白い孤影 ヨコハマメリー の商品レビュー
著者曰く「バスに乗り遅れた人」。ギリギリのところで本人や近親は亡くなり直接取材も、本人が最期を過ごした場所も取り壊され……けれど、長い時間をかけて周辺を丁寧に掘り下げ、核心に迫らなかったこその良さが溢れた本のように感じた。 開国の地であり、長らく米軍基地であった横浜の「名物」高...
著者曰く「バスに乗り遅れた人」。ギリギリのところで本人や近親は亡くなり直接取材も、本人が最期を過ごした場所も取り壊され……けれど、長い時間をかけて周辺を丁寧に掘り下げ、核心に迫らなかったこその良さが溢れた本のように感じた。 開国の地であり、長らく米軍基地であった横浜の「名物」高齢の白塗り街娼・通称「ヨコハマメリー」を通じて丁寧に描かれるのは、横浜の歴史であり、 この本の以前に執筆された『消えた横浜娼婦たち』の後半「ヨコハマメリー」部分に大きく加筆、再構成した一冊で内容としては圧倒的にこちらが濃い。ただし本書ではさらっとしか触れられていない「メリケンお浜」の生涯など『消えた〜』にしかない面白い部分もあるので興味のある方は両方読んでみると良いかと。
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メリーさんを見掛けたことがある。横浜伊勢崎町だったか? 当時はまだ若く、世の中の暗い部分を忌まわしく思っていた時分だったためか、彼女を正視する事が出来なかったのだが、いや、だが、ではなく、だからこそ自分の中に彼女の姿が瞬間的に刻みつけられた。 結局この本においてメリーさんとは...
メリーさんを見掛けたことがある。横浜伊勢崎町だったか? 当時はまだ若く、世の中の暗い部分を忌まわしく思っていた時分だったためか、彼女を正視する事が出来なかったのだが、いや、だが、ではなく、だからこそ自分の中に彼女の姿が瞬間的に刻みつけられた。 結局この本においてメリーさんとは誰で、メリーさんをメリーさんとならしめている理由については、状況証拠からの推測にしか過ぎない。 メリーさんは既に亡くなっているので、もう確かめる術はないのだが、日本の地方都市においても外国名の職業婦人の話が残っていることからも、当時の日本において必ずしも全く特殊とは言い切れない生き方であったのだろうか…たとえ同じ見た目・行為であっても、その主体者の年齢によって周りの見た目や評価が変わってくる訳だが、そこに気付く事なく、昔の成功体験から抜け出せずにいただけなのか…などなど、疑問は尽きないのだが、未だに33年前の蒸し暑い夏の日を鮮明に思い出す……
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白塗りの老女ヨコハマメリーさんが街角に立っているといううわさは聞いたことがあった。 彼女を題材とした映画が再上演するということで、本を読んでみようと思い、なぜか映画監督ではないほうの方の本を手に取る。 ヨコハマメリーはなぜ伝説となったのだろうか。 この本は実際のヨコ...
白塗りの老女ヨコハマメリーさんが街角に立っているといううわさは聞いたことがあった。 彼女を題材とした映画が再上演するということで、本を読んでみようと思い、なぜか映画監督ではないほうの方の本を手に取る。 ヨコハマメリーはなぜ伝説となったのだろうか。 この本は実際のヨコハマメリーがどういう人であったかというより、ヨコハマメリーについて語る人たちが、彼女に何を投影したかを見つめることに重きを置いているように思う。 その人にとっては嘘でも何でもないけれど、語り手の何かを刺激し、ついそこに加わってしまうもの……という著者の考察がとても興味深く面白い。 ヨコハマメリーに統合されたたくさんの女性たちのエピソードは、伝説を作り上げていく過程を追うようである。
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メリーさんのことを知ったのはやはりあのドキュメンタリー映画をとおしてだろうか。しかもその映画を見てはいないけれど、各方面で話題になったことで知った。以来、それとなくメリーさんという存在には興味があったんだけど、この本はそういう、ちょっと野次馬的な見方を超えてもう少し、メリーさんを...
