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ガザに地下鉄が走る日 の商品レビュー

4.9

16件のお客様レビュー

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2024/09/01

2023年10月から始まったハマースとイスラエルの戦争から、もうすぐ1年が経とうとしている。「戦争」とは書いたものの、それは本当に、国と国が対等に争う戦争なのかどうか。 本書は2018年発行だが、少なくとも本書においてイスラエルとパレスチナの関係は対等ではない。イスラエル軍のジ...

2023年10月から始まったハマースとイスラエルの戦争から、もうすぐ1年が経とうとしている。「戦争」とは書いたものの、それは本当に、国と国が対等に争う戦争なのかどうか。 本書は2018年発行だが、少なくとも本書においてイスラエルとパレスチナの関係は対等ではない。イスラエル軍のジャーゴンで、数年おきに繰り返されるパレスチナへの破壊や殺戮は「芝刈り」と呼ばれているらしい。これだけでもなかなか衝撃的で暗澹たる気持ちになる表現である。 本書内で、ヨハン・ガルトゥングの定義を引用される形で、暴力を3つの形に分けている。戦争などの直接的暴力、貧困や差別など社会的な構造から生み出される間接的暴力、そしてそれらを正当化あるいは維持するための思想や態度などの文化的暴力。 パレスチナへの暴力はどれにあたるのか。すべてである。ガザが封鎖されたのは2007年からで、散発的に攻撃は繰り返されている。そして、国際社会(特にアメリカだが)は、それを正当化する。 その暴力のすべてを、本書は文学的に記している。文学的に、というと安っぽくて批判的に聞こえるかもしれないが、このナラティブな文体が内容を伝えるには最も合っているように思う。論文のようなむずかしさはない。おそらくは、そのようなむずかしさで読者を限定しないように、読みやすさを優先して、なるべくひとびとに届きやすい文体を意識的に選択したのではないかと思う。そんなリーダビリティを優先するまでもなく、あまりにも届きやすすぎる悲惨さではあるが。

Posted byブクログ

2024/07/09

一度読みかけて知らない単語が多すぎて断念したが、『ガザとは何か』を読んだ後、最初からすらすらと読めてしまった。 一気にとてつもない量の絶望と希望を受け取ってしまい、パンクしそう… 滔々と、パレスチナの人々の終わらない悲しみとわずかな希望を伝えられた。とても伝わった。 こんな状態の...

一度読みかけて知らない単語が多すぎて断念したが、『ガザとは何か』を読んだ後、最初からすらすらと読めてしまった。 一気にとてつもない量の絶望と希望を受け取ってしまい、パンクしそう… 滔々と、パレスチナの人々の終わらない悲しみとわずかな希望を伝えられた。とても伝わった。 こんな状態の国で、祖国を取り戻すために希望を持って生きられる人の強さはとてつもないなと思ってしまう。 日本はやはり大国であり、パレスチナは距離もあるため、意識せずとも生きていけてしまうと思う。ただ、やはりこの問題を皆が理解し、いろんな立場から声をあげる人が増えることはまだまだ可能なのではないかと思った。 自分も誤解していた部分が多いので、せめて周りの人には少しずつでも共有していきたい。 最近の日本人は郷土愛のようなものが薄れがちというようなことが『離れていても家族』にも書かれていたが、自分で生きる場所を選べるという大前提があった上でだよなぁと… 贅沢ってなんだろうと鑑みる。

Posted byブクログ

2024/06/13

怒りと困惑と悔しさで脳がバグりそう。これは読み切るのにかなりのエネルギーを要した。自分みたいな軟弱者には、途中でライトな本を挟まないと到底読み切ることができなかった。 ここに書かれていることは、パレスチナ人が国を追放されて以来受けてきた受難の歴史と現実である。(レバノン、ヨルダ...

