近現代日本史との対話【幕末・維新─戦前編】 の商品レビュー
冷戦崩壊後の歴史学構築として「システム論」によりこれまでの通史の上書きを行い「メタ通史」を叙述するという結構壮大な試み。この<歴史システム論>は2022年からスタートする「歴史総合」にも対応可能だという。(「歴史総合」がシステム論的に展開されるのかは定かではないが) システムとは...
冷戦崩壊後の歴史学構築として「システム論」によりこれまでの通史の上書きを行い「メタ通史」を叙述するという結構壮大な試み。この<歴史システム論>は2022年からスタートする「歴史総合」にも対応可能だという。(「歴史総合」がシステム論的に展開されるのかは定かではないが) システムとは「人と人とのつながりを作り出す動きであり、かつ人と人とのつながりが作り出す関係の総体」との事。著者は近代・現代・現在と3区分に分け、各区分をさらに2つに分解して合計6つのシステムを列挙し、その交代劇としての歴史を論じている。 方法論的には興味深いのだが、肝心の描き出されるシステム内容が凡庸であり新鮮味がない。よって、システムのフレームワークが埋没してしまってるようにも思える。またアプローチも「人と人とのつながり」を重視しているせいか、冷戦時代の民衆史研究の派生形という印象を拭えない。とは言っても、膨大な参考文献を引用した通史の「上書き」であるため、叙述の厚みは感じられ、それなりに読み応えはあるように思える。 全体的にはまだβ版という印象で、少々出版を急いでしまったのではないだろうか?「歴史総合」までにはまだ時間があるので、もうちょっとシステム内容を精査して、新たな切り口でモデリングをしっかり行った方がよいのではないかと思えるが。
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長らく歴史叙述のあり方をメタ的に考察してきた著者による近代日本を貫く通史。まさに「成田史学」の集大成で、国際関係と政治経済と庶民生活を(事実の羅列ではなく)同一のフレームで立体的に描くという離れ業を行っているが、立脚する理論が「国民国家論」や「総力戦体制論」であるため(いずれも...
長らく歴史叙述のあり方をメタ的に考察してきた著者による近代日本を貫く通史。まさに「成田史学」の集大成で、国際関係と政治経済と庶民生活を(事実の羅列ではなく)同一のフレームで立体的に描くという離れ業を行っているが、立脚する理論が「国民国家論」や「総力戦体制論」であるため(いずれも歴史学界では必ずしも支持されていない)、専門家からは批判が予想される。近代世界の変容を「システム」の重層的変化として捉えているが、その「システム」に固有名詞を与えず(例えば「国民国家」システムとか「帝国」システムというような)、あえて「システムA」とか「システムB」という抽象的な概念規定を行っている点も問題となろう。
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<目次> 第1部 国民国家の形成 第1章 幕末・維新(1853~1877) 第2章 民権と憲法(1877~1894) 第2部 帝国主義への展開 第3章 日清・日露の時代(1894~1910) 第4章 デモクラシーと「改造」(1905~1930) 第3部 恐慌と戦争 第5章 恐慌と事変(1930年前後) <内容> 近現代の通史であるが、「政治」とか「経済」とかをたどるのではなく、「システムとそのもとでの人々の経験」をベースとする通史である。したがって、”厚い”(新書で465ページ)。これは前半で、後半も同じくらい厚い。そして、読んでいてよくわかる。語られることは、著者の主観的な部分もあるが、読んでいて面白い。ちゃんとした読み物である。
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幕末から第二次世界大戦前の日本の歴史。アジアの一国でしかなかった日本が明治維新、日清日露戦争を経てヨーロッパの列強に肩を並べていく。歴史では1925年に普通選挙とありましたが、そこに辿り着くまでに困難な道があったこと。また農村と都市部では経済格差があったこと。植民地を獲得していく...
幕末から第二次世界大戦前の日本の歴史。アジアの一国でしかなかった日本が明治維新、日清日露戦争を経てヨーロッパの列強に肩を並べていく。歴史では1925年に普通選挙とありましたが、そこに辿り着くまでに困難な道があったこと。また農村と都市部では経済格差があったこと。植民地を獲得していくなかで、帝国主義の元で郡部が暴走していく過程など。ちなみに大日本帝国憲法が日本の本国のみにしか適用されていなかったことをはじめてしりました。
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