歴史と人生 の商品レビュー
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作品そのものの第一印象はちょっと残念、あーあー、という感じ。 というのも、本作はこれまでの著作集の良い部分などを部分部分取り出して、編者が「リーダーとは」とか「漱石について」などと章立てをしたものゆえ。 個人的には誤った理解でも良いから「直接」著者を感じたかった。編者の介入なくダイレクトに著者のエッセンスを吸いたかったのです。まあ選んだ自分がダメなんですが・・・。 ・・・ とはいえ、とはいえ。 やはり瞠目するものが幾つもありました。 まず、日本語が骨太で美しい。 折々に俳句などを挟み、風雅でかつ洒脱な文章を書かれる方。筆者は歴史探偵というだけあって色々と博学なのですが、言葉にも歴史があります。どうやら万葉の時代はもっと荒々しく情熱的だったとか、そういう話にもへえーとなりました。日本語の起源や、万葉の世界、このあたりもいつか攻めたいところです。 ・・・ 次に良かったのは、明治の文豪の描写。 永井荷風の戦前戦中の徹底した戦争反対とその孤高ぶり、漱石の「学者ではなく著者として100年1000年単位で名を遺す」決意。 このようなことを読むにつけ、これは荷風も漱石も読まねばならないなあ、と思わせるのです。 ・・・ そして最後に反戦への思い。 やはり半藤氏は戦争経験世代なので、日本人という集団になると流されやすい国民(どこもそうなのかな?)がすっかり戦争を忘れてまたぞろ9条を捨ててしまうのではないかと危惧。 これは深く膝を打った点でした。 マスメディアやYoutubeもそうですが、お金という資本中心の世界で動いています。正しいことを報道するよりも、より視聴者・スポンサーが集まる見せ方をするわけです。自分が豊かになり、自分が気持ちよくなるために。 例えば戦争主義者のインフルエンサーが政治家、よしんば首相になったらどうか。「いやあ、それとこれとは違うでしょ」というのが常識的な反応。でも私自身は自信を持てません。戦争を経験していないから。 どれほどあっという間にあれよとあれよと戦争へと突き進んだのか、半藤氏は体感していたのです。このあたりもまた興味深いポイントです。 ・・・ ということで初半藤作品でした。 自称歴史探偵という半藤氏ですが、歴史が好きになりつつある私には、半藤氏は逝去した年の離れた憧れパイセンみたいな感じ。でも全然堅苦しくない。半藤氏が好きだという永井荷風や夏目漱石含め、今後読んでみたいと思います。
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半藤さんの本は本書を入れてまだ6冊しか読んでいない。「歴史と戦争」という本もそうだったが本作は半藤一利作品をかなり読んだ人が半藤作品の良さを再認識するための本であって半藤作品の初心者はもっとほかの作品から読んだ方が良いなと思った。80冊以上の自著のエッセンスを抽出した本なので話題...
半藤さんの本は本書を入れてまだ6冊しか読んでいない。「歴史と戦争」という本もそうだったが本作は半藤一利作品をかなり読んだ人が半藤作品の良さを再認識するための本であって半藤作品の初心者はもっとほかの作品から読んだ方が良いなと思った。80冊以上の自著のエッセンスを抽出した本なので話題がバラけてはいるが歴史エッセイだと思えばいい。一貫しているのは反戦、平和主義だろうか。それと夏目漱石や永井荷風に対する敬愛の文も多い。自分は永井荷風は読んだことはないが、夏目漱石はこれまでに14冊読んだ。しかし本書には夏目漱石の意外な素顔が書かれており、例えば反戦思想を持っていて~とかは全然知らなかった。詳細→ https://takeshi3017.chu.jp/file9/naiyou27606.html
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さまざまな人の言葉を引用して、平和を考えさせてくれる一冊。 ノートに書き留めた。 平和って尊い。 その尊さをわかってないのは、日本人だからなのかも。
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以前に読んだ歴史と戦争が重い内容だったので、覚悟を決めていたのだが、楽しく読ませてもらった。特に第二章は、煩悩、ソクラテス、ナポレオン、チャーチル、マッカーサー、鴨長明、秀吉、光秀、日蓮、沢庵和尚、ちゃきちゃき、ジョン万次郎、四月入学、ヨーソロ、一等国、万歳、アンネ・フランクなど...
