彗星の孤独 の商品レビュー
タイトルの「彗星」は寺尾紗穂さんと父との関係を表している。 丁寧に生きていることが分かる日々の記録は詳細で、その時の温度感まで文字で伝わってくる。曲が出来上がるまでの過程で彼女がどんな状況で、誰とやり取りをしていたかまでも追えれる。今や大ファンであるマヒトゥさんや坂口恭平さんもこ...
タイトルの「彗星」は寺尾紗穂さんと父との関係を表している。 丁寧に生きていることが分かる日々の記録は詳細で、その時の温度感まで文字で伝わってくる。曲が出来上がるまでの過程で彼女がどんな状況で、誰とやり取りをしていたかまでも追えれる。今や大ファンであるマヒトゥさんや坂口恭平さんもこの時初めて知ったような。ここで出来上がった曲のヒストリーを少し知れたことで後からゆっくりと想像しながら聴いている。大袈裟ではなくこの本を読了してから私は歌詞を意識するようになった。 また、福島への想いや見過ごしてきた社会の溝についても優しく綴られていて私たちはあらゆる負荷を背負いながら人生を歩んでいるんだと認識する。 いい言葉がたくさんあるよ
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「遠くて遠い」父、娘たち、もう会えない人たち。音楽家・寺尾紗穂さんが綴る、闇を照らす光のような文章。寺尾さんの音楽のような文章。じわっと浸透。地元が出てきて驚く。
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「気を衒うことなくとてもシンプルなのに、ものすごい力強さと美しさを持っている」 というのは、文章だけでなく歌や演奏、作詞作曲に至るまで、寺尾紗穂さんの表現活動全てに共通する特徴だと思いますが、どの分野においても高いレベルで具現化されていることに、ただただ圧倒されます。 本書は内...
「気を衒うことなくとてもシンプルなのに、ものすごい力強さと美しさを持っている」 というのは、文章だけでなく歌や演奏、作詞作曲に至るまで、寺尾紗穂さんの表現活動全てに共通する特徴だと思いますが、どの分野においても高いレベルで具現化されていることに、ただただ圧倒されます。 本書は内容も素晴らしいですが、帯にあるいとうせいこうさんの「丁寧に書くことは 丁寧に生きること。」という言葉に心を掴まれました。 本書の中のどこか一場面を指しているわけでもないのですが、本書のどこを読んでも奥底でこの言葉が共鳴するようで、こんなに短い一文で的確にこの本の本質を表現できることにとても驚かされました。
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歌を歌う人のエッセイ集と軽い気持ちで読み始めたのだが、思いがけず重みのある貴石を手にしていた。 原発労働者のこと、親日と知られる南洋で実際に起きていたことなど、知らなかったこと盛りだくさんで、読み応えがあった。 図書館で借りた本だが、心に留め置きたいフレーズがありすぎて、そして何...
歌を歌う人のエッセイ集と軽い気持ちで読み始めたのだが、思いがけず重みのある貴石を手にしていた。 原発労働者のこと、親日と知られる南洋で実際に起きていたことなど、知らなかったこと盛りだくさんで、読み応えがあった。 図書館で借りた本だが、心に留め置きたいフレーズがありすぎて、そして何度も読み返したいので購入を決めた。
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ゆっくり読んだ。 不思議な人に不思議な話。 だけど、すとんと納得がいくような。 知らない人の知らない話を伝えてくれてありがとうと思ったり。 一緒に体験しているような。 分からないけど。
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とても細やかで解像度の高い眼差しの記録。グロスに宿る真実性もあれば、一人一人の言葉に表出するリアリティだってあるということ。
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ライブで演奏を聴いているときと同じ空気が流れていた。じっくり眺め、人のどんな思いもバカにせず、よくよく味わう。 文中、孤独な人をなくしたいというようなことを、何回か書かれていた。それは「みんな」の輪の中に引っ張りこむということではなくて、ひとりでいても孤独ではない世界を作る、作...
