるようになって以降のことでしかない。」「私は文体と時代、社会の関心を中心に据えることで文学史を考えることが出来るようになった。」「...
書名に惹かれて。「はじめに」で表明されている「文学を作家の固有性からみる読み方は古典には通じない。そういう読み方は近代にばって、個人に過剰な価値を与えるようになって以降のことでしかない。」「私は文体と時代、社会の関心を中心に据えることで文学史を考えることが出来るようになった。」「そこで推理小説である。先に述べたように、文学は社会や時代が抱えている問題を掘り起こし、掘り下げようとするものである。なかでも、いわゆるエンターティメント系の小説はその時代、社会を直接反映して書かれている場合が多い。ならば、推理小説から書かれた時代、社会の問題や関心をみることができるはずである。さらに時代順に追っていけば、おのずと歴史がみえてくることになるのではないか。」という本書の目論見にメチャ期待しました。10年毎に、1950年代まで、が「戦後の社会を書く」、60年代が「戦後社会が個人に強いたもの」、70年代が「高度成長した社会の矛盾」、80年代が「新たな世代の価値観と家族の再生」、90年代が「時代に取り残された個人」、ゼロ年代が「グローバルな社会、そして問われる歴史」、そして10年代が「世界はどこに向かうのか」ということで、ナルホドな総括なのですが、なんとなく作者の歴史観に作品が嵌められているように感じるのは、ひとつひとつの作品の要約が上手くいっていないからなのか、新書で61作品を紹介する無謀さによるものなのか。なんとなく、こころ余りて言葉足らず、な印象の挑戦でした。
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