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彼女がエスパーだったころ の商品レビュー

3.4

21件のお客様レビュー

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2024/09/19

真偽の怪しい”似非科学”周辺の人々を巡る物語集。 題材は、スプーン曲げからありがとう水、レメディなど。その周辺事件を取材するライターを中心に進む。 似非科学を語る人々は一般社会で軽くあしらわれがちだけど、その心情・状況が丁寧に書かれる。 「それ」はないかもしれないけどあるかもし...

真偽の怪しい”似非科学”周辺の人々を巡る物語集。 題材は、スプーン曲げからありがとう水、レメディなど。その周辺事件を取材するライターを中心に進む。 似非科学を語る人々は一般社会で軽くあしらわれがちだけど、その心情・状況が丁寧に書かれる。 「それ」はないかもしれないけどあるかもしれない、確かにあるのは「それ」に関わる人の気持ちというか。 白黒つけて終わりではない、灰色の部分を感じながらも生きていく、人間の営みへのやさしい視点が感じられた。

Posted byブクログ

2023/05/02

あってもなくてもいいけれどもオカルトと医療に造詣がある方がすらすらと読める作品。 信仰による奇蹟と科学の進歩、倫理と道徳の大きくふたつのテーマが禅問答や反証実験のように繰り返されながら進んでいくストーリーに感じた。 読みながら思ったのが「信仰による奇蹟」はいくら科学が発展したと...

あってもなくてもいいけれどもオカルトと医療に造詣がある方がすらすらと読める作品。 信仰による奇蹟と科学の進歩、倫理と道徳の大きくふたつのテーマが禅問答や反証実験のように繰り返されながら進んでいくストーリーに感じた。 読みながら思ったのが「信仰による奇蹟」はいくら科学が発展したところで無いものにはならない。現存する科学をもってしても、ましてや「科学の進歩」を底上げしても、信仰による奇蹟は完全にはうち消せない。 ましてや天秤の両端に信仰と科学をのせたところでどちらとも言えない現象は存在するので、科学と信仰の中間を線引することもできない。 この作品に関して著者は読み手に好きなように取ってもらえるように書いてあるものの、個人的には「好きなようにとってもらって構わないが僕自身のひとつの結論を隠しています」みたいな風であった方が読み返したい欲が高まったかなあと思う。 SF成分は最低限で、あくまで近未来に起こりうることとして描こうとしていたのかなと思う。バチバチなSFが読みたい!っていう人には肩透かしを食らうだろうけどあくまで手法としてSFを使っているだけで無駄がないのでこれはこれで良いと思う。かといって事件が暴かれること自体が問題では無いようなウェイトで描かれていて、ミステリ色もそこまで強くない。 哲学とか思想とかそういうのが好きな人はまあアリだと思う。

Posted byブクログ

2023/01/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

火を覚えた猿を巡る人間社会、スプーンを曲げられる少女の存在、ホスピスや脳手術問題、信仰、等々、不可思議な社会的事件の顛末がとある記者のインタビューを通して語られる。嘘か真か、是か非かそれら事件の成り行きを客観的に読む読者が何を思うかを試されてるような作品。上手く言えないけど、その感覚はなんか今のSNS社会、現代人の有り様にも通じるところがある気がする。お話的には「水神計画」なんかが面白かったな~

Posted byブクログ

2022/06/12

普通の情景を読んでいるつもりが、気がつけばビューンととんでもないところに連れていかれている感が。 あいかわらずすごいな。

Posted byブクログ

2021/11/18

疑似科学を扱ったルポ形式の短編集で連作っぽくなっています。スプーン曲げ、火を使う猿、ロボトミー手術、ホスピス、新興宗教といったテーマ。疑似科学そのものよりそれを取り巻く人々の考えや行動が物語られています。後半、重いテーマが続きますが、最後はすっきり終わった感じですね。

Posted byブクログ

2021/10/30
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

テーマははっきりしているのにどこかつかみどころのなさを感じました。 「疑似科学シリーズ」と銘打ってしまえば簡単ですが、科学で解き明かすことが常に最良とは限らないのでしょうか。

Posted byブクログ

2021/04/16

疑似科学がテーマの連作短編集。「彼女がエスパーだったころ」「ムイシュキンの脳髄」「薄ければ薄いほど」が好き。

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2019/07/29

宮内悠介さん初読。 SFの人というイメージだったけど、この短編集は、信仰と超現象と偶然の境界を巡る小説だった。

Posted byブクログ

2019/06/26

もっとオカルトな内容でぶっとべる話かと思えば、いたって冷静な静かな小説。 同じテーマで短編を並べるスタイルは嫌いじゃない。語り手が作者本人なのか否か、読み手からすれば混同するような感じもディック的で悪くない。あくまで多分作者本人ではないが。 ちょっと、自分で期待値を別な方向に上げ...

もっとオカルトな内容でぶっとべる話かと思えば、いたって冷静な静かな小説。 同じテーマで短編を並べるスタイルは嫌いじゃない。語り手が作者本人なのか否か、読み手からすれば混同するような感じもディック的で悪くない。あくまで多分作者本人ではないが。 ちょっと、自分で期待値を別な方向に上げてしまってから読んでしまったかなあ。 ただ、ラストは微かに光が見えるような感じで良かったけどね。

Posted byブクログ

2019/05/30
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※このレビューにはネタバレを含みます

一人の記者を語り部に、事件の当事者のインタビューで構成されたモキュメンタリー風味の連作短編集。起こる事件はどれも超能力や不思議な水、代替医療など、ニセ科学のオンパレードで、一見すると荒唐無稽なものばかりだが、それを支える設定や仮に現実に起こった場合の驚異的な予見力、大衆の反応などは実にリアルで、現実と虚構の境目が曖昧になっているかのような感覚を覚えてしまった。 火の使い方を覚えた猿の話である「百匹目の火神」は「猿の惑星、征服」のようで、世間の右往左往とする感じや遅々として進まない対策、政治家の失言によるバッシングなどがスラップスティックで実に面白かった。 表題作「彼女がエスパーだったころ」は超能力少女というファンタジックな題材ながら、一般人のそれに対する猜疑心や世間の受け入れ方、科学との距離感などが絶妙で、現実に超能力少女が現れた場合の周囲の反応と消費のされ方というのはリアリズムに満ち溢れている。超能力がメタル・ベンディング=スプーン曲げという些細な何の役にも立たない能力というのが実によく、オカルトに対してなんとか暴いてやろうとする声や、超能力ビジネスと宗教団体の違いは母体となる組織の有無であり、信者のその後をケアしないという、マジックである手品側からの超能力に対する批判なども興味深い。 まさに超能力者がもし現実に現れたら?のシミュレーションとしては完璧であり、このへんのリアリティには文句のつけようがない。作者の目指した偽科学を肯定も否定もせず、また希望を寄せたり絶望と遊ぶわけでもなく、冷徹に見据えて境界を不明瞭にした筆致は見事ではあったが、その反面、SFとしては十分でもミステリとしては存外に弱い部分もあり、また圧倒的な現実性と地に足の着いた印象のせいか、ロマンのようなものは感じなかった。人間の業とでもいうべき弱さは伝わってきたのだが、事件は違うとはいえ全編通して同じトーンの作風だったので、食傷気味というのが正直なところである。ただこの語り口は素晴らしく、夢中になって読んだ短編集でもあった。

Posted byブクログ