ピクニック・アット・ハンギングロック の商品レビュー
映画版から。 予想していたのは消えた女の子たちへのフォーカスだったけど、実際には女の子たちが消えたことによって延焼していく周囲の群像劇だった。 この手の作品はうまくいかないとドキュメント24時、というか...ひたすらドライな作品になりかねないけど、こちらは舞台が100年以上前...
映画版から。 予想していたのは消えた女の子たちへのフォーカスだったけど、実際には女の子たちが消えたことによって延焼していく周囲の群像劇だった。 この手の作品はうまくいかないとドキュメント24時、というか...ひたすらドライな作品になりかねないけど、こちらは舞台が100年以上前とあってクラシカルな魅力が補って余りある。 集団ヒステリーなのか、自然の神隠しなのか..幻想文学史としても見てみたい題材だけど、この作品はこの作品で鋭利な1900年ごろの現実の物語として綺麗に成立していた。 かえって繊細なまでに現実主義であることで、幻想に食い込んでる部分もあるというか、そういう不思議な作風。 自然描写と、自然が取り巻く街の人々の人生や運命の巻き込み方の描写が上品かつ独創的で癖になる。また表現を拾うためにも読み直したい。 あとがきより この作品は実録ものでなく、なんと正夢ものだと言うからそこ知れない。 1970-80sに少女➕フロイト(そしてゴシック)、またソフトフォーカス写真で捉える美少女というテーマが時代の一大ブームになっていたという背景もなるほど。
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映画公開当時とても観に行きたかったのにチャンスを逃した作品の原作。今回リバイバル上映されると聞いて原作を予習。 映画を観ました。 アルバートが彼女の兄だったとは? もう一回読み直さねば。 確かに、夢の話をしているときに妹の名はセアラだと言っている。気づかなかった。
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Joan Lindsayが1967年に発表した長編小説。日本では1975年に公開された映画が有名です。1900年のオーストラリアを舞台に、ハンギングロックへピクニックに出かけた寄宿学校の女生徒たちの失踪事件を皮切りに学校や地元社会で起こった余波を描いた作品です。失踪事件が起こした...
Joan Lindsayが1967年に発表した長編小説。日本では1975年に公開された映画が有名です。1900年のオーストラリアを舞台に、ハンギングロックへピクニックに出かけた寄宿学校の女生徒たちの失踪事件を皮切りに学校や地元社会で起こった余波を描いた作品です。失踪事件が起こした波紋が徐々に広がっていき、色々な場所で干渉していく様が巧みに描かれています。事件自体は謎のまま終わってしまい、ホラーや幻想文学っぽい感じなのですが、一方でハンギングロック周辺の自然を描いた描写は写実的で素晴らしいです。
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アップルヤード学院に通う少女たちが、ある日ハンギングロックへピクニックに出かける。のどかなピクニック日和だったが、巨礫の近くまで探検しに行った生徒3名と教師1名が行方不明になってしまう。彼らと行動を共にしていた女子生徒の一人もほとんど錯乱状態で、何が起きたか説明することができな...
アップルヤード学院に通う少女たちが、ある日ハンギングロックへピクニックに出かける。のどかなピクニック日和だったが、巨礫の近くまで探検しに行った生徒3名と教師1名が行方不明になってしまう。彼らと行動を共にしていた女子生徒の一人もほとんど錯乱状態で、何が起きたか説明することができない。この行方不明事件をきっかけに残された生徒たちの間にも不可解な現象が連続して起こり、退学希望者が増え、学院は失墜していく。 不気味な物語だった。現実のこととは思えないような描写があったり、読みながらどうも地に足がついていないような心地になったり。でも解説を読んだらそのわけがわかった。つまり著者はこの物語の構想を自身が見た夢から得ていたのだ。夢ね。それはもうなんでもありだわ。呪術廻戦の渋谷事変くらいなんでもありだわ。この物語は夢にしてはリアルすぎる。でも現実にしてはあまりにもふわふわしすぎている。あんまり好きな感じじゃなかったな。でもひとつ思うのは、映像で見たらまた全然感じ方が違うのだろうなということ。この学院に通う女子生徒たちはそのほとんどが「美少女」として描かれていて、幼く美しい少女が失踪したとなれば、またそれを映像で見せられれば、もう少し感情移入できたかもしれない。やっぱりあれね、文字から脳に情景を描き出す能力がわたしには著しく欠如している。少し前に読んだナオミ・オルダーマン『パワー』と同じ敗因。
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2018年の11月にブクログの本棚に「読みたい」として入れたんだけど、やっと読んだのでここに移動(^^ゞ 映画の方は、とにかく好き。 あの、カーっと照りつける太陽の下の妙な静謐さが堪らない。 ただ、あの映画って、映像がスゴすぎちゃって。 映像にばっかり気を取られちゃって、どうい...
