誰も農業を知らない の商品レビュー
実際に農業に携わったことのある有識者などおらず、農業の幅が広すぎるために農業を営む筆者ですら農業全体のことなどわからないという、ちゃぶ台返しから入る本書は、巷間言われる俗説をほぼ全て否定する。 いわく、農薬、遺伝子組換えは危険、農地は集約して大規模化すべし、農水省は無能、農家は...
実際に農業に携わったことのある有識者などおらず、農業の幅が広すぎるために農業を営む筆者ですら農業全体のことなどわからないという、ちゃぶ台返しから入る本書は、巷間言われる俗説をほぼ全て否定する。 いわく、農薬、遺伝子組換えは危険、農地は集約して大規模化すべし、農水省は無能、農家はビジネス感覚がない等々。 日本列島の土壌はむしろ農業向きでその気になれば4億人程度を養うコメの生産が可能だという指摘には勇気づけられる。 農業の6次産業化などは農業経済学者の東畑精一がほぼ一世紀前(1936年!)に唱えた論説の劣化版に過ぎずその精神は農協で実現された、作物価格の下落に最も弱いのは大規模化した農家、農協に必要なのは選択と集中ではなく、全国津々浦々に広がる拠点と農家との繫がりを活かした多角化など、目からウロコのことばかり。 巷で成功と言われるいくつかの事例の功罪についても具体的な根拠を持って触れられていて、説得力がある。 加えて移民問題、再生可能エネルギーによる環境破壊、地方創生の逆説など、5年以上前の本とは思えない先見性もあり、視野の広さとはこういうことかと思わされる。
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著者自身がプロ農家なので、現場目線で語られる内容には大きな説得力がある。炎上こわくて言いにくいこともズバッと切ってくれていて、農家目線で痛快。
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どストレートな書きっぷりなんですが、内容はおおむね同意。 『「農業経済学・経営学」を農学部から追い出せ』という記述があって笑えました。その通り! https://seisenudoku.seesaa.net/article/492980692.html
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これは面白いビジネス書でした。 愉快痛快。 減農薬の話や、一定条件で毒を生み出してしまうセロリやジャガイモの話はとても印象深い。 農業という言葉が指す範囲の広さも理解できたし、 よく「アメリカなら」とも聞くがその具体的な事例もあった。 とても網羅的でした。
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元シンクタンク系出身者が農業に転職し、農業政策や農薬や、はたまた農家そのものに対しても、ぶっちゃけた本。 面白かった。裏表紙に目から鱗がボロボロ落ちる、とあるように個人的には、とても感じるものがありました。 ・コメ大規模化を進める=農村の過疎化が進む(効率が良くなるとヒトが不要になる) ・「農業について語りたい人」がいうことは、大抵がまとはずれ。特に「農業にビジネス感覚を」。(ほとんどが兼業であり投入できる「時間」が、そもそもない。平日は別に働いていたら、そりゃ無理だ) などなど 章としての「農林水産省は本当に無能か」「農薬を否定する人は農業の適性がない」は読む価値ありですね。 特に、無農薬農家には、①農薬は危険だ!②高収益の手段だ!③栽培スキルを高めるのだ!④生き方・ライフスタイルだ!の4分類されるとのこと。このうち①が、害悪になりやすい。害虫を周囲にまき散らすことになり迷惑をかけ、栽培も難しいので長続きしない。なるほど。 また、化学合成の農薬以外の自然農薬にニコチンがありますが、いわずしれたタバコに含まれる毒物で、LD50を比較すると、50年以上も使われている「普通農薬」に分類されるスミチオン(有機リン・有機硫黄系 フェニトロチオン)は、5倍から40倍程度は安全とされている。農薬の食に対する安全性を考えるのであれば ・ヒト及び環境に対する毒性の高低 ・使用量 ・分解速度(残留がどの程度か) この3点を踏まえて、農薬の使用可否を決めるべき、というのは、いやー科学的な態度ですね。素晴らしい。 まあ、科学的に正しく誠実に論じようとすると、説明が長くなるので、伝わりにくく、センセーショナルな”切り抜き”で誘導されてしまう世の中なので、著者のような活動が知られるといいなぁと思いました。 他に、少子高齢化に関して、経済が縮小するなどして、当面は苦しくなったとしても出生率を向上させることに力を注ぐべき、という記載の後に 「経済的に敗戦を喫してもいいではありませんか。少子化時代になってすら子供を大切にしない国家の経済など、延命するだけ害です」 という振り切ったセリフが言えてしまう著者の気風の良さに感心して閉じました。
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農業の課題について農家の方が書いた本。農業は地域によって気候や土壌など条件が異なるから一般的に一括りにする提案や話はできないというのは、たしかにそうだし、農家や企業、行政がそれぞれ努力して地域ごとに課題解決する必要があると思った。一方で、ところどころ納得できない点もあったので、農...