以前に読んだ歴史と戦争が重い内容だったので、覚悟を決めていたのだが、楽しく読ませてもらった。特に第二章は、煩悩、ソクラテス、ナポレオン、チャーチル、マッカーサー、鴨長明、秀吉、光秀、日蓮、沢庵和尚、ちゃきちゃき、ジョン万次郎、四月入学、ヨーソロ、一等国、万歳、アンネ・フランクなどなど多岐に渡るこぼれ話がこれでもかと出てくる。勉強になった。
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著者の平和を思う気持ちが痛切に感じられる。この人からすると、現在の日本が歩んでいる方向は危なかしくて仕方がないだろう。「後の人が歴史からは何も学ばない」ということが歴史の最高の教訓」「過ちはもう繰り返しません」と誓ったところで。ほくそ笑んでマルスは耳をかそうとしない」というのは凄...
著者の平和を思う気持ちが痛切に感じられる。この人からすると、現在の日本が歩んでいる方向は危なかしくて仕方がないだろう。「後の人が歴史からは何も学ばない」ということが歴史の最高の教訓」「過ちはもう繰り返しません」と誓ったところで。ほくそ笑んでマルスは耳をかそうとしない」というのは凄い皮肉だ。「正義の戦争はないし、名誉の戦死もありえない」全く賛成である!「太平洋戦争の歴史は、目撃せねばならない事実。歴史的教訓というより、まだ生々しい現実」「尖閣問題は棚上げする。30年も経てば世界に国境はなくなるのじゃないか」成程そういうことも言えるか‼ここまで言い切るのは痛快。後半は漱石や荷風の話が出てきたり、よもやま話になると普通の人に感じてしまう。
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幻冬社編集者による抜粋もの。本選びのきっかけにはなる。三四郎『滅びるね』のくだりは、有名らしいけれども知らなかった。 あと、山口誓子の句 海に出て 木枯らし帰る ところなし が、神風特攻隊についての句だと知り、衝撃を受けた。学校で習った時は、誰も教えてくれなかったな。
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これは個人的に、ものすごくハマった。恐らく半藤氏のファンの方であれば、これまで読まれてきた著書のエッセンスだけを切り取ったような本であるので、復習とか再確認という意味でよくまとめられた本となるのだろう。 今まで著者と出会えなかったのは、まったく自身のセンサーの問題だが、遅ればせながらでも、今回著者と出会えたことは大きな収穫だ。 経歴に、松本清張、司馬遼太郎らの担当編集者をつとめたとあり、「週刊文春」や「文藝春秋」の編集長、専務取締役を経てから、作家となったとあり、Wikiで調べれば、夏目漱石が義父という。もうこれだけで、作家としての興味レベルは最上級。 ある時期から、「歴史探偵」を名乗られ、特に太平洋戦争史、昭和史のなぞ解きに力を入れられている。本書の帯にもスーツ、ネクタイ姿にハットをかぶる、探偵っぽい著者の写真があったりするのはそれを意識をしてのことだろうか。 本書には、多くの作家にまつわる話が登場する。これまで書かれた作品からエッセンスを抽出されたような本であるから。 著者がかかわりを持たれた、司馬遼太郎氏、松本清張氏はもちろん、著者が敬愛してやまないという勝海舟、夏目漱石、永井荷風、坂口安吾の各氏にまつわる話は、源流が深いにも関わらず、本書ではエッセンスのみが抽出されているため、どうしてもその引用元の著書を読んでみたくなる。 しかも本書は80冊以上の著書から編集されたものだそうで、普通なら話題も小間切れになりがちだが、うまくストーリー性を持たせた編集となっているので、本書だけ読んでも満足が完結する。 最後の章の「近ごろ思うこと、憂うこと」では、原発のこと、集団的自衛権のこと、従軍慰安婦のこと、憲法のことなど、賛否議論となるようなテーマについて、明確に自身の見解を言い切られており、キレ味も爽快である。歴史の教訓に裏付けられた正論を述べられてるなと感じる。 先にブッフェを楽しませていただいたようで、次は各コース料理のほうも賞味させていただきたい。
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