動的平衡 新版(2) の商品レビュー
福岡本にハズレなし。「動的平衡」に続いて読了。前著に続き、機械論的な構造やエントロピーの法則に対抗して生命が獲得した動的平衡のシステムについての論考。超一流の研究者だけにそこらのサイエンスライターとは説得力がまるで違う。おまけに豊かな情緒、教養、感性もお持ちなので奥行きや面白さも...
福岡本にハズレなし。「動的平衡」に続いて読了。前著に続き、機械論的な構造やエントロピーの法則に対抗して生命が獲得した動的平衡のシステムについての論考。超一流の研究者だけにそこらのサイエンスライターとは説得力がまるで違う。おまけに豊かな情緒、教養、感性もお持ちなので奥行きや面白さもまるで違う。 腸内細菌の世界やゼロテクノロジーの思想、生命が進化の可能性を残すためにがんの発生(遺伝子のコピーミス)をあえて見逃している話は特に面白かった。また、科学的な「真偽」の議論から哲学的な「善悪」の判断、さらに「美醜」での選択に至る人類が向き合うそれらの基準についての論考も興味深い。環境問題との繋がりも前著よりもずっとしっくりと完結している。最後には西田哲学との著者の格闘も描かれる。生命を考えることは哲学的な営みなのだな。 それにしても人体、生命の神秘は計り知れない。人体生命の構造を元に作られたテクノロジーは枚挙にいとまなし。生命の仕組みは宝の山だなと思った。
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はずれのない福岡先生の本。動的平衡も素晴らしかったが本書も非常に生物への興味をそそる本で良かった。特にエピジェネティックスの解説がとてもわかりやすい。遺伝子に関する見方が大きく変わった。 従来の生物学では進化はDNAの突然変異で説明されていたがそれだけでは説明できない事象は多い...
はずれのない福岡先生の本。動的平衡も素晴らしかったが本書も非常に生物への興味をそそる本で良かった。特にエピジェネティックスの解説がとてもわかりやすい。遺伝子に関する見方が大きく変わった。 従来の生物学では進化はDNAの突然変異で説明されていたがそれだけでは説明できない事象は多い。それだけではないとの説がエピジェネティックスで、遺伝上は変化しなくても遺伝子のスイッチのオン・オフの順序とボリュームの調整で変化がおきるのでは、という仮説。そしてこれは卵環境で伝えられるとの事。改めて生命における母側の重要性(逆に言うと父側の役割が低い事)を認識。
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P234 “私たちは、尿によって水を捨てているのではなく、水の流れに乗せてエントロピーを捨 てているのだ。” うええぇぇぇぇっ! 「ごめん、ちょっとエントロピー捨ててくる」 高尚はばかり隠語表現のトップに躍り出た。 レーウェンフックとフェルメールの関係性空想や、ヌクレオチド、ネオテニー、ダウンレギュレーションなどなどおもしろかった。
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生命の話。 2割の働かない蟻、クローン状態の桜の話は 聞いた事があります。 風土、季節のものが体にいい、というのも。 二酸化炭素の話も。 アメリカが拒否した、のは知っていましたが 何故日本だけなのか、というのも理解できました。
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見返し 「私たちはなぜ『うま味』に惹きつけられるのか」 「海外旅行に行ったとき、お腹の調子が変になるのはなぜか」 「人間の行動は遺伝子に支配されているのか」 「生命が宇宙からやってきた可能性はあるか」 など、身近な話題から深淵なテーマまで、さまざまな切り口で、最新のサイエンスを紹...
見返し 「私たちはなぜ『うま味』に惹きつけられるのか」 「海外旅行に行ったとき、お腹の調子が変になるのはなぜか」 「人間の行動は遺伝子に支配されているのか」 「生命が宇宙からやってきた可能性はあるか」 など、身近な話題から深淵なテーマまで、さまざまな切り口で、最新のサイエンスを紹介。 読者を「生命の本質とは」という根源的な問題に誘っていく。 新書化にあたり、時間についての論考を追加。 知的興奮が味わえる「福岡ハカセの生命理論」決定版。 本書は二〇一一年一二月に木楽舎より刊行された『動的平衡2』を新書化したものです。 新書化にともない、元の文章に修正や加筆を行ったほか、新たな章(第10章)を追加しております。
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前作『動的平衡』に引き続き「生命の本質は動的平衡である」という考えのもとで、様々なテーマが取り上げられている。フェロモンの話など、「動的平衡」「生命」といった主題からやや離れているように思えるものもあり、全体の統一感は前作ほどではない印象だが、身近な切り口からの論の展開がうまいの...