農業の課題について農家の方が書いた本。農業は地域によって気候や土壌など条件が異なるから一般的に一括りにする提案や話はできないというのは、たしかにそうだし、農家や企業、行政がそれぞれ努力して地域ごとに課題解決する必要があると思った。一方で、ところどころ納得できない点もあったので、農業について議論すると様々な意見の違いがあり、難しい課題だと感じた。農業は他の産業と同一視して、資本主義の枠組みの中だけで考えると、うまくいかないし、そこは文化や環境、教育などは幅広い他の効果を考慮して、支えていくことが大切さだろう。
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日本の農業はヤバい、というのは聞いていたが、具体的に何がヤバいのかはわかっていなかった。 この本を読んで何がヤバくてどう対処するべきなのかが理解できた。 ・今の農薬は安全 ・遺伝子組み換え作物の普及 日本の遺伝子組み換え危険思想はいかがなものかと本書を読んで思った。
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中学受験以来農業政策について考える機会が全くなかったこと、そして巷で耳にする農業論があまりに単純化されすぎているという著者の指摘に共感したため本書を手に取った。 著者の経験をもとに書かれており、政策の視点、農家の視点、消費者の視点をうまく使い分けて記述されている部分には説得力があ...
中学受験以来農業政策について考える機会が全くなかったこと、そして巷で耳にする農業論があまりに単純化されすぎているという著者の指摘に共感したため本書を手に取った。 著者の経験をもとに書かれており、政策の視点、農家の視点、消費者の視点をうまく使い分けて記述されている部分には説得力があり理解が深まった。一方で、低級な議論に対する反駁にページを割きすぎている印象もあり、おそらく個人的な不満も込められているのであろうが、読者からすると冗長に感じられた。仮想敵への反駁に多くのページを割き、最終章でようやく提言のようなものに帰着するが、それらは内容としても議論としても質の高いものではなかった。各項目の擁護にもう少し重点を置けばそれだけで随分マシになっていただろう。コンセプトには深く共感できるし貴重なバックグラウンドを持っているだけに非常に残念な印象。
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川崎磯信さんの話は興味深かった。富山県民。 フィトンチッドは多くの虫に取って毒であること 大根おろしやワサビ等が生成するアリルイソチオシアネートや唐辛子のカプサイシンも毒であること そういった植物が作り出す毒を人間は楽しんできたという事。 農薬は昔のような危険なものではないという事。 興味深い内容だった。 何かを読んだり聞いたりして鵜吞みにして自分で勉強を行わない者は農業以外も向いていないと思うよ。
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ファーマータナカの本棚。 一農業者だったので、日本や世界の農業が気にかかる。 メディアを大手を振ってまかり通る、知識も経験もない論者達による定番の①大規模農業論②無農薬農業論③農業工場論④六次産業論⑤保護主義論を一刀両断、現場で感じていたことも多く説得力あり。 又車社会が既にそうなりつつあるように、旧態依然とした農業界も、あと20年で激変するとの筆者の予想が興味深い。 各項目につき、気になった点をアットランダムに記しておく。 ①大規模農業論 日本農家は専業3割、アメリカ2割弱 適正規模を超えると所得増が困難になる アメリカでも農地分散顕著で、かつ大型機械で効率はよくない 大規模程価格下落で赤字幅拡大破産する ②無農薬農業論 無農薬の対応は、目視でとる・農薬以外・何もしない(益虫にまかせる) 農薬の手間はかからない(水田用除草剤では袋を投げ入れるだけ) 農薬代は60~3000円/10a ③農業工場論 JFEライフ、カゴメ/黒字までに10年、ハイポニカ等成功例もある オランダが見本とされるが、価格低下・新興国台頭・代替作物不透明の問題あり ④六次産業論 1品で大きな利益を叩き出す商品開発が必要 ⑤保護主義論 僅かな負担で、耕作放棄地の拡大が食い止められる
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