1,800円以上の注文で送料無料

コールド・コールド・グラウンド の商品レビュー

3.5

21件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    9

  3. 3つ

    8

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2020/02/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

チャールズ皇太子とダイアナが結婚式を挙げる時代のアイルランドを舞台にしたミステリー。同性愛者が連続で殺される事件を主人公のダフィー巡査部長が解き明かす。ダフィーはどこか一匹狼の、ある意味よく小説に登場する刑事であり、キャラの魅力で本作を読み進められる。後半は意外な真相に迫り、ダフィーが危機に陥りながらも逆転するところなどでは心拍数が上がる。 さて、本作品ではイギリスとアイルランドの複雑な関係について少し知識を入れてから読んだ方がもっと楽しめると思う。IRAは知っていたけど、それ以外の組織は知らないので、混乱した。また、カソリックとプロテスタントの関係も予備知識として持っていた方が良い。

Posted byブクログ

2019/05/26

粘度を少し落としたジェイムズ・エルロイ。LA暗黒史を背景にしたポリス・ノワールで突出した感のあるエルロイは、よく知られたアメリカ暗黒=禁酒法、マフィア、ヴェガス、赤狩り、J・E・フーバーといった時代を背景にしているが、このエイドリアン・マッキンティの方は、北アイルランドの...

粘度を少し落としたジェイムズ・エルロイ。LA暗黒史を背景にしたポリス・ノワールで突出した感のあるエルロイは、よく知られたアメリカ暗黒=禁酒法、マフィア、ヴェガス、赤狩り、J・E・フーバーといった時代を背景にしているが、このエイドリアン・マッキンティの方は、北アイルランドの現代史を背景に、エルロイ・ノワールに作品を少しでも近づけようとしている。作家も主人公も、その鼻っ柱の強さにとにかく冷や冷やさせられながらも、謎解きを基調としたアイルランド・ノワールとして存分に楽しめるシリーズ第一作である。  舞台は1981年の北アイルランド。警察小説であり、ノワールでありながら、現代史小説としての一面も併せ持つ。過激なテロ組織であったIRAによるアイルランド独立闘争については、当時の日本のメディアではほとんど取り上げられなかったが、むしろジャック・ヒギンズなどの小説でぼくはIRAによるテロの過激さを知ることになった。ヒギンズの『死に行く者への祈り』は傑作とされ、ミッキー・ローク主演で映画化されたが、いきなり園児バスが爆破されるショッキングなシーンは忘れ難く、神と救いを求めて彷徨うアンチ・ヒーローを克明に描いた原作は、さらに印象深い。  大英帝国内でもアイルランドだけは、朝鮮半島同様、南北に二分している。英国帰属意識が強く体制側に組みするプロテスタントと、常に抑圧される側にあることから自主独立を望み、一部は過激なテロ活動をも辞さないカトリック、という政治および宗教的対立構造は、当時、市街戦と化したほどに苛烈な国内状況を呼び起こしていた。中でも北アイルランドのベルファストは、その中心の地であり、バスジャック、放火、爆弾テロなどがほぼ常態化していた。日本の平和な1981年を思い起こすと、この小説で描かれているような、血で血を洗うアイルランド闘争は悪夢そのものである。  本書における主人公、ショーン・ダフィの立場は、これ以上ないほど複雑なものだ。カトリック教徒であるショーンは、大学卒業後、北アイルランドの首都ベルファスト北部に位置するキャリックファーガス警察に巡査部長として赴任する。そもそも大卒の警察官自体珍しく、カトリックの警察官となるとさらに異端である。テロリストからは、カトリックのくせに警察官となった者として裏切者視され、同僚たちからは大卒・カトリックという両要因で距離を置かれる。実に生きにくい存在なのである。  ちなみにキャリックファーガスは、城が一つある以外、同じ形の三軒長屋ばかりが建ち並ぶだけの、無機質で魅力に欠ける街だが、作者が生まれ育った地でもあるということだ。  さてこのように、日常的に銃声や爆弾の音が炸裂している街で、音楽や文学を愛する主人公ショーンは、男性同性愛者の連続殺人、少女の縊死という二つ事件に没頭することになる。テロや暴動の警備に警察官が多数必要とされる状況の中、現実派の上司を尻目に、ショーンは両事件の真相究明にこだわる。野生の嗅覚のようなもの。真実は見えているとおりではない、と。  時代は、煮えたぎっていた。英国王室は、ダイアナ妃を側室に迎え入れようとしている。ローマ教皇は暗殺されかけた。逆にエジプトのサダト大統領は暗殺される。北アイルランドの刑務所ではハンストにより死亡したボビー・サンがヒーローとなり、テロ活動をさらに煽る。ニュースメディアがこんなに多忙な時に、日本はことアイルランドについては、その一割にも満たない最低限のテロ報道しか流していなかったのを、ぼくは今も覚えている。その国の小説に記載されることと、日本のメディアで読むことは全く違う。別の地球のようにさえ見える。  さて、本書はそうした歴史背景のさなかで、骨子としてはあくまでショーンが真の殺人者を暴くというミステリにしっかりと重心を置いている。ぶれない主人公だからこそ状況との闘いにさらされ、捜査自体の存続が危ぶまれる中、組織人としての自覚を捨ててでも単独で真実に拘ってゆく。よりエルロイ的世界へはみ出してゆく。そうした主人公の行動に、平和な日本の読者が着いてゆけるかどうかが試されるような過激な一冊である。そして最終ページを閉じても、アイルランドは終わっていない。ベルファルトの火炎は消火されても、根深い対立構造は存在し続ける。昨年より翻訳され始めた本シリーズは現在3作まで読むことができる。遠く離れた国、過ぎ去った時代の真実に少しでも近づくことに興味のある方は、是非このレアなシリーズをご賞味あれ。

Posted byブクログ

2019/04/14

訳文がしっくりくるまで時間がかかった。主人公たちが使う「あい」という返事の原文は何かわからないがそう訳す必要あり?またアイルランドの複雑な政治宗教事情も理解が難しい。でもこちらは分かってくるとだんだん面白くなってくる。ストーリー自体は楽しめた。ただ主人公については本作ではあまり魅...