2018年の11月にブクログの本棚に「読みたい」として入れたんだけど、やっと読んだのでここに移動(^^ゞ 映画の方は、とにかく好き。 あの、カーっと照りつける太陽の下の妙な静謐さが堪らない。 ただ、あの映画って、映像がスゴすぎちゃって。 映像にばっかり気を取られちゃって、どういう話だかよくわからないところがあるんだよね。 だから、原作が出たと知った時、ぜひ読みたいと思っていたんだけど…… うーん。 原作を読んでも、やっぱりよくわからない話だった(^^ゞ (そもそも、“よくわからない”ところが面白い話だもんねw) ていうか、読んでいる方は、いなくなったのが美少女たちであるがゆえに、その真相に、削除されたという「最終章」のような超自然や神話的な何かや、あるいは解説にもあるような、フロイト的な解釈を無意識に求めてしまうんじゃないのかなぁー。 だから、無意識に求めたことが真相として明かされないことにジレンマを感じる。 そのジレンマを、「よくわからない話」と表現するんじゃないだろうか? もっとも、削除された「最終章」がくっついていたら、「これって、何の話なの!?」ってなっちゃうんだろうけどさ(・・? 訳者はあとがきで、著者は1週間続けて見た夢を思い出しながらこれを書いた、みたいなことを書いていたけど、本当にそんな文章。 131ページの後半から、“マイケルとアルバートは馬に乗って、通りを走り続けた。あるところでは、ひとりの使用人が井戸水で体を洗っている。井戸のうしろには、洒落た造りの厩が建っている。マイケルは厩を芸術的と評し、アルバートは金のかかったゴミと評した。無精髭を生やした牛乳配達人が、荷車をゆっくり走らせている。「アイツはついていないんだ」とアルバートは言った。「先週、ミルクを水で薄めたのがばれて、ウッドエンドの役所で罰金を支払わされた」。メイドがひとり、格子で囲われたテラスの階段を箒で掃いている。ある屋敷の砂利を敷いた私道は……”と延々、馬に乗って走るマイケルとアルバートが見ている情景の描写が続くのだが、読んでいるとその光景が次から次へと頭にパーッと浮かんでくる。 ま、それは映画を見ていたからなのかもしれないが、それにしても、光景が浮かんでくるその感覚がものすごく心地がいい。 情景描写って、今はなにかとジャマ扱いされがちだけど(^^ゞ やっぱり、こんな風に描かれていると、その話の世界にストーンと入り込める。 そこが、またよかった。 一方で、89ページ。 “オーストラリアのブッシュでは、都会と変わらぬ速さで噂が広まる。日曜日の夕食事には、ハンギングロックから80キロ四にあるすべての家庭で、土曜日に起こった奇妙な行方不明事件が話題にのぼっていた。旺盛な好奇心というものは、どんなときでも人間に同じ効果を及ぼす。直接にせよまた聞きにせよ、たいした情報を持たない者たちこそが、声高に意見を述べ始めるのだ”と。 そういうのって、古今東西変わらないんだなぁーって思っちゃうことが書いてあったり。 そんな風に、一歩引いたスタンスで世間を見ている人が、こういう極めて主観的な小説を書いているのが面白い。 上記で、原作を読んでも、やっぱりよくわからない話だったと書いたが。 それでも、映画よりは話がクッキリしている。 というよりは、わかる部分はクッキリ描かれているのだが、わからない部分、つまり、失踪の真相は、たぶん映画よりも曖昧模糊と描かれているような気がする。 (もっとも、それは、削除されたという「最終章」に書かれていることだから当然なのだが) その「わからない部分」が曖昧模糊としている感じって、どこか恩田陸の小説と通じるものがあるような気がする。 ていうか、恩田陸はこの話、たぶん大好きだろうなーって思うんだけどなぁー(^^ゞ てことで、この話、ぜひ恩田陸にリメイクしてもらいたい。 もっとも、恩田陸がリメイクしたら、もっとワケわかんなくなっちゃったりして?w
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翻訳者さんが好きなので読んでみました。 話の全体に漂う薄暗さに、時代を感じます。 美しい少女たちの神隠しや、集団狂気の発生、繋がっていく不可解な事件の数々…最後謎は謎のまま終わるので、スッキリした読了とは言えませんがある種神秘的な恐怖や焦燥を味わいたい方には向いている本だと思いま...
翻訳者さんが好きなので読んでみました。 話の全体に漂う薄暗さに、時代を感じます。 美しい少女たちの神隠しや、集団狂気の発生、繋がっていく不可解な事件の数々…最後謎は謎のまま終わるので、スッキリした読了とは言えませんがある種神秘的な恐怖や焦燥を味わいたい方には向いている本だと思います。
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ピーター・ウィアー監督のオーストラリア映画 〝ピクニックatハンギング・ロック〟を観たのは数年前のことです。 DVDのパッケージに魅せられてジャケ買いしたのが切っ掛けでした。 映画の内容はよく覚えていませんが、 独特の色彩と耽美的な雰囲気が印象として残っています。 あとから知っ...
