両方になる の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
変わった造りの本である、ことが先行してしまった。 じゃあもう1パターンはどうなるんだろう、が頭にあるの。 ============= "目の章"から あとがきを読むまで、"目の章"を登場人物による創作とは捉えられなかった。 そう言われても、違和感なく、ことば遊びの端々をなるほどと納得できる。 「サイヴァード(ゲリラ広告)」すること、を意識してもう一度読み直したい。 または時間をあけて、逆パターンを。
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読み終わったときに(そしてある"仕掛け"を知ったときに)まさに「両方になる」ことを体感できた。そもそも一つの出来事に対して抱く感情はひとつだけとは限らない。というか、ほとんどあらゆる全てのことに対して、相反する気持ちを同時に抱くのが人間なんだろうな、と感じた。...
読み終わったときに(そしてある"仕掛け"を知ったときに)まさに「両方になる」ことを体感できた。そもそも一つの出来事に対して抱く感情はひとつだけとは限らない。というか、ほとんどあらゆる全てのことに対して、相反する気持ちを同時に抱くのが人間なんだろうな、と感じた。嬉しいんだけど悲しい、とか。満たされているけど不安、とか。傷つくと同時に深い安堵感、とか。どれかひとつだけを”正解”として選ぶ必要はない(それでもついジャッジしてしまいがちなんだけど)、なんだかよくわからないけど全てが正解なんだ、と思えるような懐の深い小説。ネタバレしたくなくてこんなぼんやりした感想に。
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翻訳家泣かせなのか翻訳家冥利につきるのか微妙だが、非常にご苦労された後がうかがえる。文節文節、読んでて楽しいのだが、全体像、つまり二つの物語の連結ポイント。を捉えるのはけっこう難しかった。その壮大な試みは訳者あとがきを読んで判った次第でそこまで含めて、読んで良かったと思えました。...
翻訳家泣かせなのか翻訳家冥利につきるのか微妙だが、非常にご苦労された後がうかがえる。文節文節、読んでて楽しいのだが、全体像、つまり二つの物語の連結ポイント。を捉えるのはけっこう難しかった。その壮大な試みは訳者あとがきを読んで判った次第でそこまで含めて、読んで良かったと思えました。実験的な小説。
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画家をやっているといろいろなものの感触が分かるようになる だって、想像上のものであれ、昔のものであれ、動物であれ、人であれ、あらゆるものには本質が備わっているからだ 薔薇や硬貨、家鴨や煉瓦を絵に描くときには、まるで硬貨に確かに口があって自分の気持ちを語ってくれているかのように感じ...
画家をやっているといろいろなものの感触が分かるようになる だって、想像上のものであれ、昔のものであれ、動物であれ、人であれ、あらゆるものには本質が備わっているからだ 薔薇や硬貨、家鴨や煉瓦を絵に描くときには、まるで硬貨に確かに口があって自分の気持ちを語ってくれているかのように感じるし、薔薇は画家に直接、花びらの正体を打ち明け、まぶたよりも薄くて敏感なその皮膜に潜むしっとりとした柔らかさについてささやき、家鴨は水に触れながら根元の乾いている羽毛について語り、煉瓦はごつごつした肌触りの口づけについて教えてくれる。 世界は思っているよりずっと広い だって全然違う方向へ向かうように見えていた2本の道が、どちらもずっと真っ直ぐに続いていたはずなのにいつの間にかまた1つに交わっていることがあるからだ … 死を除けば何も終わりではないし、変えられないものは何もない 死そのものでさえ、語り方によっては、多少の融通が利く p.80 ただし例外がある すなわち、見知らぬ者同士として公正な取引をした瞬間のきらめき、あるいは、友人同士として認め合い、同意するときだ。 それを除けば、私たちが生きているのは昆虫と同じ匿名の世界で、私たちは色の粉にすぎない 刃のような葉、鬱蒼とした夏の葉に落ちたかすかな光に向かって短い間、翼を羽ばたかせるだけの存在だ。 私が人生の中で10分間だけ知り合った相手に見られ、入られ、理解された話を聞いて欲しい。私が道を歩いていると、畑一面に異教徒の労働者が働いているのが目に入る 皆、白い服を着ているので、肌の黒さがさらに際立つ 彼らは畑を耕し、作物を植えている 私は何事もなく、その脇を通り過ぎる。 … 私が少し先へ進むと、男が後ろから声を掛ける 私の知らない言葉だ。 それは切迫していると同時に優しい言葉だ そこにある何かが私を引き留め、後ろを振り向かせる。 … その言葉の意味は?と私は言う。 ”同時に2つ以上のものである人”という意味だ、と男は言う。”期待を越える人”に対する呼び掛けだよ。 …道端の木立の中で、私は男に口づけをする そして詩神の1人、エウテルペが木の笛を吹くように男の性器を楽器に変える p83-84 さて、と彼は言った。こっちのカップに入っているのが”忘却の水”だ。こっちに入っているのは”想起の水”。先にこっちを飲むんだ。そして時間をおいて、こっちを飲め。 p120 Hが十一時に帰っていったとき、ジョージは文字通りそれを体感する。家はどんよりとする。まるで家の中のすべての明かりが、十分に温まる前の電球のように微妙に暗い状態で止まってしまったかのように。家は家のように目が見えなくなり、家のように耳が聞こえなくなり、家のように乾き、家のように硬くなる。ジョージは寝る前にすべきことをすべて済ませる。体を洗い、葉を磨き、昼間に着た服を脱ぎ、夜に着るべき服を着る。 p75
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〈監視カメラ〉パートと〈目〉パートの二つのバージョンがあり買ってみるまでわからない。私は目のルネサンス期のイタリア人男性画家パートから読み始めた。 ところどころで女性と男性、過去と現在、白人と有色人種、領主と人、快楽と美などいくつもの二項対立を無化する方向へ。 カメラパートは、現...
〈監視カメラ〉パートと〈目〉パートの二つのバージョンがあり買ってみるまでわからない。私は目のルネサンス期のイタリア人男性画家パートから読み始めた。 ところどころで女性と男性、過去と現在、白人と有色人種、領主と人、快楽と美などいくつもの二項対立を無化する方向へ。 カメラパートは、現代イギリス、母を亡くしたばかりの神経症的な女の子の物語。絵画を眺めるように二つの時間を誰かが見ている。 現実と虚構がわからなくなる。2つの物語はあらゆる仕掛けがあるようなのでどんな仕掛けがあるのかは、本そのものには書かないでという作者の希望があるようなので『実験する小説たち』でこれから確かめてみたいと思う。
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