怒りと困惑と悔しさで脳がバグりそう。これは読み切るのにかなりのエネルギーを要した。自分みたいな軟弱者には、途中でライトな本を挟まないと到底読み切ることができなかった。 ここに書かれていることは、パレスチナ人が国を追放されて以来受けてきた受難の歴史と現実である。(レバノン、ヨルダン川西岸地区、そしてガザ) 文字を追うごとに心が抉られ、セメントについた足跡みたいに深く食い込んだ。 しかしもっと情けないのは、ここまで感情を掻き乱して漸く関心を向けるようになった自分だ。日々のニュースでショックを受けていなかったわけではないけど、ショック以降の進展がなかったから。 3週間前に公開された映画『関心領域』を先日鑑賞した。(あらすじは敢えて割愛) 主人公と一家が大切にするものー夢にまで見た生活や幸せにピントを合わせているのが特徴的だったが、これは今を生きる我々にも当てはまる。(当てはまっているが故に、画越しに突きつけられているように思えた) 一番関心を向けて然るべき、パレスチナの人々に対する無関心…。 「ミサイルや白燐弾で殺す代わりに、私たちは、ガザを関心の埒外に打ち棄てることで、日々、殺しているのではないか。[中略]私には無関心による他者の人間性の否定のほうが、より罪深いものに思えてならない」 著者も時としてこの「無関心」に触れている。本書のテーマの一つであることは間違いない。 しかし終わりの見えない疲弊した日々の中、ガザに住まう人々の間ですら他者への無関心が広がっているという。絶望から生じる暴力・ドラッグの蔓延・相次ぐ自殺者…。 ナクバ(1948年にパレスチナでイスラエルが建国される前後、70万余名ものパレスチナ人が国を追われ、難民化した出来事のこと)から70年(刊行時、今年で76年)、イスラエルは人々から人間性をも奪おうとしている。難民から、国連やNGO団体の助けなしには生活できない物乞い、果ては人間ならざる者にまで貶めようというのか。 戦争犯罪(イスラエルは軍事産業が盛んで、ガザは新兵器開発のための実験場にされている節がある)の片棒を担ぐアメリカもアメリカだ。このままだと、米映画『シンドラーのリスト』など見られたもんじゃなくなるのでは?冗談抜きで。 「地獄とは人が苦しんでいる場所のことではない。人の苦しみを誰も見ようとしない場所のことだ」 著者自身、1980年代・2000年代から2010年代と難民キャンプを訪ね歩かれてきた。淡々と語りながらも節々からは怒りが滲み出ていて、事実反戦デモにも積極的に参加されている。 同時に、近い将来パレスチナの人々がナクバの呪いから解放され、地下鉄(このエピソードで少し気持ちを持ち直した)でエルサレムまで移動できるのだと、希望と関心を抱き続けてもいる。 「関心」ってシェルターみたいなものだと思う。関心さえあればその領域は守られるが、消えたら最後…嵐が来ればたちまち木っ端微塵になってしまう。無知も恐いけど、こちらはこれから知ることで変わっていく余地がある。 この手の関心は永続的でなければならない。一発限りであっても人々の寿命を縮めるのだから。

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2024/06/03

数年おきに繰り返されるガザに対する殺戮と破壊。2008-09年には、想像を絶するジェノサイドと思われたそれが、5年半のあいだに二度、三度と繰り返されるうちに、いつしかガザのルーティンになってしまった。イスラエル軍はこれを「芝刈り」と呼ぶ。伸びてきた柴が刈られるように、ガザのパレス...