訳文がしっくりくるまで時間がかかった。主人公たちが使う「あい」という返事の原文は何かわからないがそう訳す必要あり?またアイルランドの複雑な政治宗教事情も理解が難しい。でもこちらは分かってくるとだんだん面白くなってくる。ストーリー自体は楽しめた。ただ主人公については本作ではあまり魅力を感じなかった。次作以降どういう展開になるか読んでみたいとは思います。

Posted byブクログ

2019/02/10

アイルランドが舞台で、前半長く、最後さすがにエンタメたっぷり。 プロテスタントとカトリックの問題、IRAなぞ、暗く出口のない硬い背景あり。 楽しめた。

Posted byブクログ

2018/12/27

「IRA=テロ組織」くらいの知識しかなかったので、カトリックとプロテスタントそれぞれに根ざしたいくつもの組織の複雑さに最初は混乱してしまった。それでもだんだん何となくわかってきて、どんどん読んでいけた。とにかくその背景設定が新鮮。 ただ、何と言うかその背景の割に展開と主人公のキ...

「IRA=テロ組織」くらいの知識しかなかったので、カトリックとプロテスタントそれぞれに根ざしたいくつもの組織の複雑さに最初は混乱してしまった。それでもだんだん何となくわかってきて、どんどん読んでいけた。とにかくその背景設定が新鮮。 ただ、何と言うかその背景の割に展開と主人公のキャラが軽いような気がする。それと、翻訳を絶賛している評を見かけたけど、私はどうもなじめなかった。「あい」っていうのがなあ…。

Posted byブクログ

2018/08/26

CL 2018.8.25-2018.8.26 どうして「あい」と返事するんだろう? どうして「はい」ではいけなかったんだろう? すごい違和感。

Posted byブクログ

2018/07/01

W杯のせいで時間かかった。 アイルランド紛争中の北アイルランドが舞台のミステリ。 時代を象徴するキーワードがあちこちに登場してそれを発見するのが楽しい。 ローマ教皇暗殺未遂事件でこの話は1981年のことと解る、といった仕掛け。 かつてのアイルランド紛争を舞台にした冒険小説やス...

W杯のせいで時間かかった。 アイルランド紛争中の北アイルランドが舞台のミステリ。 時代を象徴するキーワードがあちこちに登場してそれを発見するのが楽しい。 ローマ教皇暗殺未遂事件でこの話は1981年のことと解る、といった仕掛け。 かつてのアイルランド紛争を舞台にした冒険小説やスリラーとちょっと味わいが違うように思えるのは、やっぱり過去のものだからかな。

Posted byブクログ

2018/05/18
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

80年代の北アイルランドの空気、人、政治、法律。そういった様々な要素が効果的に表れている。武装勢力が数多くいて対立があり街全体が緊迫している。そんな日常の中でいつも車に乗るときには車体の下を覗き爆弾が仕掛けられていないかを確認する刑事のショーン。この行動だけで街の危険度がわかる。いつどうなるかわからないなかでの捜査。個性的な面々と出口の見えない事件。緊張した空気が途切れることなく展開される。またひとつ面白いシリーズが始まった。長く読めると嬉しい。

Posted byブクログ

2018/05/06
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1981年の北アイルランドを舞台にした警察小説。主人公はブリティッシュロック好きらしい…と好みの設定満載で読むのを楽しみにしていたが、終盤にさらに大好きな展開になって悶絶した。 早く第5作まで読みたい!

Posted byブクログ

2018/05/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

1981年。泥沼の紛争が続く北アイルランドに赴任した警察官ショーン・ダフィ。宗教・格差・政治・暴力が複雑に絡まるこの街で起きた不可解な殺人事件をダフィは追う。 乾いたユーモアと80年代カルチャーが殺伐とした作品世界をミストする。 現場検証中に後部ドアを開け放って新聞を読んでいる予備巡査に「おい、君。『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』を知らんのか!これじゃ待ち伏せの絶好のカモだぞ」 韻(rhyme)やアルファベットの略語表記もsolidでcool。 作中何度も何度も車の底に爆弾が仕掛けられていないか確かめる。しつこいくらいに何度も。それこそが荒廃した北アイルランドのリアルなんだろう。 これも度々出てくるパイントグラスにウォッカとグレープジュースを無造作に入れたギムレットがたまらなく飲みたくなる作品 ※作中出てくる10馬身差でダービーを勝った馬シャーガーはアイルランド産の競走馬。エプソムダービー。種牡馬となるが2年後誘拐される ※「真夜中の子供たち」はサルマン・ラシュディの小説 ※俳優ジョン・ギールグッドはエレファントマンのカーゴム院長役 ※ゴールを決めたインテルのブロンドのサッカー選手はアレサンドロ・アルトベッリ(?) ※エドワード・テッド・ケネディはJFKの末弟 ※イギリス女優ヴァネッサ・レッドグレイヴはミッション・インポッシブルのマックス役 ※ザ・ポリス「ゴースト・イン・ザ・マシーン」4thアルバム1981 Invisible sun 北アイルランド紛争がテーマ 収録曲「Demolition Man」はスタローン&ウェズリー・スナイプス主演の映画「デモリッションマン」の主題歌

Posted byブクログ