中央銀行 の商品レビュー
こうも万感胸に去来し、静かな充実感を持って読了する本があっただろうか。 強くお勧めしたい名著。 白川前日銀総裁が、ご自身の中央銀行生活を振り返って著した大著。700Pを超える圧巻のボリュームながら、読みやすく、読書が得意とは言えない私でも、一気に読み進めてしまった。 日銀とい...
こうも万感胸に去来し、静かな充実感を持って読了する本があっただろうか。 強くお勧めしたい名著。 白川前日銀総裁が、ご自身の中央銀行生活を振り返って著した大著。700Pを超える圧巻のボリュームながら、読みやすく、読書が得意とは言えない私でも、一気に読み進めてしまった。 日銀というと金融政策が注目されがちだけど、この本は、題名にも表れている通り、金融政策のみを論じるのではなく、著者が自身の経験を踏まえて、広く中央銀行のあり方について考えを述べている。本文を読み進めるごとに、こうした印象は強くなっていった。 本書の大きな特徴の一つが、上述の通り、読みやすいこと。著者が当時直面していた経済・金融情勢について論じる際にも、過度に複雑で、技術的な議論はなされておらず、基本的な経済学の知識だけでも相当程度理解できるような書きぶりになっている。また、金融政策に留まらず、中央銀行の業務・あり方について広く議論していることが、わかりやすさやとっつきやすさにプラスとなっている側面もあると思う。 僕自身は最近になって金融政策について少しずつ勉強を始めているところで、この本は中央銀行論や金融論、さらには一仕事人としての生き方についての示唆に富んでいるという意味でも非常に有益だった。 中央銀行の業務や意義については、高校の政治経済の授業等で学ぶものの、多くの人にとって決して身近ではないだろうし、かなりの程度未知の存在だと思う。 しかし、いやむしろだからこそ、一人でも多くの人にこの本が届き、中央銀行や経済政策に対する理解が深まり、なおかつそのより良いあり方について、社会的な議論が盛り上がるきっかけになればと、そんな壮大なことまで願ってしまうくらい、心に響くものがあった。 それと同時に、本書において、静かな語り口は静かながら、著者の熱く確固たる信念と矜持が窺える点や、一貫して理論と実際、理想と現実等々の間で絶妙なバランスを取りながら議論が進められている点から、著者の人となりに想像力が及び、一仕事人として、白川さんのようでありたいとも感じた。 おそらく、白川さんに限らず、社会を牽引する重責を担う人の多くは、こうした立派な仕事人であるだろう。 そうであるならば、僕も少しでもそのような人に近づけるよう、本書から窺える白川前総裁のお人柄を具体的な理想像として持ちながら、精進していきたい、と思った。 ここまで色々感想を述べたけど、一言で言えば、とにかく面白い(interesting)な一冊。
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白川元日銀総裁の超大作。実際に750ページ以上あって本が安定して「立つ」。今年の年末年始はほぼこいつに費やしてしまいましたが、いい時間でした。 さて、副題に「セントラルバンカーの経験した39年」とあるとおり、本書は白川氏が日銀に入行してから総裁時代までを、当時の状況に立ち返って...
白川元日銀総裁の超大作。実際に750ページ以上あって本が安定して「立つ」。今年の年末年始はほぼこいつに費やしてしまいましたが、いい時間でした。 さて、副題に「セントラルバンカーの経験した39年」とあるとおり、本書は白川氏が日銀に入行してから総裁時代までを、当時の状況に立ち返って書かれた本です。総裁時代には、リーマンショック/欧州通貨危機/東日本大震災と激動の時代を経て、アベノミクスに突入します。積極的な金融政策を政治・社会から求められ、日銀が批判にさらされた時代でもあります。 リーマンショックの際、日本の銀行はサブプライムローンをはじめとする、いわば「怪しげな証券」をあまり保有していなかったこともあり、金融システムへの影響は限定的でした。しかし、実体経済の回復は遅く、回復に時間を要することになります。そして低成長、低インフレの時代が続き、「デフレ議論」が活発になっていきます。 「…日本のデフレ議論は、日本経済にとって不幸なことであったと思う。その最大の理由は、日本経済の直面する問題の原因が物価の下落にあると断じたことである。」(p320)しかも、「デフレは貨幣的現象」とされたので、中央銀行が正しく金融政策を行えば万事解決するという考え方から、日銀に対して積極的な金融政策をするよう大きな圧力がかかります。安倍自民党の選挙では、それが大々的に選挙公約とされてしまう。構造改革や財政再建が本当は必要なのに、それには痛みが伴うので、中央銀行が選挙の道具にうまく使われて、先延ばしにされてしまったのかもしれません。 このような状況のなか、中央銀行総裁には判断が求められます。本書では、当時の状況を振り返りながら、どういう決断をしていったのか、あるいは本当はこうしたかったのにという思いが語られます。人によっては(特にリフレ派の人にとっては)、言い訳ばかり書いてる本、と捉えるかもしれませんが、今後の金融政策を理解していくうえで、大きな示唆を与えてくれる本であることに変わりはありません。 中央銀行のやっていることはなかなか市民に理解してもらえません。非伝統的金融政策なんてほんと分かりにくい。だからこそ政治の道具になったりもします。だけど、この本を通じて少しでも、中央銀行の賢明な理解が広まることを期待します。
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総裁就任後に直面する、リーマンショック、欧州通貨危機、加えて、東日本大震災等。改めて知る、激動の時代における中央銀行における種々の決断の重さであります。ポールソン回顧録等と合わせて読むことをおすすめします。いわゆる、リフレ派、に対する懐疑的な見方にも、なるほど、なるほど、でありま...
総裁就任後に直面する、リーマンショック、欧州通貨危機、加えて、東日本大震災等。改めて知る、激動の時代における中央銀行における種々の決断の重さであります。ポールソン回顧録等と合わせて読むことをおすすめします。いわゆる、リフレ派、に対する懐疑的な見方にも、なるほど、なるほど、であります。現在の日本経済が抱える、少子化、高齢化、持続可能な財政等、という厳しい現実についても、理解を深めることが出来る良書であります。星4つです。
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冒頭の、アイスクリームの話、嬉しかっただろうなぁ。それにしても白川さんらしい1冊。包括的でいて、緻密で、慎重。とっつきにくい内容もかなりありますが、金融政策の立案と遂行がどれだけ泥臭いかは分かるし、組織の長として直面するプレッシャーや求められる体力と責任感の程も分かる。 「自己弁...
冒頭の、アイスクリームの話、嬉しかっただろうなぁ。それにしても白川さんらしい1冊。包括的でいて、緻密で、慎重。とっつきにくい内容もかなりありますが、金融政策の立案と遂行がどれだけ泥臭いかは分かるし、組織の長として直面するプレッシャーや求められる体力と責任感の程も分かる。 「自己弁護と他人への批判と誤解されること」への不安を乗り越えて執筆された白川さんには感謝。今後もこういう本がたくさん世に出てほしいなぁ。黒田さんも書いてくれないかな。一般市民や学生を読者層にするのであれば、新書くらいのボリュームのものも出していただきたく。。。
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