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ウイルスは悪者か の商品レビュー

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12件のお客様レビュー

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2021/09/02

感染症を引き起こし、時に人類の脅威となるウイルス。捉えどころのない、この「曖昧な存在」の本質を、世界各地に足を運び、研究を行うウイルス学者が明らかにする書籍。 ウイルスは、生物と無生物の中間に位置する。 ・ウイルスは、単独で自律的に生きていく(増える)ことはできない。この意味で...

感染症を引き起こし、時に人類の脅威となるウイルス。捉えどころのない、この「曖昧な存在」の本質を、世界各地に足を運び、研究を行うウイルス学者が明らかにする書籍。 ウイルスは、生物と無生物の中間に位置する。 ・ウイルスは、単独で自律的に生きていく(増える)ことはできない。この意味で、「無生物的」である。 ・だが、生きている細胞(宿主)に侵入すると、その細胞の仕組みを利用し、「生きて」いるように「自己複製」を行う。 ウイルスが宿主の細胞に侵入し、増殖している状態、あるいは増殖後、宿主内に持続的に存在している状態を「感染」という。 ウイルスが細胞に侵入するには、宿主生物の細胞表面にある「レセプター(受容体)」に結合する必要がある。どのレセプターに結合するかはウイルスによって異なる。そのため、ウイルスは、多くの場合、特定の宿主生物にしか感染できない。 1997年に香港で発生した鳥インフルエンザは、ヒトに感染し、命を奪った。これは、鳥インフルエンザはヒトに感染しても重篤化しない、という当時の「常識」を覆す出来事だった。 19世紀末頃から、インフルエンザの病原体探しが始まった。 1918年、「スペインかぜ」が流行した当時、有力なのは細菌説だった。その後、1933年に、ヒトのインフルエンザウイルスが分離され、ウイルスが病原体であることが確定する。 人間の活動領域が広がり、野生生物を宿主とするウイルスと接触する機会が増えた。そうした自然界のウイルスの中から、人間に感染し、高い病原性を示すものが出現した。人間は、こうしたウイルスを「悪」とみなすが、ウイルスにすれば、自身の遺伝子を増やして残しているにすぎない。

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2021/08/09
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

本書の初版1刷の日付が2018年11月9日、当時を思えば、高病原性鳥インフルエンザあるいは、豚熱あたりが我々の関心をよんでいたぐらいであったか。新型インフルエンザはすでに、季節性のインフルエンザとなって、人びとはワクチン接種に走り、エボラ出血熱は遠くアフリカのこと、デング熱は旅行者が帰国後発症したものの、人びとにさほどの注意を換気していたとも思えない。私が本書を手にしたのは3刷(2020年4月24日)で、5月29日に入手している。 2月末にはオーストラリアとニュージーランドに駆け込みで出張をしたが、両国は3月中にはパンデミックによる鎖国を始めたので、思えばギリギリのタイミングではあった。また、感染症関係の書籍の購入を見ても、この旅からの帰国直後から、増え始める。3月2日に電子版で『感染症の世界史』(石弘之・著)を購入している。4月4日には『アンドロメダ病原体・新装版』(マイケル・クライトン・著)、4月15日には電子版で『新型コロナウィルスの真実』(岩田健太郎・著)、17には、『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ:人類とウィルスの第一次世界戦争』(速水融・著)を購入している。本書の購入もこの流れの中にある。いろいろ、読み散らかしたので、なかなか、最後まで読みすすめることができなかった。 著者は、ラボとフィールドを駆け回る人獣共通感染症の専門家、フィールドで鳥の糞などを採集しては、モニタリングをして、高病原性鳥インフルエンザ、ひいては、新型インフルエンザのタイプを判別している。また、アフリカのザイールにエボラ出血熱の調査にもでかけていた。本書で述べられていることは、ウィルスが生物かどうかの定義はともかくも、ウィルスは遺伝子そのものである(DNAタイプも、RNAタイプもある)ということ。また、ウィルスは寄主との間での共進化の過程で弱毒化していくので、ヒトに致死的であるウィルスはヒトが寄主ではない場合であって、ヒトが何らかの理由でオリジナルな寄主の生息する場にアプローチすることによって感染が起こったことに起因する。また、ヒトからヒトへと感染するようになると、パンデミックとなることを指摘する。まさに、新型コロナウィルス(SERS-COV2)のパンデミックは、まさにそのセオリーどおりに感染をひろげ、未だに、アフターコロナの状況を読み取ることができない現状がつづいている。 危機的な状況であるにも関わらず、日本の場合、オリンピックの開催に踏切り、国外からの関係者をうけいれ(様々なタイプのSERS-COV2を招く可能性がある)、緊急事態宣言とは矛盾するイベントの開催の強行により、蔓延の拡大は、必至となっている。著者はウィルスには意思や意図はなく、あるのは人間の側であることも指摘している。第5次の蔓延ピークはまさに人間が引き起こしたもの以外の何物でもないことを心しなければならない。

