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ノモレ の商品レビュー

3.9

42件のお客様レビュー

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2024/03/24

秘境になぞ行かなければいいのに。 アフリカへ、エベレストへ、南米アマゾンへ。 SAF燃料使用の航空機に乗って、太陽光発電パネル付きのコテージでバイオトイレを使い、野生動物とは適切な距離をとる。なぜにそんな旅が必要なのか。 もちろん分かっている。 素晴らしい自然や伝統文化を活用し...

秘境になぞ行かなければいいのに。 アフリカへ、エベレストへ、南米アマゾンへ。 SAF燃料使用の航空機に乗って、太陽光発電パネル付きのコテージでバイオトイレを使い、野生動物とは適切な距離をとる。なぜにそんな旅が必要なのか。 もちろん分かっている。 素晴らしい自然や伝統文化を活用したエコツーリズムを推進することで、その“観光資源”を守っていくために行政による保護がさらに進む。 そうして先住民の生活環境は向上し、自然や文化も保全される。観光業がなければ、森は大豆とコーン畑に代わり、下請け労働者になるしかない。 違法伐採により動植物もますます失われてゆくだろう もう後には退けないのだな。 唯一の正解に付き従って、残された限りある時間を少しでも引き延ばせるよう、僕らはサスティナブルにサヴァイヴするしかない。 2086年まで人は増え続け、人が減っても圧倒的に消費量は増加する。地球には金を産まずに放っておける場所などもはやない。 そんな僕のつまらない書き込みは、この素晴らしく真摯なノンフィクションに対する書評ではない。 文明に馴化した先住民族のリーダーであるロメウは政府の要請により、密林の奥に住む文明を知らぬ謎の部族と接触を図る。 彼らとは言葉が通じるのだ。彼らは、一族の伝承に伝わる曽祖父が100年前に森の中で生き別れたノモレ(仲間、友)なのか。 感染症に対する免疫を持たない先住民族は、完全に隔絶しない限りは生き残る術はない。 保護して文明化するか、そっと絶滅を待つかの二択でしかない。 一族の都市での苦渋に満ちた生活を知るロメウに答えがあるわけではない。 入植してきた白人によって文明化させられた元先住民族の視点から描かれる、言葉が同じであっても理解しあうことができない人々への熱い思いと苦悩の物語に、感情が揺さぶられる。 だがしかし、と思う。 誰にも答えることが能わぬ問いを考え続けることすら、現代のスピードは許さないだろう。 筆者によれば、本書が刊行された2018年時点で、この謎の人々が暮らす森ーマヌ国立公園ーは、年間二万人を超える外国人観光客が訪れているのだから。 地球には秘境などもはやないのだ。

Posted byブクログ

2023/11/18

アマゾンの奥地に住む文明と接触の無い先住民のことをイゾラドと呼ぶらしい。 彼等はアマゾン流域に住んでいるので、ペルーやブラジルの国が保護している。本書を読むと彼らとの交流の難しさがよく伝わってくる。 彼等はとにかく感染症に対する免疫がないので、外部の人間と交流して菌を貰おうものな...

アマゾンの奥地に住む文明と接触の無い先住民のことをイゾラドと呼ぶらしい。 彼等はアマゾン流域に住んでいるので、ペルーやブラジルの国が保護している。本書を読むと彼らとの交流の難しさがよく伝わってくる。 彼等はとにかく感染症に対する免疫がないので、外部の人間と交流して菌を貰おうものなら、あっという間に一族が死に絶えたりする。 外部と接触しないような方法をとったとしても、広大なアマゾンには密猟者が勝手に入って来るので管理が不可能。結局、じわじわと彼等が望めば接触し文明化していく方法にしているようだ。 意外な事に彼等は泳ぎは知らないらしい。 今回コロナの流行でどうなったか心配。

Posted byブクログ

2023/10/30

素晴らしいノンフィクション。21世紀の今なお、アマゾンの奥地には、文明人との接触もなくどこに何人いるかも分からず、セスナに向かって弓矢を射ようとする先住民族が存在することに驚き。

