作家との遭遇 の商品レビュー
22名の作家についての「作家論」集。多くは日本の作家についてであるが、ロスワイラー、トルーマン・カポーティ、ゲルダの3人の外国人作家についての作家論もある。 また、沢木耕太郎が、横浜国立大学卒業時に書いた、カミュについての卒論も収められている。カミュに関する卒論の書き方について、...
22名の作家についての「作家論」集。多くは日本の作家についてであるが、ロスワイラー、トルーマン・カポーティ、ゲルダの3人の外国人作家についての作家論もある。 また、沢木耕太郎が、横浜国立大学卒業時に書いた、カミュについての卒論も収められている。カミュに関する卒論の書き方について、沢木耕太郎は、次のように述べている。「そこから本格的にカミュを読みはじめたのだ。手に入るだけのものをすべて集め、徹底的に読み込んでいく。そして、ひとつのイメージを感受したところで、曖昧なまま揺れ動いているものを言語化していく。それは私にとって初めてのスリリングな経験だった。」 本書に収められている「作家論」のいくつかは、その作家の作品の文庫本の解説として書かれたものであるようだ。「あとがき」の中で、文庫の解説を書くとき、卒論でカミュについて書いたときと同じような昂揚感を感じた、と沢木耕太郎は書いている。要するに、大学の卒論を、その後、プロの作家として書くことになるものと同じ方法論で書いていたということである。 本書に収められているカミュについての沢木耕太郎の卒論は、決して面白いものではないが、学生気分のような甘さを感じない。書くということについて、その「方法論」とは別に、沢木耕太郎が既にこの時点で、一種の厳しさ、「プロ意識・倫理」を持っていたのだということを感じることが出来る。
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凄い本だった。購入したのは発売数ヶ月後、約1年半ほど前。数十頁読んでそのままになっていた。まず何と言っても、沢木さんの卒論であるアルベールカミュの世界だが、あまりに深く洞察、分析されており、とても大学4年生が書いた文章とは思えなかった。というより、私の現年齢はその倍以上だが、どの...
凄い本だった。購入したのは発売数ヶ月後、約1年半ほど前。数十頁読んでそのままになっていた。まず何と言っても、沢木さんの卒論であるアルベールカミュの世界だが、あまりに深く洞察、分析されており、とても大学4年生が書いた文章とは思えなかった。というより、私の現年齢はその倍以上だが、どのような作家に対しても、このような洞察はできない。また、その他22人の作家についても、その著作を読むだけでも莫大な時間がかかる。自らの作品を数多く完成させ、その上で他の作家の作品を読み尽くし洞察する。超人としか言いようがない。
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現在の我々からすると”大御所”と言われる 作家に対して、若き沢木氏がその作家の 作品や、作家本人の印象に対して率直な 思いを書き綴ったエッセイです。 「その作家に対してそこまで言えるの?」 という感想を抱いてしまいますが、そこは 沢木氏の洞察力が優っているのでしょう。 何も仲違...
現在の我々からすると”大御所”と言われる 作家に対して、若き沢木氏がその作家の 作品や、作家本人の印象に対して率直な 思いを書き綴ったエッセイです。 「その作家に対してそこまで言えるの?」 という感想を抱いてしまいますが、そこは 沢木氏の洞察力が優っているのでしょう。 何も仲違いは起こっていないようです。 巻末の沢木氏の卒論も圧巻です。 「カミュ」に対する考察です。 ノーベル賞作家に対しても一家言持って いるのであれば、日本の作家への考察は たやすいものなのでしょうか? 時に大胆に時に繊細に、考察対象に対して 語る姿に、沢木耕太郎氏の底知れぬ、人間 観察力、文学考察力に触れる一冊です。
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沢木耕太郎の方法。問題や気がかりを見つける。たくさんの資料や作品を読みつくす。原因や理由の形が見えてくる。そこから書き始める。読み手は探偵気分だが、書き手の努力は生半可じゃない。 「生きていること」の疑問を解きたいばかりにヨーロッパの果てまで旅に出ることで「答」を見つけようと...
沢木耕太郎の方法。問題や気がかりを見つける。たくさんの資料や作品を読みつくす。原因や理由の形が見えてくる。そこから書き始める。読み手は探偵気分だが、書き手の努力は生半可じゃない。 「生きていること」の疑問を解きたいばかりにヨーロッパの果てまで旅に出ることで「答」を見つけようとした、それが彼のドキュメンタリーの方法だと思うが、出会った作家を追いかける眼差しに、その方法が生きている。文庫になった小説の、ただの解説だと、なめてかかるのは失礼かもしれない。 書いている最中に、その不慮の死に遭遇した向田邦子論は印象的だ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
銀河を渡るの姉妹編。全作家論。 著者の分析力、思考力、洞察力、文章力の賜物。 ”田辺聖子””向田邦子””檀一雄””高峰秀子”が特に印象に残った。
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秋が深まった頃「深夜特急」を読み終えた。箱根の宿で。読後は、いいなあ若いって、旅に出たい、と感慨に耽っていたけれど、ふと頭に浮かんだ猿岩石のユーラシア大陸ヒッチハイクの旅が、頭から離れなくなってしまって、3時間位のダイジェスト版をYouTubeで見てしまった。(この企画が深夜特急...
