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消滅世界 の商品レビュー

3.7

272件のお客様レビュー

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2024/09/28

ぜひ読んでみてと勧められたので。こういう清潔な世界は憧れるけれど、恋愛観や家族観がどうあれシンプルに社会性のない私は、『楽園』でも爪弾き者にされるのだろうと思いながら読みました。そして村田沙耶香の本は「正常であること」に囚われている人にこそ、より刺さるのだろうと思いました。

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2024/09/25

性と愛を切り離す世界。最初の違和感に慣れてそれを正常と考えてしまったら村田沙耶香の策にはまってる。実際には人の身体と心は一つなわけで、家族への愛情と恋人への愛情を切り離して生活するのは難しいと思うけど。子育ての社会主義。全員が「お母さん」なのはゾッとした。

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2024/09/22

初めて村田沙耶香の作品を読んだが、大いに衝撃を受ける1冊だった。 ディストピアを求めて出会った消滅世界は、僕が想像している終末ではなく、逆にユートピアを思い起こさせる世界だった。 しかしながらそこに確かに存在する進化を求めるからこその荒廃は不思議な気味の悪さと、不思議なリアリティ...

初めて村田沙耶香の作品を読んだが、大いに衝撃を受ける1冊だった。 ディストピアを求めて出会った消滅世界は、僕が想像している終末ではなく、逆にユートピアを思い起こさせる世界だった。 しかしながらそこに確かに存在する進化を求めるからこその荒廃は不思議な気味の悪さと、不思議なリアリティを感じさせる。 スティーブン・ホーキンスは、今以上にAI技術が発達すればそれは世界の崩壊を招くと預言している。それはあながち間違いではないと思う。 種の繁栄が世界の崩落を招くことを描くこの皮肉に満ちた小説は、心の底から末恐ろしかった。

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2024/09/08

 オブラートは苦味を包み込み苦を感じさせずに味覚を感じる舌をやり過ごす。苦い事実を無かったかのようにカモフラージュする便利で薄い紙だ。村田さんの描写はオブラートを使わない。ところが、奇妙な世界観が羞恥を伴う現象も定番の話題かのように錯覚させる。  多様化、公平性を第一義に掲げる時...

 オブラートは苦味を包み込み苦を感じさせずに味覚を感じる舌をやり過ごす。苦い事実を無かったかのようにカモフラージュする便利で薄い紙だ。村田さんの描写はオブラートを使わない。ところが、奇妙な世界観が羞恥を伴う現象も定番の話題かのように錯覚させる。  多様化、公平性を第一義に掲げる時代。ジェンダーフリーの恋愛は不可避の男女差に直面して子孫を残す意欲を諦めざるを得なくなる。限りなく低い可能性はいつかテクニカルな解決策で可能な現実を育む。しかし何かを強引に進めるとあと工程の何かに皺寄せがいく。個性を認め許容から優遇に変貌して常態化する異常な通常は尊重した筈の個性を消失させる。  だいぶ前になるが、男性でも生理の辛さを体感できる装置を開発した方がいた。妊娠を体感する研究があっても不思議ではない。

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2024/09/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

子どもは人工授精で授かるものとなり、夫婦間の性交は近親相姦としてタブー化された世界。 ヒト同士の恋愛をしたことがない人も珍しくなく(一般的にはキャラと呼ばれるいわゆる二次元の相手に恋をする)、結婚して家族を持つことにこだわる人も少ない。 しかし主人公の雨音は愛し合う父母の性交によって生まれた。幼少期から、母はそれが正しいことだと雨音に言い聞かせて育てたが、雨音は嫌悪感から常に自分が正常な感覚でいることを確かめずにいられない。 実験都市に移り住み、初めは異様な光景に拒否反応を示していた雨音が、その世界の正常にスイッチが切り替わる瞬間の怖さといったら。 どこかで母の呪いが勝って誰かと家族を作るのかと思っていたので、このラストは想定していなかった。

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2024/09/05

この本の世界観に、クリーンで共感できる部分があるのは、 常識ではキラキラしててあたたかくて幸せなはずの恋愛や性に、 実はどことなく汚さを感じているからかも。

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2024/09/30

読んでいて現実味を感じにくいけれども、否定はできない恐さがありました。私が今信じている常識に「合理性」「正しさ」なんてあるのかと懐疑的になりました。 村田さんの作品は私たちに世界の常識そのものを三人称で観測する「視点」を与え、違和感に気づかせてくれます。

Posted byブクログ

2024/08/16
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

近未来SFのような雰囲気もあり面白く、読む手が止まらなかった。 ストーリーの中で投げかけられる問題は、読みやすい文章に反してシリアスなものだと思った。 私がこの本のキーワードを上げるとしたら「洗脳」。 当たり前のように存在する現代社会のルール、その軸の上で当たり前のように生活する私たち。 後半読み進めていくうちに狂気じみて、とても大きな問題を突き付けられたように感じハッとさせられる。 村田沙耶香さんの本を読んだのは『コンビニ人間』以来だったが、他の作品も読みたくなった。 とても面白かったです。

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2024/08/06

2024.14 図書館 なかなか異常な世界をあたかもそこで過ごしたかのように書く筆者凄い 狂った世界だなと思って読んでたけど、今の日本や世界がこうなる可能性もゼロじゃないなって思えてしまった 昭和の時代の働き方やジェンダーから考えたら令和の現状って予想もできないものだと思う ...

2024.14 図書館 なかなか異常な世界をあたかもそこで過ごしたかのように書く筆者凄い 狂った世界だなと思って読んでたけど、今の日本や世界がこうなる可能性もゼロじゃないなって思えてしまった 昭和の時代の働き方やジェンダーから考えたら令和の現状って予想もできないものだと思う 自分は自分の子供を育て切るし狂った実験都市なんて染まらないと言っていた主人公がだんだんと世界に染まっていき、最後には自分の母親をも染めようと奇行に走るラストは最強の後味悪さやった どういう生き方をすればこの世界をかけるんやろう

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2024/08/04

人工授精で子どもが生まれることが正常であり、夫婦間のセックスで子どもが生まれることは異常という、パラレルワールドの日本を舞台にしたお話。人が恋情を覚えるのは二次元のアニメキャラなどが多く、実在の人間に恋する人の方が少数派である。夫婦間のセックスも近親相姦として忌避されており、結婚...

人工授精で子どもが生まれることが正常であり、夫婦間のセックスで子どもが生まれることは異常という、パラレルワールドの日本を舞台にしたお話。人が恋情を覚えるのは二次元のアニメキャラなどが多く、実在の人間に恋する人の方が少数派である。夫婦間のセックスも近親相姦として忌避されており、結婚した夫婦は恋愛は外ですることが普通となっている。 二次元の恋が多数派で実在の人間との恋が少数派、恋人同士でもセックスはしないカップルが多い…など、現実世界と反転した設定が面白かったです。 正常も異常も時代によって変化するものであり、本能だと思われているものも社会の中で植え付けられた価値観に過ぎない、ということを考えさせられました。 恋愛至上主義的な現実に辟易している自分なんかは、こういう世界の方がむしろ楽だなーと思ってしまいました。

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