前作『動的平衡』に引き続き「生命の本質は動的平衡である」という考えのもとで、様々なテーマが取り上げられている。フェロモンの話など、「動的平衡」「生命」といった主題からやや離れているように思えるものもあり、全体の統一感は前作ほどではない印象だが、身近な切り口からの論の展開がうまいので、科学本としてはとっつきやすい部類に入ると思う。 個人的に驚いたのは、遺伝に関する章で述べられていた、個体が努力して獲得した形質は次世代に遺伝しない、という点。例えばキリンは高いところの葉っぱを食べようとして何世代にも渡って自ら首を伸ばし続けたからあのような姿になった、という訳ではないそうで、たまたまキリンの首が長くなるような突然変異が発生し、それがキリンの生存にとって有利だったから首の長いキリンが生き残った、とのこと。 人間を例にすると、いくら親が体を鍛えても、生まれてくる子供が筋肉質になるわけではないということらしい。もしかしたら進化論の世界では常識なのかもしれないけど、自分は完全に勘違いしていたのでたいへん勉強になりました。 最終章で、年輪の輪が時間をなめらかに繋いでいるというくだりは美しいと思ったけど、「ここ(年輪の輪)にあるのは生命の動的平衡が可視化された姿」「生命の動的平衡こそが時間を汲み出す水源」というのはあまりピンとこなかった。まだ読み込みが足りないのかなあ。
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動的平衡1と重複部分も多いが、復習・定着という観点では良い。 日々の自分の行動を動的平衡の概念に照らし合わせて考えると、人生に若干のダイナミズムが出るかも?
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前半はアートに宿る動的平衡について。アートは静物であるが、それを見るヒトは感覚で動きを捉える。画家がどのような感情で書いたのかは本人でないと分からないが、アートに自然の動きをヒトは感じる。フェルメールとレーウェンフックの話に興味をもったが、アートが持つ動的なものにヒトは感動するの...
前半はアートに宿る動的平衡について。アートは静物であるが、それを見るヒトは感覚で動きを捉える。画家がどのような感情で書いたのかは本人でないと分からないが、アートに自然の動きをヒトは感じる。フェルメールとレーウェンフックの話に興味をもったが、アートが持つ動的なものにヒトは感動するのだろう。 ヒトの思考は「木を見て森を見ず」の考えに陥りやすく、現象を時間を止めて見ようとする。しかし生命活動は常に動的に流れ、その中で均衡を保とうとするものである。ファーブルは、「あなた方は死を詮索しておられるが、私は生を探っているのです」と述べた。現代で主流の分子生物学は、時間を止めて遺伝子やそこから発現するタンパク質を分析し生命活動を解析するが、動的な流れを排除し、機械論的にそれを見てしまうと、後にあって恒常を保とうとする流れにより、反動が起こるのではないか。自然から遠ざかり、人工的なものが溢れている中で、哲学的であるが、レイチェルカーソンが示した「センスオブワンダー」の感覚を原点とし考えていくことが大切だと感じた。
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第一弾よりも動的平衡なんたるか、、については直接的なものは少なくなった印象ですがこれはこれで福岡先生の豊かな文章を楽しめます。生命は水によって増大するエントロピーを捨てている。。循環する世界の一部としての自分を思うと今なぜ自分がここにあるのか。。決して答えのない問いが押し寄せる。
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『動的平衡』を読んだ記憶があったので、本作『動的平衡2』を読んだのですが、どうも以前読んだのは『生物と無生物のあいだ』だった模様。 『生物と無生物のあいだ』は面白かったですし、知的好奇心が刺激させる内容でしたが、本作は単に先生のエッセイとしか思えない内容で、とても残念に感じてしま...
『動的平衡』を読んだ記憶があったので、本作『動的平衡2』を読んだのですが、どうも以前読んだのは『生物と無生物のあいだ』だった模様。 『生物と無生物のあいだ』は面白かったですし、知的好奇心が刺激させる内容でしたが、本作は単に先生のエッセイとしか思えない内容で、とても残念に感じてしまいました。しばらく著作ビジネスから離れて研究に戻っていただければと、素人考えですが心配してしまうくらいでした。
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