メリーさんのことを知ったのはやはりあのドキュメンタリー映画をとおしてだろうか。しかもその映画を見てはいないけれど、各方面で話題になったことで知った。以来、それとなくメリーさんという存在には興味があったんだけど、この本はそういう、ちょっと野次馬的な見方を超えてもう少し、メリーさんを、メリーさんを伝説化させた社会を分析してみようとした本だと思う。分析は完了したわけじゃないけど、著者がいろいろ考えを巡らせながらメリーさんに近づいていった感じはよくわかる。終盤の以下の箇所にも同感。 「確かにメリーさんは健気に生きた。しかしそれはかわいそうな人生でも惨めな人生でもなく、自由を求めてわがままに生きた結果だと思う。故郷での快適な暮らしを剝奪された彼女には、都会へ出るしか道がなかった。そこで彼女が選んだのは、自立して生きる人生だった。一晩中GMビルに張り付いて取材した末藤さんが見抜いたように、彼女はメリーさんでいることを楽しんでいたはずである。」(p.288) 実はメリーさんが美しい伝説になったのは最近のこと、それこそ映画あたりが契機になってのもので、それ以前も話題になったりメディアに取り上げられたりもしていたけど、いわゆるイロモノ扱いだったりもした。パンパンだったとされ蔑まれもしていた。それが伝説化したのは、現代日本のきゅうくつな世のなかにあって、メリーさんの大変そうだけど何にも縛られない自由で高潔で孤高な生き方にあこがれる人たちがいるからだろう。一方で、そういう自由に生きている人は結局ホームレスのようになって因果応報を味わっていることに満足する人たちもいるのかも。 メリーさんがどういう人生を歩んだのか、どう思いながら横浜をはじめ各地で生きてきたのか、それは結局は謎。メリーさん自身もそんなに知られたいと思っていたわけじゃないようだけど、受け手の謎にしておきたい気持ちがそうさせていることもある気がする。
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子供の頃、何度も見かけたことがあります 当然ながら当時は街娼という言葉もパンパンという言葉も知りませんでした 後に言葉の意味がわかった時にもあんなに目立つ格好で昼間からお客が付くとも思えませんでした この本はメリーさんにスポットを当てながら横浜の歴史を語っています 何故メリーさん...
子供の頃、何度も見かけたことがあります 当然ながら当時は街娼という言葉もパンパンという言葉も知りませんでした 後に言葉の意味がわかった時にもあんなに目立つ格好で昼間からお客が付くとも思えませんでした この本はメリーさんにスポットを当てながら横浜の歴史を語っています 何故メリーさんは街に立ち続けたのか、本当にメリーさんは帰国した恋人の将校を待ち続けたのか、横浜から消えた後はどこに行ったのか、そして彼女の人生は幸せだったのか、そして何故彼女だけ伝説になったのか 様々な疑問を抱えたまま消えた彼女を追います 解かれた謎、解かれぬまま残った謎が混沌と並びますが、実在したメリーさんを残す記録としての一冊です 私もこの目で何度も目撃した生き証人として今でも気になり続けるメリーさんを確認したかったので拝読しました
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
ある人について伝える時、その人の実人生について語ること、および周囲の目が彼女に託したイメージとの二種類のアプローチがある、と著者は言う。そしてこの本では両方から読み解くことで、「メリーさん」の存在を改めて遺すことが意図されたのだろうと思う。 20年に及んだ取材はそれなりに評価できるとは思うけれど、結局作者が結論づけている「人間関係のトラブルが全ての始まり」という部分は「伝聞証拠」のままで不明確。 最初の結婚で何がトラブルだったのか。アメリカ人との結婚はほんとうだったのか(戸籍が取れたのだからわかりそうなものなのに)。どうも「白塗りメリー」さんにこだわるあまり、肝心の○○緑恵さんの辿った生涯というものは結局曖昧なままだ。 もちろん「横浜メリー」が結局は周囲につくり出されてきただけのものであるとアピールしたいのであれば、それはしょうがないのかもしれないけれど。「パンパンになった女性たちの大きな動機は自由と反抗」などという描写には、女性としてとても抵抗を感じるし(女性のライターだったら同じ情報源から、果たしてこんな発想を持つだろうか)、さらに「ある種のアウトサイダー・アーチスト」という結論には、微妙な安直さも感じてしまった。
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映画になったり、本が出たり、お芝居になったり、なんだか伝説化されてきたような気がするメリーさん。本書に登場する、実際に彼女と接した人たちの言葉はリアルなものだと思うし、私のまわりにもメリーさんに対してネガティブな感情を持つ人がいたことを思い出した。
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結局本当のところは分からずだけど、 なんだろう 気品があってロマンがある ような気がして 気になる 真相も分かんないからますますミステリアスで 気になる またヨコハマメリー見たくなった
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私は1人の男性のためにずっと待ち続けられないと思う、、、。それほど愛せる人に巡り逢ったメリーさんは幸せだったのかなぁ。関わった人々への心配りなど気高い所と、ままならない所が人間味に溢れていて素敵だと思った。 戦後の娼婦の生々しい歴史がわかりやすい。 メリーさんが美化されている部...
私は1人の男性のためにずっと待ち続けられないと思う、、、。それほど愛せる人に巡り逢ったメリーさんは幸せだったのかなぁ。関わった人々への心配りなど気高い所と、ままならない所が人間味に溢れていて素敵だと思った。 戦後の娼婦の生々しい歴史がわかりやすい。 メリーさんが美化されている部分が他の映画ではあっても、この本では彼女を過度に持ち上げることはせず現実的な目線のように感じた。
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いろいろ溜息をつきながら読んだ。横浜メリー神話の解体。著者の深掘り具合に感嘆。トークイベント前に読了できれば良かったのになぁ。残念。
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