凍った脳みそ の商品レビュー
この人の紡ぐ言葉に惹かれてもう何年になるだろう。 自身の音楽スタジオで起こる日常生活を綴ったエッセイかと思いきや、「表現者として、ミュージシャンとして生きること」について書かれた紛れもない哲学書だった。 次世代への期待を著者は「人間しか持たない感情」と形容していたが、ごっさ...
この人の紡ぐ言葉に惹かれてもう何年になるだろう。 自身の音楽スタジオで起こる日常生活を綴ったエッセイかと思いきや、「表現者として、ミュージシャンとして生きること」について書かれた紛れもない哲学書だった。 次世代への期待を著者は「人間しか持たない感情」と形容していたが、ごっさんのコレは単なる生殖本能のみではない、「誰かに何かを遺してあげたい」という若者へ向けたあたたかく優しい崇高な理念だ。すべての表現者たちのために、持続可能なスタジオが、そこから生まれる音楽が在って欲しい… という気持ちで読了。奇しくも現在、著者は故郷にスタジオを構える活動の真っ只中だ(先日私も微力ながら募金してきたし、今後も支援するつもり)。夢の続きを、この本書のアンサーを、現実世界で答え合わせができてなんとも幸せだ。 唐突にカニカマが登場する奇怪さは、帯を担当している町田康氏と似通ったものがある(末摘花の「アル中がホッキ貝…」のくだりを彷彿とさせた)。
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ゴッチの書く日本語はおもしろい。 日本語の文章が好きなんだなと思わせられる表現が多い。 こんな文章を書けるようになれたら色々表現ができて楽しいだろうなと思った。
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捻くれた皮肉屋のゴッチ節が炸裂。ただ比喩を通じて将来に訴えかける表現もあり、笑いもあり面白く読めた。
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『そんなことは業者に任せ、その時間で音楽を作ってくれ。この本を読んだファンはそう思うであろう』帯の紹介文でそうあるとおり、15年来のアジカンファンである私も、激しくそう思った。しかし、それがゴッチであって、アジカンの源なのである。 シンガーソングライターであるゴッチの、面白可笑...
『そんなことは業者に任せ、その時間で音楽を作ってくれ。この本を読んだファンはそう思うであろう』帯の紹介文でそうあるとおり、15年来のアジカンファンである私も、激しくそう思った。しかし、それがゴッチであって、アジカンの源なのである。 シンガーソングライターであるゴッチの、面白可笑しいワードセンスは秀逸で、ニヤニヤしながら読める一冊。 このスタジオで製作されたアルバム『ホームタウン』もぜひ聴いてほしい。
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自身のプライベートスタジオ「COLD BRAIN STUDIO」を作り上げるまでの日常を文章にしたもので、いつも通り独特の感性が随所にほとばしる。ゴッチの文章の面白さは自己理解の正しさと歪さが、ユーモアに表現されている点に突き詰められると個人的には思っている。
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創作を突き詰めていくとお金がかかる。 自分でスタジオを作ってしまった著者が面白おかしく語ってくれる。 アジカン(カンジェネ、アカフー?)の音楽も好きだけど、この文章も好きだな。
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比喩がまどろっこしいが、そこがゴッチさんの良さでもあり、思わずクスッとしてしまう。時には、だから早く言葉をまとめなさいよ。と思うこともある。アーティストとは常に脳内に小さいおじさんが存在して、あちらこちらとオッサンが走り回ってるんだろうなー。と読んでて思った。面白かった。
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冷たくなった脳みそ じっと固まって 無傷のまま 引き離されて ようやくひとりぼっち 何の考えもなく 何の思いもなく 災いの爪痕の陰で 腐っていく BECK / Cold Brains 引用はBECKのMutations、1曲目のVerseより。 本書の冒頭にもちゃっかり登場しています。 著者のプライベートスタジオのあれこれを物件探しから害虫退治に機材投資、後輩のレコーディングなどなど、町田康リスペクトな軽快な文体で綴られています。 音楽づくりにおける、『拠点』『設備』の大切さも面白おかしく、ときに丁寧な語り口でするする楽しく読めました。音楽づくりに限らず、ものづくりにおける拠点の重要性は計り知れませんが、こと音楽に関してはお金がかかるのがそれこそ切実に伝わってきました。 例えば、俺が以前に音楽の滝壺へ飛び降りるつもりで買った「NEVE 1066」というプリアンプ(マイクや楽器とレコーダーの間につなぐ前置増幅器)のペアは、三桁の福沢先生をジョージ・ワシントンに変換させ、海外に旅立たせたのだった。 機材選びにともなう様々な困難 より メジャーなロックバンドのフロントマンですら、こうなのだなと。どこかの媒体で、アジカンの恵まれた環境や後ろめたさなどを語っていたかと思います。そんな彼が綴るからこその説得力があります。アップルビネガー賞も新人のミュージシャンへの支援も兼ねており、賞金?協賛?もそれなりの額で、音楽に対するこだわり、愛情もさることながら、別の視点で見ると、執念、もはや呪いのようにも見えなくもないです。 ちょっぴり苦目のあとがきも彼の人柄が垣間見えます。
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スタジオが出来上がってゆくまで。とても面白かった。 こんな文章を書く人なんだなー、というのが分かりやすかった。
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後藤正文氏という個人についても、彼が属するというアジカン(もしくはアカフー)というバンドにも全く予備知識はなく(悪いけど)読み終わった今もどんな音楽なのかな?という関心も興味も湧かない悪徳読者です。 ミュージシャンにとってのスタジオというものの価値は、多分芝居屋にとってのちょっとした公演もできちゃう規模の稽古場といったようなものなんだろうなぁ、と思えば、それなりに認識しているつもりではあるけれど、それはもと魚屋の物置をリノベしてでも作るべきものなのか、というところまでは理解が追いつかないのが現状であります。 まあつぶれかかった(文字通り)喫茶店を稽古場にして二桁やっとの観客を前に公演する芝居屋もいるから、そういう人類にとってはとても共鳴できる話なのかもしれない。 ただ、ただですよ。この後藤正文なる人物は、実はGotchなる別人格もあるようで、そのツイッターにはもう大共感できてしまうのでした。いろんないろんな日常のあれこれについて、ちょっとだけ少しだけもっと大きな枠を通して考えてみる、そういうことが「創作」にどれほど影響するかどうかはわからないけれど、でもそういうことを加味した上で聞く音楽にはとても信頼を寄せられる。感覚だけじゃなくて理性で受けとめることができる。そんなことを思わされたのでした。 後藤正文氏には☆5つね。
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