中級ドイツ文法 新装版 の商品レビュー
「ドイツ語学習者を最初歩から高度な応用段階までお誘いするよう編まれた文法書」を謳う本書は、残念なことに、応用知識は甚だ不十分であり、また初学者がこの本だけでドイツ語を学ぶのは難しい構成となっている。 本書はコミュニケーションを重視しており、会話でそのまま使えそうなくらい自然な例...
「ドイツ語学習者を最初歩から高度な応用段階までお誘いするよう編まれた文法書」を謳う本書は、残念なことに、応用知識は甚だ不十分であり、また初学者がこの本だけでドイツ語を学ぶのは難しい構成となっている。 本書はコミュニケーションを重視しており、会話でそのまま使えそうなくらい自然な例文が豊富にある。しかし、その例文は、本書をむしろ難しくしているように見える。 例えば、Kühlschrank、Waschmaschine、Möbel、HandtascheやHandschuheなどの単語がp.30や31にあるが、これらには訳がない。なぜなら、そこでは定冠詞類の格変化が問題だからである。 それでは、Kollegen、Familienzuwachs、Kleid、Bügel(p.36)の意味をあなたは知っているだろうか? 今回は日本語に訳さなければならないから、知らないとまずい。しかし、知らないなら答えを見るしかない。 私たちは自然なドイツ語に出会う機会はほぼなく、そうするためにはドイツ語のニュースや本に接する必要があるだろう。しかしそんな実力があるのなら、この本は必要ない。初学者のためを思うのなら、初出の単語には注が必要であっただろう。 それでは、中級者にとって、これは良い文法書なのだろうか? 残念ながら、そうとも言えない。 中級者ともなると細かい文法事項の説明が欲しくなるが、そもそもの本書の作りが甘いところがある。例えば、基数のうちHundertやTausendは中性名詞であるとだけ言った後に、Millionが女性名詞であることを聞く問題が出ている。(p.21) また、特殊な格変化をする名詞にHerzが出ているが、他に紹介されている名詞が男性名詞であることを考えると、これは中性名詞であることも注記すべきではないだろうか。 他に、「Wie gefällt Ihnen dieser Fernsehr?」(p.30)という例文とその訳が、gefallenの何の解説もなしに登場している。同ページのgrüßenやempfehlenも訳があるだけで動詞の解説はない。 総じて、『必携ドイツ文法総まとめ』に載っている文法事項を超えた説明はほとんどない。”ほとんど”と言っているということは例外があるのだが、そのためだけに高いお金を出して本書を買う必要はないであろう。 確かに、筆者の説明はコンパクトにまとまっている。図表もふんだんに使われており、少しでもわかりやすいものにしようという筆者の意気込みが感じられる。また本自体のレイアウトにこだわっているのか、行間もよく取られおり、周囲約1cmは空白となっており、非常に見やすい。ただ、それらは裏を返せば、この本の中身が薄いとも言える。この点は主観的なものでもあるので、買う前に一度現物を手に取った方が良いだろう。 筆者はまえがきで、段階的に学んでいく教科書的な文法書と参考書的な文法書の良いとこどりを目指したと書いている。しかしその結果、本書は中途半端なものになってしまったように見える。初学者がこれだけで格変化が理解できるとは到底思えない。また、この本を中級者が参考書的に使うにしては、この本はあまりにも物足りない。 この本の使い道についていろいろと考えていたのだが、第二外国語でドイツ語を学ぶ初学者が、サブのまとめ文法ノート的なものとして用いるのが一番良さそうに思える。学んでいて疑問に思ったことや注意点、さらには単語の意味などを本書の空白部分に書き込めば、勉強になるだろう。 ちなみに、p.24のトレーニング5で「この自動社会社」という誤植がある。(新装版初版) P.S. このレビューを書き込む前に、この本の作品紹介が目についた。「学習者の疑問はこの一冊で解決」、「日本で最も詳しいドイツ語の文法書」という表現は、過大広告である。『現代ドイツ語文法便覧』(『ドイツ広文典』の継承)や『ドイツ語文法大全』の方がはるかに詳しい。この本の旧版が出た2007年でも、関口先生系列の本は容易に手に入った。仮にもっとも詳しいものというのなら、私だったら、『詳解ドイツ大文法』を挙げる。読者を馬鹿にするのも良い加減にして欲しい。とはいえ、作品紹介部分は筆者が書いたかどうかはわからないため、評価には反映させないでおく。
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