ラディカル・オーラル・ヒストリー の商品レビュー
オーストラリアのアボリジニに対するフィールドワークから、その歴史を描く内容のように見えて、その実「歴史とは何か」「歴史は何のためにあるのか」という根源的な問題に一石を投じようとする意欲作(この本の場合は一石ではなく一片の花びらと言う方がいいのかもしれないが)。その後研究を重ねるこ...
オーストラリアのアボリジニに対するフィールドワークから、その歴史を描く内容のように見えて、その実「歴史とは何か」「歴史は何のためにあるのか」という根源的な問題に一石を投じようとする意欲作(この本の場合は一石ではなく一片の花びらと言う方がいいのかもしれないが)。その後研究を重ねることで著者の意見がどのように変化していくか非常に興味深かったのだが、この本(文庫の元になった単行本。2004年発行)の出版直前に病で夭逝されたとのこと。残念である。
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この本はすごい。 徹底的に「歴史とは何か」を自分の頭で考え抜いている。 ポストモダンで「真実は複数」と言われるけど、それを「頭」ではなく「心」で引き受けようとしている。 「尊重」の裏にある、隠された権力に敏感にならなければならないことを教えてくれる。 すごい本だ。早逝され...
この本はすごい。 徹底的に「歴史とは何か」を自分の頭で考え抜いている。 ポストモダンで「真実は複数」と言われるけど、それを「頭」ではなく「心」で引き受けようとしている。 「尊重」の裏にある、隠された権力に敏感にならなければならないことを教えてくれる。 すごい本だ。早逝されたのが悔やまれる。
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インタビューされる側を尊重する作者の姿勢が印象的。インタビュー調査ってする側とされる側の権力関係がつくられがちだけど、学術的な都合から調査を進めるのではなく、インタビューされる側の声に全神経を傾ける。実証主義を重視し、研究者が歴史を作る構造が維持されつつあるが、スピリチュアルな、...
インタビューされる側を尊重する作者の姿勢が印象的。インタビュー調査ってする側とされる側の権力関係がつくられがちだけど、学術的な都合から調査を進めるのではなく、インタビューされる側の声に全神経を傾ける。実証主義を重視し、研究者が歴史を作る構造が維持されつつあるが、スピリチュアルな、研究者が知らなかった歴史の多元性も大事にしようという考えには感銘を受けた。私もいずれ大学院進学を目指しているのでとても勉強になった
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徹底的にオーストラリアのグリンジというコミュニティの個別文脈性にこだわり、普遍性と実証主義を学問的良心とする歴史学との間に対話の空間(著者の言葉で言えば、協奏の可能性)を生みだそうとした労作。多様な歴史経験に真摯に向き合うことの重要性が一貫して主張されている。筆者がもし存命だった...
徹底的にオーストラリアのグリンジというコミュニティの個別文脈性にこだわり、普遍性と実証主義を学問的良心とする歴史学との間に対話の空間(著者の言葉で言えば、協奏の可能性)を生みだそうとした労作。多様な歴史経験に真摯に向き合うことの重要性が一貫して主張されている。筆者がもし存命だったら、次作は(著者が批判の目を向ける)メインストリームの歴史学の手法に則って、どこまで本作の問いが深められるかを追求して欲しかったと思わせる。筆者が理想とする歴史教育のあり方——客観的な〈史実〉と主観的な〈経験〉のバランスの取り方——について、一緒に議論してみたかった。 人類学の側からはグリンジの社会の描出が粗いことや、ジミーおじさんの意見の代表性(ジミーおじさん以外の人々の声があまり聞かれない、女性が登場しない等)に関する批判が出てくるかもしれない。それは個別学問のディシプリンに(忠実に)従うならば、おそらくそうなのだろう。そうした批判に著者なら、こう答えたかもしれない。「確かにそうかもしれませんが、それは私が提示している問いの本質性を揺らがせるものではありません」と。残された時間と体力との格闘の中で、歴史学における個別と普遍の間(境界)を必死にこじ開けようと奮闘する筆者の姿には、大いに励まされるものがあった。著者の残した問いは大きいが、「難しい問いですよね」と言って巧妙に“排除”するような人間にだけはなりたくないものである。本書を等身大で受け止める度量が私たちに問われている。
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刺激的な本だった。博士論文をもとにした本で、博論の書評とか「幻のブック・ラウンチ」とか色々載っているが、博論の中身は二章分くらい。単行本は2004年だが、後続の研究状況はどうなのだろう。
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