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幸福とは何か の商品レビュー

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14件のお客様レビュー

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2019/01/26

「幸福」は静かで穏やかな状態という筆者の考えは共感できる。 でも、すべての人にとってそうなのかというところは疑問に思う。賑やかな状況にいることを幸福と感じる人もいるかもしれない。 幸福は主観的なものだから、改めて論じにくいものと思った。

Posted byブクログ

2018/11/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 担々と進む日々を切り裂く唯一の変化が、白いねこの死を悼むねこの号泣の場面だ。白ねこを抱き、大口を開けて泣くとらねこの絵も強烈だが、「夜に なって、朝に なって、また 夜に なって、朝に なって、ねこは 100万回も なきました」という文も強烈だ。 が、悲しみの強烈な発現は不自然ではない。それまで泣くことのなかったねこが腹の底から100万回も泣きに泣くというのは、白いねこへの愛情の深さと、白いねことの共同生活の充実ぶりをものがたって余りある。100万回も生きて死に、死んで生き返ったねこは、白いねことの充実した日々を生きることによって、本当に生きたといえる時間をもつことができたのだ。(p.28)  幸福は、普通には、喜びや、うれしさや、安心感といった感情を心持ちと関連づけて考えられてきたし、わたしたちも序章ではそのような観点に意を用いてきたが、アリストテレスは幸福を感情と結びつけて考えようとしないし、また、幸福が偶然に左右されるものとは考えない。そうではなくて、幸福は人間の思考と行動に深く結びつき、思考と行動からーもっといえば、すぐれた思考と行動である徳からーまっすぐに出てくるものだと考える。(p.61) 『道徳感情論』において教官が人間の感情の根幹をなすのに見合って、取引と交換は『国富論』において人間の経済活動の根幹をなすものとしいて提示されていると思える。共感が人と人のあいだに成立す社会的感情であるのに見合って、取引と交換は人と人とのあいだに成立する社会的行動だ。人間が本来、孤立した一個人ではなく、寄り集まってたがいに関係しつつ生きる社会的存在であることが、ここでもしっかりと踏まえられている。社会的存在である人間の、感情面での土台となるのが共感であり、行動お面での土台となるのが取引と交換であるかのごとくだ。(p.151) 『道徳感情論』も『国富論』も、幸福を主題とする書物ではないし、幸福を目標に掲げる書物でもないが、人間をその社会性においてとらえる人間観ないし社会観は幸福論への門戸を大きく開くものだった。人間が他人とかかわって社会を生きることは、感情面においても行動面においても、幸福の可能性を秘めた営みだという確信がスミスにはあり、その確信が二つの主著を明るく開かれたものにしたのだった。(p.159)  わたしには明々白々なことだが、人は幸福になろうと思わなければ絶対に幸福にはなれない。だから、自分の幸福を望まなければならないし、自分の幸福を作り出さねばならない。  もっといわれて当然なのだが、幸福になることは他人にたいする義務でもあることだ。幸福な人しか愛されない、とはよく耳にするものいいだけれども、幸福な人は愛されて当然だし、愛されるに値する人であることが忘れられている。というのも、わたしたちみんなが吸う空気のなかには不幸や憂鬱や絶望がふくまれているからで、力強い実例を示すことによって瘴気を払いのけ、みんなの生活をおなにほどか浄化してくれる人にたいしては謝意を表し、勝利の栄冠を授与しなければならないのだ。(pp222-223 アラン『幸福論』)  制度も、技術も、物も、情報も、人間の手になる人為的・人工的なものでありながら、人為的・人工的な世界の真っ只中に生きる人間が自分と分裂し、社会と分裂して生きることを強いられる。そこに現代人の不幸の根本があるとラッセルはいう。思い返せば、個人が自己への興味の虜になり、孤立した自閉の世界を生きるという病理現象も、同じ事態を別のことばで表現するものにほかならなかった。孤立と自閉へと人びとを追いこむ文明の進歩は、見かたを変えれば、人びとに退屈な状態を強いるものであった。(p.247)  幸福が穏やかさ、安らかさ、ゆるやかさを基調とすることはわたしたちがくりかえし確認してきたところだ。進歩主義につきまとう公立・迅速を尊ぶ心性や、効率と迅速を求めるがゆえの、競争、緊張、労苦、忍耐は、幸福の基調たる平穏さとうまく折り合うものではなく、むしろ平穏さを乱し、安らかさを壊す可能性の大きい心の動きだからだ。実際、個人が、あるいは集団が、効率のよさをめざし、競争に勝つべく必死に努力と忍耐を重ねているとき、当の個人ないし集団が穏やかでゆるやかな幸福の境地にあるとは思えないし、努力と忍耐のそのむこうに幸福が遠望されているとしても、努力と忍耐が度を越せば、望まれる幸福もゆるやかな平穏さにそぐわぬ熱を帯びてしまう。熱を帯びた幸福や幸福への願いは、幸福の本性にそぐわない。(pp.262-263)

Posted byブクログ

2018/08/20

「幸福」とは何か。巻頭に掲載された水墨画に見せながら、時には詩文を読ませながら、「幸福」の問題へといざなう。人単位の論考なので、ぶつ切れ感はあるものの、各人の考え方がよくわかる。やはり、「幸福」は至極個人的な状態なのである。

Posted byブクログ

2018/06/22

古代ギリシャのソクラテス、アリストテレスからヒューム、アダム・スミスを経て、二十世紀へ。「幸福」をキーワードにたどる哲学史

Posted byブクログ