Posted byブクログ

2023/07/06

ノモレとはアマゾンの未開の地に住む原住民の言葉で、友だちという意味だ。 もと先住民で、今は政府の機関で原住民の生活を保護しているロメウの話だ。原住民は、現代の暮らしに馴染むのが幸せなのか、それとも、今のまま自給自足の暮らしをすることが幸せなのか。答えは出ない。

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2022/05/01

実話なのが嘘みたいで、まるでフィクションのような話。前作の方が臨場感はあったが、淡々と進む今作も違う良さがあった。

Posted byブクログ

2021/07/06

2019年に読んだ本の中でダントツのナンバー1だった国分拓さんのノモレ。 イゾラドと呼ばれるアマゾンの奥地に住む先住民と、文明世界に住む人たちとの緊張感をもった関係性が描かれた一冊。 アマゾンの奥地から、ほとんど裸姿の家族が突然文明化された人たちの前に現れた。 その数は日を追...

2019年に読んだ本の中でダントツのナンバー1だった国分拓さんのノモレ。 イゾラドと呼ばれるアマゾンの奥地に住む先住民と、文明世界に住む人たちとの緊張感をもった関係性が描かれた一冊。 アマゾンの奥地から、ほとんど裸姿の家族が突然文明化された人たちの前に現れた。 その数は日を追うごとにどんどんと膨れていき、ついには集落を襲撃し、殺人事件まで起きてしまった。 そんな世界が2020年になろうとしている今も存在するのだ。 まさに圧倒的な本。 なんなんだ、この世界は。 著者の国分さんは、ヤノマミでも衝撃的な本を書いたが、この本は更にそれを超えてきた。 この本からは、私たちが当たり前のように過ごしている常識や文化がいかに限定的なものなのかを感じるだろうし、幸福とは?暮らしとは?と、問いを与えられたような気がする。 世界の成り立ちが描かれた一冊。 絶対的なオススメ本。

Posted byブクログ

2021/05/02

【感想】 本書の結末を一言で要約すると「時間切れ」である。 イゾラドとの不運な邂逅――イネ族が襲撃され殺された事件から、何十回にわたって接触が試みられた。 敵意はない、われわれは君たちの「ノモレ」だ――。 文明人側は襟を開き続けた。しかし、和解しようと幾度となく続けられた接触も...

【感想】 本書の結末を一言で要約すると「時間切れ」である。 イゾラドとの不運な邂逅――イネ族が襲撃され殺された事件から、何十回にわたって接触が試みられた。 敵意はない、われわれは君たちの「ノモレ」だ――。 文明人側は襟を開き続けた。しかし、和解しようと幾度となく続けられた接触もむなしく、イゾラド側は最終的に姿を消し、その後の消息はわからなくなってしまった。 ここに、未開の部族を保護する難しさがある。 相手は言葉も倫理も違う異星人のような存在だ。 彼らとのやり取りは、伝染病がうつる可能性を考慮し最低限の時間で行わなければならない。また、規範となる倫理観が違う以上、「何故私たちが仲良くしなければならないのか」を説明するのは難しい。なんせ、相手は歩み寄りを見せず、ただ食料となるバナナを要求し続け、それが尽きれば腹をたてるような連中なのだ。対話がプラスになっているのかどうかも不明であり、その先に果たしてメリットがあるのかも怪しい。 また同時に、文明人側の事情も、イゾラドの保護を難しくしている。 それは政府と地元住民(元先住民族のイネ族)とのすれちがいである。 政府は先住民族の保護をうたっているが、裏の心理としては、イゾラドを手懐けて管理下に置きたい。観光業はペルーの主要な外貨獲得手段であり、イゾラドの存在は貴重な観光資源でもある。ドル箱である外国人観光客を殺傷させないように、細心の注意を払いながら観光スポットとしても活用したいのが政府の本音だ。 しかしながら、同胞を殺されたイネ族たちは黙っていない。 彼らにとってみれば、先住民とは自分たちと親しい存在だ。それであるがゆえに、彼らを保護しようという観念よりも、森のルールにのっとり彼らを処罰することを望む。 もちろん、彼らも数十年前までは未開の部族だった。しかし、依然自分たちは白人コミュニティの中ではマイノリティであり、貧困率も群を抜いて高い。彼らは彼らで今日の食い扶持を探さねばならず、それを潰したイゾラドに報復したいと思うのは真っ当な感情である。 彼らは「元先住民」であるがゆえに理解できてしまうのだ。綺麗事だけではやっていけず、部族の窮状を解決するには白人社会に分け入るしかないと。 先住民を保護しようという政府と、先住民を駆逐しようとする元先住民。 両者の板挟みになったロメウが折衝に難儀したとしても、とうてい責めることなどできないだろう。 その後、モンテ・サルバードに出現していたイゾラドは、2016年1月を境に一度も姿を現してはいない。村を再び襲うことも無ければ、バナナを貰いにやってくることも一度もない。 今も、137人の大集団はどこかへ消えたままだ。 新たな拠点に映ったロメウは、イゾラドと再会する日を夢見て今も尽力している。

