家の歴史を書く の商品レビュー
「家族の歴史」に日本の歴史、在日コリアンの歴史、そして朝鮮半島の歴史がいかに関わってきたかという本。
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家族の生活史を書く。著者は在日コリアンの三世であり、一家は済州島から大阪に移ってきた歴史がある。社会学を専攻した著者は一家の歴史を書こうとして、伯父や伯母の話を聞きに行く。ところが、話を聞いたからと言ってそれがそのまま当時の生活史になるわけではないことに気が付く。済州島では4・3...
家族の生活史を書く。著者は在日コリアンの三世であり、一家は済州島から大阪に移ってきた歴史がある。社会学を専攻した著者は一家の歴史を書こうとして、伯父や伯母の話を聞きに行く。ところが、話を聞いたからと言ってそれがそのまま当時の生活史になるわけではないことに気が付く。済州島では4・3事件(사삼사건)が起きた頃が、伯父や伯母が小さかった頃だ。しかしいくら聞いても4・3事件のことは出てこない。怖いことはなにか?と聞いたら、姉の主人が酒を飲んで怒鳴って怖いとか、子供の目で見た周囲の様子しか覚えていない。それでも、当時の生活をありのまま話してくれる。それを著者は当時の事件やその背景を汲んで著書にしている。生活史とは聞いたことをそのまま書けば良いようなものではないのだ。一家は危険を感じて済州島を脱出する。そして大阪の猪飼野の親戚・知人を頼りに移住し、そこで生活の場を必死に作っていた。子供の時に家が貧しくて学校に通えなかった伯母さんが出てくる。大阪に来て弟は民族学校に通ったが、その伯母さんは年齢が行っていたので通えなかった。しかし結婚し子供ができ、幼稚園、保健所、等々に行かなくてはならず、言葉ができなくて泣くような思いを何度もしたので、夜間中学が出来たことを聞いて必死に通って言葉を覚えたという。言葉を覚えたら、役所や学校に行っても怖いことがなかったという。伯母さんや伯父さんたちの言葉は、ブツブツと切れ、時間経過が違っていたり、繰り返しがあったりするが、それが本当の生活者の言葉なのだろう。
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本書のことを知ったのは岸政彦さんがTwitterで絶賛していたからで、なるほど「はじめに」以前の目次、小見出しから既に波瀾万丈。インタビューで語られる経験やエピソードの数々がとにかく濃くて、それぞれの生きる力や運の強さ、逞しさにただただ圧倒される。つい先日『韓国文学の中心にあるも...
本書のことを知ったのは岸政彦さんがTwitterで絶賛していたからで、なるほど「はじめに」以前の目次、小見出しから既に波瀾万丈。インタビューで語られる経験やエピソードの数々がとにかく濃くて、それぞれの生きる力や運の強さ、逞しさにただただ圧倒される。つい先日『韓国文学の中心にあるもの』を読んだばかりだけれど、なぜこれまで朝鮮半島と済州島の歴史についてこんなにも無知無関心でいられたのか?学校で教わらなかったことを言い訳にしていた自分が恥ずかしい。
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あとがきが何より素晴らしい。額に入れて飾りたい。 「いないはずにされている人々は〜」 四三事件についてもう少し勉強しなければいけないなと思った
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在日コリアンの父と日本人の母との間に生まれた、本人がおっしゃるには「在日ハーフ」の女性、朴沙羅さんが、彼女自身にも見えなかった、もちろん、彼女の周囲の普通に暮らしている日本人には「見えない」歴史に挑んだ聞き語りでした。 視点の新しさや、登場人物のユニークさはいうまでもありませ...
在日コリアンの父と日本人の母との間に生まれた、本人がおっしゃるには「在日ハーフ」の女性、朴沙羅さんが、彼女自身にも見えなかった、もちろん、彼女の周囲の普通に暮らしている日本人には「見えない」歴史に挑んだ聞き語りでした。 視点の新しさや、登場人物のユニークさはいうまでもありませんが、著者自身の素直な真摯さに打たれました。 久しぶりに出会った「まっとうな本」でした。ブログにも案内を書きました。よろしければお読みください。 https://plaza.rakuten.co.jp/simakumakun/diary/202208030000/
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大阪弁であることが非常に読みやすく、面白みを増していたし、身近にいる在日三世達の多くの方達がなぜ、どのようにして、日本で生まれたのか知ることができて、非常に有意義だった。
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著者は、「はじめに」と「おわりに」、そして本編中でも繰り返し、この本を何のためにどのように書くべきかを自問自答している。学者である自分と生身の自分との間を揺れ動いている。オーラルヒストリーの心得としても読めるし、在日2世の文学的エッセイとしても読める。そこが面白い。親戚の語り口を...
著者は、「はじめに」と「おわりに」、そして本編中でも繰り返し、この本を何のためにどのように書くべきかを自問自答している。学者である自分と生身の自分との間を揺れ動いている。オーラルヒストリーの心得としても読めるし、在日2世の文学的エッセイとしても読める。そこが面白い。親戚の語り口を整理することと再現することを両立するのは大変だったと思うが、その場の雰囲気がよく伝わってくるものになっていると思う。また、大阪に済州島からの移民が多いと言う話は以前から聞いていたが、この本を読んで、その具体的な像を1つ得ることができたように思う。
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四三事件は、惨劇だったにもかかわらず、悲壮感を持って語られないのがいい。民族性だな、これは。二、三カ所思い切り笑った。
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