ライブで演奏を聴いているときと同じ空気が流れていた。じっくり眺め、人のどんな思いもバカにせず、よくよく味わう。 文中、孤独な人をなくしたいというようなことを、何回か書かれていた。それは「みんな」の輪の中に引っ張りこむということではなくて、ひとりでいても孤独ではない世界を作る、作りたい、ということなのかなと思った。
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彼女の言葉が頭の中で反芻する。 「日が沈みゆく空を仰ぐ時。過ぎ去った今日を思う。それから昨日を思う。会えない人を思う。なぜいないのかと思う。なぜ出会ったのかと思う。浮き上がる疑問符を残り場はやさしく照らす。」 「文学や芸術とは、『社会の役に立たないから』という硬直した考え方を...
彼女の言葉が頭の中で反芻する。 「日が沈みゆく空を仰ぐ時。過ぎ去った今日を思う。それから昨日を思う。会えない人を思う。なぜいないのかと思う。なぜ出会ったのかと思う。浮き上がる疑問符を残り場はやさしく照らす。」 「文学や芸術とは、『社会の役に立たないから』という硬直した考え方を前に、しなやかに返答し続けるもの。」 淡々と語りかけているが、彼女の歩んできた人生の深さを垣間見れる。答えのない問いに対し考え続け、ひとつひとつに向き合う姿勢が魅力的だ。楽曲を聴いてから本書を知ったが、曲がつくられた背景なども詳細に記憶しており、丁寧に過ごされてきた人生の有意義さに感服した。
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読み終えるとすごく疲れた。良い意味で。 ものすごく難しい言葉遣いでもなく、むしろ流れるような文体だけど言葉の密度がすごく濃い。 世界の見え方を一枚ぺりっとめくって教えてくれたようなすごい本
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「好きだな、この人」と思った。 直接、会ったことはない。 この人の作った音楽を聴いたことはない。 仕事をしている領域は、たぶん、重なっていない。 日常生活の中でキャッチしている物事も、自分とはかなり違うのだろうと思う。 しかし、寺尾沙穂さんが著書「彗星の孤独」に書かれていることを読んでいて、 寺尾さんが感じていること、価値の置き方に魅かれた。 本書の中に、次のような記載がある。 『何かをアウトプットする時、 まわりの評価や世間の常識の中でものを考え、 そこからはみ出さない範疇で選択したり、 答えを出すことに私たちはすっかり慣らされている。 そのほうが楽だからだ。 まるでその術をうまく知っている人が、頭がよく、 仕事のできる人のようにも錯覚する。 うわさに耳をそばだて、安全牌のうまく頼れれば、「成功」はなかば保証される』 『文学や芸術はもっともっと一個人に開かれていいものだと思う。 誰がいつ始めてもいい。 その巧拙やレベル如何に最後までこだわる人もいるだろうが、 一番大切なのはひとりの人間にとっての切実な表現と喜びがそこにあるかどうか。 それから、それを認めて受け入れてくれる人が身近にいるかどうか。 これは、人の幸福を決める大きな要因であり、人が生きていく上で、最強のセーフティネットになりうるとも思っている』 寺尾さんは、音楽家であり、文筆家だそうだ。 音楽家も作家も、それで生計を立てられる個人は、一握りだろう。 表現を手段にして生計を立てていない場合、 その人の表現に価値がないというわけではない。 頭の中では理解できても、生活は切実な問題があるので、 お金にもならない表現を続けていてよいんだろうかと思ったり、 自分自身の表現活動が中途半端なものに思えたりする。 根っこを掘り下げれば、 「表現したいから、表現する」という動機があるはずなのですが、 それがどこかに消えてしまう。 自分の動機を掘り下げることについて思考停止して答えを出すほうが、楽だからだ。こうすれば上手くいくという方法や、安全な流れに乗っかっていくほうが都合がいいだろう。 でも、「それで幸せか?」と考えると、自分自身の答えが見えてくる。
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