Posted byブクログ

2021/02/20

かけ離れた世界を知ることは、自分を知ることである。 文明の届いていないアマゾンの奥地でのドキュメンタリー。 我々の幸せとしているものはなにか、それは本当にそうなのか、当たり前と思っていたものの基盤がぐらぐらゆれる。そのゆれはときに怖くもあるけれど、なぜだか求めてしまうのであった。

Posted byブクログ

2021/01/16

100余年前、南米アマゾンからボリビア、ペルーにかけて入り込んだのは新大陸の夢を追い続けたポルトガル・スペイン人。首に鎖を巻き付けられて捕獲された原住民が写真に載っているのはその頃。 土地は「誰のものでなく」ゴムは無尽蔵・・至る所で取りつくした。モノは溢れているのに、人が足りない...

100余年前、南米アマゾンからボリビア、ペルーにかけて入り込んだのは新大陸の夢を追い続けたポルトガル・スペイン人。首に鎖を巻き付けられて捕獲された原住民が写真に載っているのはその頃。 土地は「誰のものでなく」ゴムは無尽蔵・・至る所で取りつくした。モノは溢れているのに、人が足りない・・てなわけで原住民を奴隷にし、足りないとアフリカから黒人を連れて来た。500キロも逃げ延びた原住民もいたというから驚いた。その時、二手に分かれ互いをノモレとよび・・そのまま再開できないことが当然だった。 NHKで見た今冬の4編は2回目。何度見ての衝撃。さすがの巨額予算の放送局だと舌を巻く。 この本は、文明とイゾラドの橋渡しをしてくれた若きイネ族の男性の視点を通してほぼ 語られて行く。 放送で出て来た家族・・クッカを中心とした家族との交流はバナナを間においての3カ月とわずかな会話で突然終了・・彼らはジャングルの奥深くに戻って行った。1万年も前から生きてきても病原菌に対する免疫力はなくすぐ死ぬ。保存を言う概念を教える事すら困難を極める。政府は彼らを「管理する」しか道はないと言い切る。 文明人が暖衣飽食の中で「幸せは何か」と考えることすら道化だと思った。

Posted byブクログ

2021/01/05

 作者はNHKのディレクターで、本書はNHKスペシャル「大アマゾン 最後のイゾラド」から生まれたノンフィクション。「イゾラド」とは文明と接触していない先住民を指す。  主人公は、ペルーの先住民の若きリーダー・ロメウ。彼の曽祖父はゴム園で奴隷にされ、100年以上前に農場主を殺し、二...

 作者はNHKのディレクターで、本書はNHKスペシャル「大アマゾン 最後のイゾラド」から生まれたノンフィクション。「イゾラド」とは文明と接触していない先住民を指す。  主人公は、ペルーの先住民の若きリーダー・ロメウ。彼の曽祖父はゴム園で奴隷にされ、100年以上前に農場主を殺し、二手に別れて逃げた。曽祖父らは故郷に逃げ帰ることができたが、密林に消えた仲間たちとは会うことがなかった。  突然現れたイゾラドは、生き別れになった「ノモレ」(仲間の意)の子孫ではないのか?  これだけの背景があれば、面白くないはずがない。文明化とか開発とがの意味、人間の幸福とはいったい何かとか考えさせられる。

Posted byブクログ