秋が深まった頃「深夜特急」を読み終えた。箱根の宿で。読後は、いいなあ若いって、旅に出たい、と感慨に耽っていたけれど、ふと頭に浮かんだ猿岩石のユーラシア大陸ヒッチハイクの旅が、頭から離れなくなってしまって、3時間位のダイジェスト版をYouTubeで見てしまった。(この企画が深夜特急に感化されたディレクターの発案というのは有名な話)白状します。公式チャンネルではありません。 まさに深夜まで見ていたので寝不足になり、旅行にきて疲れるというハマりたくないパターンにハマる。翌日はダル重の体でポーラ美術館へ。しばらくぶりに行ったら、常設展にフジタコーナーができていた。そういえばここは、子どもを描いたタイル絵をたくさん所蔵していたなぁ、と過去の企画展を思い出しながら、ずらりと並ぶ働く子供たちの絵を見て、なんの職業だろうと謎を解くように、敢えてキャプションを見ずに鑑賞していた。 一枚の絵が全くわからなった。 男の子が巨大なハンドルを回して、なにかを絞り出しているような絵だった。 なんの職業だろうか。 洗濯屋さん? 頭の体操をする気は端からないので、早々に降参してキャプションを見る。答えは印刷工。 ああ、なるほど。よく見れば足元に紙くずが散らばってらぁ。 それが表紙の絵。 不思議な縁を感じて本のプレゼント企画に応募した。当たるのは一人だからと期待せずに待っていたら当たってしまった。 当たることを期待していた沢木ファンの方々、大変申し訳ありません! 自分が読んだことのある沢木作品は翻訳を含めたキャパ関連の5冊と、深夜特急と、その他に3,4冊くらい。沢木ファンとはとても言えない読書歴で、重ね重ね申し訳なく思いながら書評を書いている。なので、お察しの通り、はぐらかす意図が丸見えのこんな書き出し。 さて、本題。 のっけから井上ひさしが出てくる。そして詐欺師呼ばわり。うん、確かに。井上ひさしは詐欺師だ。大嘘つきだ。激しく同意。とても異を唱える気になんてならない。なんで沢木さんは井上氏を詐欺師と呼ぶのか。これがよくわからない。でも言われてみれば、確かに、彼の大作家は詐欺師としか形容しようがない流暢な言葉で多くの作品を紡ぎあげた。苦心惨憺して生み出された言葉とは読み手にはとても思えない。 作家にとって詐欺師、大ほら吹き、と言われるほどの賛辞はない。嘘つきは泥棒の始まりではない。嘘つきは作家の嗜みなのだ。 著者はこのような作家論を書くにあたって、まずその作家の著作を限りなく全部読むようだ。全集があれば、それをドンッ!と目の前に積んで、ひたすら読み込むという途方もないことをやる。中途半端なことは絶対に書かないし作家へのリスペクトがすごい。とても真摯だ。 時には会ったことすらない作家についても評論する。でもこの方法は、会う会わないはあまり関係ない。独断も多いと思う。いや、ほぼ独断か。 読者としてはとても面白いけど、評論された作家はどう思ったのだろうか。著者との対談があったらぜひ読んでみたい。 塩野七生、吉村昭、カポーティ、ゲルダ・タロー、小林秀雄の評論は、自分が読んだことのある本で話が進むのでわかりやすかった。 時代的には1980年代に書かれたものが多く、自分より上の世代の人がはまったであろう作家が多いので、面白いから読みたいと思っても今も手に入るものなのかは若干不安。でもそんな本を探してみるという楽しみも増えた。 最後のカミュに関する評論はよくわからなかった。著者が22歳のときに書いた卒論らしい。本の帯にはファン必読との惹句がある。どこをどう読んでも文学部の卒論。これを経済学部の卒論として良しとした、教授の大らかさにはあきれるしかない。しかし一学生の才能を信じた目は賛嘆したい。 表紙に藤田嗣治の印刷工の絵を選んだ理由については、こんないたいけな少年が、自分の原稿が遅れたばかりに、根を詰めて輪転機を回さなくちゃいけないことになったら、かわいそう。という自戒を込めたそうな
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