ウィステリアと三人の女たち の商品レビュー
短編集でした。4編の。 川上未映子さん。2014.2016.2017年の作品なので、著者が40歳前後の作品。 短編集なので、ずっしり、とまではいかない。 記憶の断片みたいな作品たちでした。 読後、気づいたのは、ほぼ男が出てこないこと。 後半の2作品、「マリーの愛の証明」と「ウ...
短編集でした。4編の。 川上未映子さん。2014.2016.2017年の作品なので、著者が40歳前後の作品。 短編集なので、ずっしり、とまではいかない。 記憶の断片みたいな作品たちでした。 読後、気づいたのは、ほぼ男が出てこないこと。 後半の2作品、「マリーの愛の証明」と「ウィステリアと三人の女たち」がよかったです。 マリーの最後の長いセリフには、ぐっとくるものがあった。 そう川上未映子さんの作品には、必ず、ぐっとくるものがどこかに出てくる。特に後半に。たたみかける。そのために読むと言ってもいい。必ず後半に、ぐっと鷲掴みにされる。 引用(ネタバレ)マリーのセリフ ねえ、人は、本当は、何もないところから愛を生みだすことなんてできないんじゃないかしら。どこかにある大きな愛の一部を自分のものだと錯覚して、そしてそれをやりとりできているような気がしているだけなんじゃないのかしら。ちょっとした光の加減や、風向きでそう思ってしまうけれど、愛じたいは、わたしたちの存在を越えて、最初から最後まできっとどこかにあるもので、愛っていうのはきっと、わたしたち個人のものなんかじゃなくて、どこかにあるものなのよ。どこかにあるそれに、わたしたちはときどき触ったり触らなかったりしているだけなのよ。たぶん。 わたしがあなたを愛していたかどうかを証明することはできない。けれど、いま自分が誰かを愛していないからといって、愛が消えてしまったことにはならないんじゃないかしら。そしていま自分が誰かに愛されていないからといって、そこに愛がないとは言えないんじゃないかしら。誰に愛されていなくたって、もしその人が愛のことを一度でも知ったことがあるのなら、愛はそこにあるとはいえないだろうか。だから、そのことを悲しむ必要はないんじゃないかとわたしは思う。 * ちょっと前に別れたカレン(女同士)に付き合っていたときに本当に愛していたか?の質問に対する長台詞の一部です。マリーからの別れ。このセリフは、ほぼ最後までではあるけど、途中で終わります。なぜなら、セリフの途中でカレンがもう興味を失っているから。道の石を数えての興味を示さないカレン。 カレンが興味を失うような人だから、マリーは別れを決めたのだろう。結局、「合わない」のだろう。 それにしても登場人物の想像力にうなる。 タイトルにもなってるウィステリアの三人の女たちでも、後半に想像力がうなる。 取り壊される建物に忍び込み、からの 主人公の勝手な妄想のシーンの妄想力にうなる。 そして、妄想力によって人生の選択をするにまで至る。旦那さんとは別れるであろう。 女同士の恋愛も含めてのあれこれの短編集でした。 川上未映子さんの作品は、 やっぱり、ぐっとくるものがある。 と思いました。
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おもしろかった! 読みやすい著者の本は。 ちょっとブルっとする感じもあるけど、人間の奥を感じるしすき。
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短編のうち二篇は思春期少女を描いたもの 自分にも身に覚えがあるその時期特有の残酷さや性への過剰な敏感さの表現に痺れた 後の二篇もそれぞれ女性の抱える虚ろさの中にある何かを見つめていて、川上さんの物語を読むと同時に自分の内面を見据えられてる気持ちになる 人生のうち何度も読み返したい...
短編のうち二篇は思春期少女を描いたもの 自分にも身に覚えがあるその時期特有の残酷さや性への過剰な敏感さの表現に痺れた 後の二篇もそれぞれ女性の抱える虚ろさの中にある何かを見つめていて、川上さんの物語を読むと同時に自分の内面を見据えられてる気持ちになる 人生のうち何度も読み返したい作品
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
記憶の中の出来事が本当にあったのかどうかを証明するのって、物証でもないと難しいよなとずっと思ってる。最近思い出に現実感がなくて(当たり前のことかもだけど)、その一部は自分の都合のいいように書き換えてるんじゃないかとか、一部とは言わずほんとは全部妄想なんじゃないかとか、たまに考える。だから、同窓会に行った話は結構しっくりきた。
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デパートの話が面白かった。 英語教師の話は途中まで面白かった。 女性の内面的な葛藤。 同性愛的な話がいくつかあったのが気になって。そうしたこと自体に抵抗はないのだけど、この方の表現が合わないのか、気持ち悪いと感じてしまった。(川上未映子さんの本デビュー)
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久しぶりの川上未映子作品。 これまでそれなりに彼女の作品を読んできた。 どれもテーマの切り口は興味深いのに、それゆえか少し説明的にすぎるというか、登場人物たちが物語の中で生きているというよりは作者自身が主張したいことが透けてみえる感じがしていた。 無条件で好き、と言えることがあま...
久しぶりの川上未映子作品。 これまでそれなりに彼女の作品を読んできた。 どれもテーマの切り口は興味深いのに、それゆえか少し説明的にすぎるというか、登場人物たちが物語の中で生きているというよりは作者自身が主張したいことが透けてみえる感じがしていた。 無条件で好き、と言えることがあまりなかったのだけれど、この作品はこれまでのそういった印象を塗り替えるものだった。ところどころで村上春樹作品に通底する、ふっとおそろしくて心細くなる雰囲気も感じられた。 『シャンデリア』の固有名詞の羅列はそれが分かる側の女なのか、それとも分からない側なのかを読者に自覚させる装置のようで、"あなたはどっち?"と挑発されている気持ちになった。 私はこれを読んで、分かる側の人間であることに喜びを覚えたけれどそのことが何を意味しているのかはわからない。 『マリーの愛の証明』と『ウィステリアと三人の女たち』が特に好きだった。こういう少し浮世離れした雰囲気の作品をもっと読んでみたいと思った。 "夕焼けのきれはし"という言葉が別々の物語で続けて出てきて、それがなんだか著者の感覚を信頼できる感じがしてよかった。 装丁も素敵。
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最初の話、 女優をしていて周りとの差を見せつけてやろうと同窓会に顔を出した主人公が、 ふと学生時代の自分の過ちを思い出す。
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魔法がかけられて現実に身を落としていたプリンセス・ウィステリアが目覚めるような。 手足のちからを抜いて四方に放ったまま動かずにいると、暗闇と自分自身の境目がだんだん曖昧になっていった。 「本当の名前?」 「うん。人にはみんな本当の名前というものがあって、私にはそれがわかるんだ。しばらく一緒にいるとね、その人の顔の真ん中からある日とつぜん名前がやってくる。きみがウィステリアだってことはすぐにわかった」 「日本人でも?」 「名前と見かけは関係がない」外国人教師は言った。 門の横にふたりの名前がかかり、ウィステリアは面映くてなかなか看板を見ることができやかった。
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内に何かを抱えた4人の女性が主人公の短編集。 独特の感性で書かれていて、読み手を選ぶかも。私は、好きな本だった。4編の中では、シャンデリアが一番爽快だった。
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言葉の並べ方なのか、エピソードの魅力なのか、なんとなく読み始めたのに、ぐっと引き込まれた。四篇の具体的な関連はないが、どれも不意に孤独感、虚しさ、恐ろしさ、愛が漂ってきて胸が締め付けられる。しかも自分の記憶のどこかを刺激するようだ。読後は、しばし物思いをした。
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