ピーター・ウィアー監督のオーストラリア映画 〝ピクニックatハンギング・ロック〟を観たのは数年前のことです。 DVDのパッケージに魅せられてジャケ買いしたのが切っ掛けでした。 映画の内容はよく覚えていませんが、 独特の色彩と耽美的な雰囲気が印象として残っています。 あとから知ったことですが、 名のある俳優が出演しているわけでもないのに、 この映画はオーストラリア映画協会賞、英国アカデミー賞など、 いくつか賞を受賞しており、 公開から50年近く過ぎたいまでも語り継がれ、 すっかりカルト映画の仲間入りをしているようです。 オーストラリアでの封切りは1975年、 日本公開は11年後の1986年だったようです。 そもそも日本で上映する予定はなかったのですが、 ピーター・ウィアー監督がハリウッドにわたり、 その後有名になったために、 かつての出世作が掘り起こされたようです。 本書は映画の原作となった小説です。 舞台はオーストラリアの寄宿制女学校。 1900年2月24日のバレンタインデーに、 ピクニックを兼ねた課外活動のため、 彼女らはハンギングロックを訪れます。 ヴィクトリア調の白いドレスをまとった少女たちにとって、 その日は厳しい規則から解放され、 ほんの束の間自由を味わえる日となるはずでした。 でも、そこで事件が起こります。 3人の少女と教師ひとりが行方不明になってしまったのです。 少女のうち一人は数週間後奇跡的に生きて発見されますが、 記憶をなくしていてなにがあったのか覚えていません。 後の不明者は大掛かりな捜査を行ったにもかかわらず、 発見されないまま月日が流れていきます。 事件は学園とその周囲の人々の人生に、 少なからず影響を及ぼしていきます。 失踪には様々な謎が残されますが、 謎は謎のままお話は終わります。 実はこの小説は出版する際、 最終章を割愛したようです。 本書の訳者あとがきでそのことに触れられていますが、 謎を謎として残す終わり方が成功したようですね。 この物語が実際にあった事件をもとにしているかどうかは、 いまも議論されているようです。 映画のクレジットに この作品はフィクションだと明記されているにもかかわらずです。 謎は深まるばかり。 それだけすぐれた作品だという証ですネ。 べそかきアルルカンの詩的日常 http://blog.goo.ne.jp/b-arlequin/ べそかきアルルカンの“スケッチブックを小脇に抱え” http://blog.goo.ne.jp/besokaki-a べそかきアルルカンの“銀幕の向こうがわ” http://booklog.jp/users/besokaki-arlequin2
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我々は夢と同じもので織り成されているという。では本作はその夢に織り込まれた者、織り込まれなかったものたちの物語である。 狂気の伝染、悲劇への連鎖反応が自然発生し、生身の人間を侵食していく様が恐ろしい。怪奇的な魅力を孕みながらも、耽美な雰囲気があふれる文章に歪みや淀みは一切感じられ...
我々は夢と同じもので織り成されているという。では本作はその夢に織り込まれた者、織り込まれなかったものたちの物語である。 狂気の伝染、悲劇への連鎖反応が自然発生し、生身の人間を侵食していく様が恐ろしい。怪奇的な魅力を孕みながらも、耽美な雰囲気があふれる文章に歪みや淀みは一切感じられない。 だが、何かがおかしい。丁寧に織り込まれた物語を締めくくる最後の一文にピリオドが欠けているような気持ち悪さがあるのだ。 そして、砂時計の中にこぼれ落ちたひとつのピリオドを探すことはもう不可能で、決して打たれることはないのだろう。
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ハンギングロックにピクニックに出かけた3人の女学生と1人の教師が行方不明になった。その日を境に、学園とその周辺が少しずつおかしくなっていく、という話。1967年の小説だけど翻訳版の発売は去年(2018年)なので、文体が古くなく読みやすい。なにか超自然的なものの存在を匂わせるが、ハ...
ハンギングロックにピクニックに出かけた3人の女学生と1人の教師が行方不明になった。その日を境に、学園とその周辺が少しずつおかしくなっていく、という話。1967年の小説だけど翻訳版の発売は去年(2018年)なので、文体が古くなく読みやすい。なにか超自然的なものの存在を匂わせるが、ハッキリとはさせてくれない。曖昧なところはあえて残して、今まで当たり前にあったものが突然なくなることで歯車がどんどん狂っていく様を描くのは全然アリなのだけど、正直もっとぶっ飛んだ話だと思っていたので、意外と読後感は不通。
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1975年の同名映画の原作。映画はカルト的人気だったらしいが全く知らなかった。 ピクニックに行って姿を消してしまった少女たちと引率教師にいったい何が起こったのか。この失踪事件によって学院の生活がゆるやかに崩壊してゆく… 1900年のオーストラリアの寄宿制女学院という舞台、雄大で不...
1975年の同名映画の原作。映画はカルト的人気だったらしいが全く知らなかった。 ピクニックに行って姿を消してしまった少女たちと引率教師にいったい何が起こったのか。この失踪事件によって学院の生活がゆるやかに崩壊してゆく… 1900年のオーストラリアの寄宿制女学院という舞台、雄大で不気味なハンギングロック、不可解な事件が相まって幻想的な絵画のような小説である。”もし〜だったら、〜だったろうに”というような神の視点がいい感じにはまっている。 非常にもやもやする話だが、たいへん印象的で忘れがたい読書体験だった。 「幻の最終章」はたしかに幻の方がいいかも。
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