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2021/02/02

メモ→ https://twitter.com/lumciningnbdurw/status/1356177116887302147?s=21

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2021/01/24

北大の獣医学部を卒業した後、エボラウイルスやインフルエンザウイルスの伝播、感染メカニズムと、そのワクチンや治療薬の研究を続けている北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター教授を務める高田礼人教授の自分の研究歴やウイルス研究にかける思いを書いた一冊。 人獣共通感染症とは鳥や豚、蝙蝠...

北大の獣医学部を卒業した後、エボラウイルスやインフルエンザウイルスの伝播、感染メカニズムと、そのワクチンや治療薬の研究を続けている北海道大学人獣共通感染症リサーチセンター教授を務める高田礼人教授の自分の研究歴やウイルス研究にかける思いを書いた一冊。 人獣共通感染症とは鳥や豚、蝙蝠など動物を介してヒトも感染するウイルスによる症状のこと。エボラウイルスの抗体を持つコウモリが発見されていることから、エボラウイルスはコウモリを宿主としていたウイルスが人間に感染したと考えられ、インフルエンザウイルスも鳥から発生し、人に感染することが確認された。 実際にそれらのパンデミックが起きた現場に行き、ウイルスと特定とその封じ込めのために活動した記録などが語られる。 タイトルにある「ウイルスは悪者か?」という問いかけは、人獣共通のウイルスは、それまではヒトと隔絶されて生きていた動物が、都市の拡大などによってヒトが動物とウイルスの間に介入するようになったために起き始めたこと、つまりウイルスが求めたことではないことをさして言っている。ウイルスを「生物」と呼ぶべきかどうかは微妙だが、その増殖のメカニズムは生物のそれと酷似しており、ウイルスもまた生物と同じく自然の法則によって存在しているにすぎないからだ。 この本が出版されたのは2018年11月。まさにその1年後にCOVID-19のパンデミックが起き始める。 COVID-19が人獣共通ウイルスであることも間違いないだろう。高田教授がどういう気持ちでこの1年を過ごしていらっしゃるのか、それを語る次作が出たら読んでみたい。

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2020/08/15
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 生命体の定義(p.42) (1) 事故と外界との「境界」によって定められている個体が存在する。 (2) 「遺伝情報」として核酸(DNA・RNA)を持ち、その塩基配列によって決定されるタンパク質を個体の構成要素の一部としている。 (3) 遺伝情報が「複製」され、子孫に伝達される。 人類がウイルスの姿を「見る」ことができるようになってから、まだ100年も経っていない。電子顕微鏡が開発されたのは1932年。それによって、天然痘を引き起こすウイルスの姿が初めて捉えられたのは1939年のことだった。(p.70) 天然痘の根絶に成功したひとつの大きな理由として、不顕性感染がほとんどないことが挙げられる。感染すると、非常に高い確率で発症し、感染者を特定することができる。その後すぐに感染者を隔離し、接触する可能性のある人にワクチンを接種すれば、感染ルートを遮断することができる。 新興菅セイン賞たる人獣共通感染症が、開発途上国と呼ばれる地域で多発しているのは偶然ではないだろう。近年の急速な開発により、これら病原体の自然宿主たる野生動物の生態や行動圏が攪乱されている。それにより、それまでは大きく隔てられていた野生生物と人間社会との接触が増え、偶発的な感染がおこるようになった。そのなかに、ヒトに対して高い行玄誠也致死性を示す病原体が存在し、それが人類のきゅおいとなっているのだ。(p.93) 防護服内に空気を供給する理由は、酸素補給のためだけではない。空気を送り込むことで、防護服の内部を外部より気圧の高い状態(陽圧)にするためでもある。 実験室内では、注射器・注射針や、動物解剖のためにの刃物も取り扱う。動物には麻酔をかけるのが常とはいえ、爪や歯などの鋭い部位もある。万が一、それらの取り扱いを誤り、スーツに穴があいてしまった場合でも、中から空気が送りだされていれば、病原体に汚染された空気がスーツ内に入り込んでくるリスクを低減させることができる。(p.154) ヒトに感染しやすいウイルスは、主に上気道(口や鼻から喉、気管にかけての呼吸器)の細胞にあるレセプターを認識して感染することが明らかにされている。だからこそ、飛沫によって容易に伝播する。(p.256)