数年おきに繰り返されるガザに対する殺戮と破壊。2008-09年には、想像を絶するジェノサイドと思われたそれが、5年半のあいだに二度、三度と繰り返されるうちに、いつしかガザのルーティンになってしまった。イスラエル軍はこれを「芝刈り」と呼ぶ。伸びてきた柴が刈られるように、ガザのパレスチナ人は「刈り取られる」のだ。そのたびに何十人、何百人という子ども達が命を奪われる。「ガザ、世界最大の野外監獄、無期懲役時々死刑、罪はパレスチナ人であること。

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2023/11/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

YouTubeにて「アラブ、祈りとしての文学」の著者がパレスチナを伝えているーーこの報せが、映像は(感情を揺さぶられすぎるために)見られない私にこの本を手に取らせた。 先日ネットニュース号外で拾い読んだばかりの、イスラエル側が「ハマスの拠点」と主張して攻撃した病院の名が、文章の中に載っていた。この本が書かれた時点では治療が、資源が払底しながらも行われていた場所だ。同名の病院でなければ、ここがいま爆撃され、襲撃され、侵入されている。 しかしその地獄は、パレスチナの人びとが1940年代から、残酷度をこれでもかというほど上塗りにされて受けさせられ続けているものだ。 ひと(いのち)を、想像の天秤において自分と等価値に置く。世界のあらゆる地域でひとりひとりによってそれが行われなければ、イスラエルはパレスチナを焦土にしてしまうだろう。……そして、高みの見物を決め込むごく少数の、大金を持ったウィンディゴが、次の標的を探しはじめるだろう。

Posted byブクログ

2023/11/10

これまで自分は世界の何を見ていたのか。 自身の不明を恥じる。 この悲劇は今現在も続いていて、この瞬間がこれまでで最も悲惨な状況なのだろう。 ジェノサイドが行われている。世界はそれを知りながら黙って見過ごしている。

Posted byブクログ

2023/11/01

出版社サイト(みすず書房) https://www.msz.co.jp/book/detail/08747/ 「朝日新聞」書評(20190126 都甲幸治) https://book.asahi.com/article/12095708

Posted byブクログ

2023/10/21

ハマスの急襲と、それに対するイスラエル軍のガザへの地上侵攻という事態の報道に接し、ガザで何が起きているのか、ガザに生きるとは、あるいはパレスチナ難民として生きるとはどういうことなのか、少なくとも自分は何も知らなかったということを思い知らされた。 一人でも多くの人に読んでほしい。

Posted byブクログ

2023/10/13

読みながらぼくは自分に問うた。ぼくは「人間」と言えるだろうか、と。この著書からぼくが読み取れるのはそうした骨太の「人間主義」とも呼べるものだ。相手を「敵認定」して、それゆえに「ただちに」殺す状況が美しい言葉で飾り立てられてしまう状況にはっきり「NO」と言い続けること。自らの内面に...

読みながらぼくは自分に問うた。ぼくは「人間」と言えるだろうか、と。この著書からぼくが読み取れるのはそうした骨太の「人間主義」とも呼べるものだ。相手を「敵認定」して、それゆえに「ただちに」殺す状況が美しい言葉で飾り立てられてしまう状況にはっきり「NO」と言い続けること。自らの内面にある「人を殺す」こと、「相手の人権を慮ること」を決して「ぬるい」と拒絶するのではなく、むしろその「優しさ」をこそ出発点としてリアルでドライな現状認識と結びつけて、「ガザに地下鉄が走る日」を夢見る理想・希望へと練り上げることが大事だ

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2022/11/30

申し訳ない。 パレスチナに関心はありつつも、心的にも傍に寄り添うでもない、ただの、地獄の傍観者。 ノーマンとされる、各地のパレスチナ人。 自国主義。民族主義。 パレスチナはイスラエルの新兵器の広告塔。 平和とは。 地獄とは。 パレスチナから目を離してはいけない。楽な事、自分...

申し訳ない。 パレスチナに関心はありつつも、心的にも傍に寄り添うでもない、ただの、地獄の傍観者。 ノーマンとされる、各地のパレスチナ人。 自国主義。民族主義。 パレスチナはイスラエルの新兵器の広告塔。 平和とは。 地獄とは。 パレスチナから目を離してはいけない。楽な事、自分の事、ごく身近なことにばかり目を向けて、苦しみから離れてはいけない。 この本を読んで、今、これから私はどう行動するのか。 自省。他者が希望を見出せ、生み出せる人間になりたい。

Posted byブクログ