1,800円以上の注文で送料無料

深夜の博覧会 昭和12年の探偵小説 の商品レビュー

3.4

23件のお客様レビュー

  1. 5つ

    2

  2. 4つ

    7

  3. 3つ

    10

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    1

レビューを投稿

2020/08/15

一応ミステリーカテゴリーにしてみたが、むしろエンタメ要素の方が強いような。 昭和12年を舞台にした、個人的には好きなレトロ感ある設定。 少年探偵・那珂一兵が知り合いの記者と共に名古屋の博覧会を取材中、東京では思わぬ事件が起きる。 事件そのものは凄惨なのだが、一兵少年がその場に居合...

一応ミステリーカテゴリーにしてみたが、むしろエンタメ要素の方が強いような。 昭和12年を舞台にした、個人的には好きなレトロ感ある設定。 少年探偵・那珂一兵が知り合いの記者と共に名古屋の博覧会を取材中、東京では思わぬ事件が起きる。 事件そのものは凄惨なのだが、一兵少年がその場に居合わせていないだけに謎解きもどこか冷静。その方が返って良かったけれど。 乱歩先生の少年探偵団シリーズのようなテンポの良い語り口、でも中身は大人向け乱歩作品のようなエログロさがあったり、その後の歴史を暗示する陰鬱さも垣間見えたり。 事件の一番の謎は、名古屋にいた筈の人間がどうやって東京で殺されたのか、そしてなぜそこまで大掛かりな事件を起こさねばならなかったかという、HOWとWHY。 HOWに関してはそれほどは驚かなかったが、WHY部分とその結末には苦しくなったり辛くなったり。 そして一兵少年の片思いの行方に関わる、ある事件に関しても、その後の歴史を知る読者側としてはWHYは分かるのだが、一兵少年には理解出来ないというところが、なんとも苦いような。 謎解きというよりは、一つの歴史の裏側を垣間見ているような、大きな歴史のうねりの中で、こういう前振りが色んなところで起きていたのかなというちょっとしたドラマを見せてもらったような、そんな作品だった。 調べてみると一兵探偵の作品は他にもあるようだ。 機会があればまた読んでみたい。

Posted byブクログ

2018/10/16

サブタイトルにある「昭和十二年」、これがキーワード。巻末の参考資料の多さからも、あの「時代」の時局、世相、風俗を描きたかった辻先生の熱意がくみ取れるし、それが実際に読んでみると作品に反映されているところが凄い。 史実上の人物や出来事を絡ませつつフィクションの世界で遊ぶ。舞台がこの...

サブタイトルにある「昭和十二年」、これがキーワード。巻末の参考資料の多さからも、あの「時代」の時局、世相、風俗を描きたかった辻先生の熱意がくみ取れるし、それが実際に読んでみると作品に反映されているところが凄い。 史実上の人物や出来事を絡ませつつフィクションの世界で遊ぶ。舞台がこの時代の銀座、名古屋で開催された平和博覧会、そして世界を逍遥してきた自由人たる華族のお殿様が大金を注ぎ込んで作った慈王羅馬(ジオラマ)館……と舞台も魅力的。 当時の風俗描写はもちろん、主人公である少年画家の価値観、思考回路、感覚が当時の空気を吸った人でなくては描けないモノだなぁと思いました。 これら以外にも、アクションシーンにお色気エログロ、当時の探偵小説や文壇ネタと要素の盛り込み方のバランスが絶妙。これは流石、辻先生の真骨頂だなぁと。 昭和十二年の探偵小説、堪能いたしました!!

Posted byブクログ

2018/09/17

現在86歳である辻先生の新作は堂々たる本格ミステリ。これだけで凄い。参考資料の数もハンパ無く、近年寡作なのは一作に情熱を注いでいるからであろうと想像がつく。 内容は昭和12年の東京と名古屋を繋ぐ不可能事件。トリックに目新しさは無かったが、手掛かりの示し方は相変わらず老獪。個人的に...

現在86歳である辻先生の新作は堂々たる本格ミステリ。これだけで凄い。参考資料の数もハンパ無く、近年寡作なのは一作に情熱を注いでいるからであろうと想像がつく。 内容は昭和12年の東京と名古屋を繋ぐ不可能事件。トリックに目新しさは無かったが、手掛かりの示し方は相変わらず老獪。個人的には余分な描写が多過ぎると思ったけど、それもひっくるめての辻ワールドなのだろうな。 謎を解く探偵は、他のシリーズで脇役だった那珂一兵。こういう遊び心にも作者の余裕を感じるね。

Posted byブクログ