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2020/04/25

昨今の感染症騒ぎで興味を持ち、購入に至った次第。 自分の身を守る為と正確な意見を述べる為に。 世間一般ではウイルスは完全に悪者扱い。 本当にそうなのか? 人間だけが被害を受けているのか? 動物もではないか? それなら自然界にとってもウイルスは悪なのでは? それらの疑問に平易な文で...

昨今の感染症騒ぎで興味を持ち、購入に至った次第。 自分の身を守る為と正確な意見を述べる為に。 世間一般ではウイルスは完全に悪者扱い。 本当にそうなのか? 人間だけが被害を受けているのか? 動物もではないか? それなら自然界にとってもウイルスは悪なのでは? それらの疑問に平易な文で答えている。 ウイルスが人間に、自然界にどんな影響を及ぼしているのか。 それ知ればウイルスへの印象は一変し、日頃の行動も変わる、 かも知れない。 本書を読めばウイルスへの知識が増えるだけでなく、 人間という種の在り方、意味までをも考察することになるだろう。 生活の一幕で、一考しては如何か。

Posted byブクログ

2020/04/21

簡単なようで難しかった。でもおもしろかった。 ウイルスに悪気などなく、人間の活動範囲が広がって接触が限られていた野生生物と人間とが頻繁に接触するようになってウイルスと遭遇してしまったと。 あーあ。

Posted byブクログ

2020/03/08

新型コロナウイルスやエボラウイルスのように、なぜ新しいウイルス感染症が自然界から次々とヒトの世界にやってくるのか、ウイルスの生態について考えさせてくれる本。ウイルスの存在を普段と少し違った視点から見ることができるようになるのではないかと考え推薦します。

Posted byブクログ

2019/11/07

筆者のこれまでの研究人生をまとめたような一冊です。 筆者が研究してきた、エボラウイルス、インフルエンザウイルスを中心に話が展開されます。 ウイルスの研究というと研究室にこもって実験をするというイメージがありますが、彼は人獣共通感染症を取り扱っているため、フィールドワークに出たり...

筆者のこれまでの研究人生をまとめたような一冊です。 筆者が研究してきた、エボラウイルス、インフルエンザウイルスを中心に話が展開されます。 ウイルスの研究というと研究室にこもって実験をするというイメージがありますが、彼は人獣共通感染症を取り扱っているため、フィールドワークに出たり、さらに、人への感染の恐れからバイオセーフティーレベルが最も高い施設で実験を行なったり、普通研究者でも体験できないような様々な経験が書かれていて非常に面白かったです。 ウイルス学があまり詳しくない人も、基本的な原理から説明してくれているし、ウイルス学を学んでいる人も、意外と知らない知識が身について面白いと思います。 僕は、BL4の施設について、自然宿主とは、生ワクチンがどうやってできるか、抗体によってウイルス感染が増強される?、渡り鳥とインフルエンザの関係、などの内容が非常に面白く感じました。

Posted byブクログ

2019/05/18

エッセイのような構成になっていると感じました。学術的な構成ではないので、情報収集として読む場合は、とても読みにくいです。 良い内容だけに、もったいない・・・

Posted byブクログ